farsite / 圏外日誌

Gaao Line's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

映画

『スポットライト - 世紀のスクープ』 - 有能な上司がすべてを変えるというビジネス映画

カトリック教会の小児性愛スキャンダルを暴いた、2002年のボストン・グローブ誌の取材チームの活躍を描く映画『スポットライト』。事件がどれだけ酷いものかは語りつくされていると思うんで、「物語」としての感想を書くと、びっくりしたのは、編集局長マー…

『ルーム』 - 犯罪被害者の苦痛は永遠に続く。辛い映画。

たとえばドラマ『クリミナル・マインド』なんかそうだけど、異常犯罪・猟奇犯罪をテーマにしたサスペンス・ドラマはたいてい、警察VS犯人、事件が解決するまでを描く。事件の「被害者」は、実のところ脇役でいることが多い。ところが、この映画はその逆を行…

オデッセイ(火星の人)- 愛のない映画

要はそういうことなんだと思い至った。『オデッセイ』(原題:火星の人)の中には、いわゆる「愛のちから」の描写が無い。その結果、『オデッセイ』は素晴らしいテーマを表現した、むしろ愛に満ちた映画になった。 あらすじ 火星に取り残されたのでなんとか…

スター・ウォーズ フォースの覚醒 - 映画感想:チューバッカのごとくありたい。

びっくらこいた! スター・ウォーズを手に入れたJ.J.エイブラムス。手癖の強い彼は、スター・トレックぐらいオリジナルシリーズとテイスト変えてしまうかもしれないと不安になっていたが、きちんと作ったのである。やはり思い入れの強さが違った。あとスタト…

独裁者と小さな孫 - 映画感想:立体的なひどい目体験映画

亡命イラン人作家モフセン・ マフマルバフがジョージア(グルジア)で撮影した、その名のとおり独裁者とその孫を主人公にしたロードムービー。一種の地獄めぐりで、視聴者は彼らとともに、辛い現実を何度も目撃することになる。 あらすじ とある国。富を謳歌…

黄金のアデーレ 名画の帰還 - 映画感想:人生を賭けた法廷劇

あらすじ 実話をもとにした物語。第二次大戦期にナチスの迫害から逃れ、オーストリアから米国に移住したマリア・アルトマンは、姉の死を契機にナチスに接収された叔母の肖像画を取り戻すことを決意する。しかし、それは今やオーストリアの至宝と呼ばれ、美術…

ガールズ&パンツァー 劇場版 - 映画感想:緻密なハリウッド的アクションの極致

あらすじ 現実とは少し違う世界。第二次大戦後、日本では学園と都市機能を備えた巨大な艦艇が幾隻も建造され、多くの子らがそこで学んでいた。いっぽう戦争の道具であった戦車は、戦後“戦車道”という武芸として世界的に地位を獲得、国土に広がる多数の原野や…

007 スペクター - 映画感想:あかるくたのしいボンド映画

あらすじ スカイフォール事件によって本部の崩壊した英国MI6 秘密情報部は政治的な窮地に追い込まれていた。MI5 保安局との合併、ダブルオーセクションの閉鎖が取りざたされる中、007は先代Mの残した言葉からある犯罪者を追い、ひとりメキシコにいた……。 感…

ジョン・ウィック - ある意味SF的な発想の映画

あらすじ 犬を殺したらとんでもないことに。 感想 この映画を観てなぜか頭に浮かんだのは、『ヘルボーイ2』だった。あの映画は現代に生きる悪魔や神秘的存在が描かれているけれど、その中でニューヨークのどこかに“妖精の街”があることが描かれる。それを思…

アクトレス 女たちの舞台 - 女の時間をどう描くか

原題は『シルス・マリア』。その名の土地で稀にみられる、谷に沿って蛇のように流れこむ雲霧“マローヤの蛇”が、映画の鍵となってる。映画の中で、人生あるいはその時間とは、霧のように手に取ることはままならず、しかし蛇のように人生を縛るものとして描か…

ナイトクローラー: 悪魔はどこに棲むのかという映画

『ナイトクローラー』は、『ゴーン・ガール』のようにサイコパスを主人公に据えた一種のピカレスク映画だけれど、この作品はテーマをもう少し進めて、現代における悪魔の実在を描いているのだと思う。そう思わせる表現が各所にあり、観終わってみると、この…

キングスマン:格差社会の怨嗟を込めたからこその傑作

ある意味すっごくしんどい映画だった。傑作であることは間違いなくて、とってもフザけた内容で、スタイリッシュに描かれたスパイアクションだ。だけど、その毒に満ちたファンタジーは、劇中挿入される現実のイギリス下層社会に鬱積している感情の発露だ。イ…

ピエロがお前を嘲笑う - とても誠実なドイツのハッカー文化映画

なんとも人を喰った邦題になったけれど、単館上映でひっそりやってるドイツ映画『ピエロがお前を嘲笑う』は、びっくりするほどリアルに、ハッカーの生態を描いた作品だ。いやどこまで現実に即しているかはわからない。だけど、映画の中のハッカーたちの行動…

ジュラシック・ワールド: 戸田奈津子氏は誤訳をしたのか?

なんだかもやもやしている。たいへん面白かった映画『ジュラシック・ワールド』で、字幕翻訳の戸田奈津子氏が「また誤訳をした!」というツイートが、何件かRTされてきた。言われているのはクライマックスの「歯が足りない」という字幕だ。 これ、誤訳なんだ…

『コングレス 未来学会議』 / 『泰平ヨンの未来学会議』: 自由意志とはなにか

『コングレス 未来学会議』は、原作の『泰平ヨンの未来学会議』を驚くほど忠実に映画化している。主人公は独り者の宇宙飛行士、泰平氏から、女優ロビン・ライト(本人役!)に変えられているし、ほぼ全編アニメーションになっているけれど、レムの描いた世界…

マッドマックス 怒りのデスロード:一度でも精神を患ったことがあるなら、もう一度見るべき映画

『マッドマックス 怒りのデスロード』はいろいろ驚きのある映画だったけれど、一番驚いたのは、女性の解放という物語の骨格でなく、主人公マックスのキャラクターだった。メル・ギブソン版マックスのマッドは「怒りでなにをしでかすかわからない」ぐらいの意…

『チャッピー』キリスト教の倫理観

個人的にこれを『ロボコップ4』と呼ぼう! ロボットの在り方はロボコップとほぼ同じ、ただ違うのは、ロボコップがロボットから人間への回帰だったのに対し、本作が新しい知的種族の発生を描き、テーマが外に広がっていくことだ。 あらすじ 荒廃した南アフリ…

『海にかかる霧』映画レビュー: これぞ韓国映画!

韓国版極悪タイタニック。漁船の密室空間でおこる惨劇、そして登場人物がどんどん狂っていき、人間の持つ本性が明らかになっていく。冒頭で緻密に描かれた日常が、終盤の圧倒的な異常空間と見事な対比となっている。

ショートフィルム "Wanderers"

エリック・ワーンキストによるショートフィルム、"Wanderers" (ワンダラーズ、放浪者)。 Wanderers - a short film by Erik Wernquist from Erik Wernquist on Vimeo. 素晴らしい映像表現! ぜひ高速回線・大画面・高音質でご視聴を。 ナレーション翻訳 劇中…

『猿の惑星 新世記(ライジング)』映画感想: 神なき世界の猿と人

“進化”を真摯に描き、評価の高いリブート版『猿の惑星 創世期』の続編。こちらも猿と人の違いを逆説的に描いたSF性の高い傑作だけど、そこで感じたのは、妙な話、「神の不在」だった。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』映画感想: なぜ寝たか

すっごいイイ映画だったけど、寝てしまった。 制作者の方々にちくっと心が痛みつつも、まあ1,800円払ったら寝るのも権利のうちと堂々としてはいる。で、問題はあの映画、あの内容で、なぜ寝てしまったのか。 あらすじ 銀河のかなた。子供のころ異星人の盗賊…

『サード・パーソン』映画レビュー - 反芻感動映画

映画『クラッシュ』や『L.A.ロー』の脚本、早すぎた傑作TVシリーズ『EZストリーツ』で有名な(でもないか)ポール・ハギスのつくる、三組の男女の見せる人間模様の映画。人の心を抉り出す描写を期待していて、確かに堪能したんだけれど……この構成はズルい! …

『パークランド - ケネディ暗殺、真実の4日間』映画感想

ケネディ暗殺を描いた映画の中でも、本作はよくある陰謀論から一歩引いて、『ER』のように事件のパニック的な状況に関わる“普通の人々”を描いた群像劇だ。硬派でいい映画なのに、もうひとつ足りないのは、(ない物ねだりだと判っていても)ユーモアなんだと思…

『オールド・ボーイ』(米国版)映画感想

日本の漫画を原作とした韓国版『オールド・ボーイ』(パク・チャヌク監督)は、衝撃的な結末と引っ掛かりの多い演出、「餃子は完全栄養食」というイメージが記憶にこびりついてる。今回スパイク・リーの更なるリメイク版でどうなるのかと思ったら、意外なこ…

『それでも夜は明ける』映画感想: 美しい絵、醜悪な現実

ド直球に社会問題を描く映画はテーマ性が先だってしまいバランスが悪かったりするよなあ……と薄っぺらい皮肉を考えながら観に行ったらごめんなさい。飛び込んでくるのは絵の美しさ、編集の巧みさ。そして、絵に込められた様々な比喩の説得力。上手い。すごく…

『オンリー・ゴッド』 映画感想 - レフン&ゴスリンクのやりたい放題!

ライアン・ゴスリンク主演。タイを舞台にしたクライム・アクションなんだけど……ヘンな映画! 極端な色の画面、なりっぱなしの重低音、蝋人形みたいな役者たち。この極端な美意識が、現実と妄想が入り混じるあやふやなプロットに一貫性を与えている。

SF映画 オールタイム ベストテン at 2013

SF映画 オールタイムベスト10:『ロボコップ』人間性取り戻す物語『2010年』明確な答えがある喜び『ミッション 8ミニッツ』気づかれない深いSF設定『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』実は骨太のナノテクSF etc.

『キャプテン・フィリップス』映画感想 - ストイックなミリタリー・スリラー

ヒューマンドラマと思いきや、物凄くリアルでストイックなアクション・スリラー。だからこそトム・ハンクスの演技が活きる! ミリタリーファン、『スター・トレック』や『パシフィック・リム』のSFメカ好きにもおすすめ。

『キャリー(クロエ・モレッツ版)』映画感想 - 女は獣だ

クロエ・モレッツがいじめられる様を見て喜ぶ変態アイドル映画かとおもいきや、女性監督ならではの性のグロさと思春期の怒りへの共感がうまく出ているんじゃないかと思う。傑作なんだか珍作なんだか。

『スター・トレック イントゥ・ダークネス』 映画感想 - スポックとハリソンという鏡像

えー、様々な想いがあるんですが、1点に集中して書きます。 『スター・トレック イントゥ・ダークネス』は2009年の『スター・トレック』の続編となるリブート・シリーズ第2作。今回も60年代~2000年代まで続いた“旧シリーズ”(この表現が適切かどうか…)の…