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007 スペクター - 映画感想:あかるくたのしいボンド映画

あらすじ

スカイフォール事件によって本部の崩壊した英国MI6 秘密情報部は政治的な窮地に追い込まれていた。MI5 保安局との合併、ダブルオーセクションの閉鎖が取りざたされる中、007は先代Mの残した言葉からある犯罪者を追い、ひとりメキシコにいた……。

感想

前作あっての楽しさ、前作から感じる異質さ

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楽しく愉快なジェームズ・ボンドが帰ってきた。初っ端から忍びなれど忍ばない! をフルスロットルでやってのける爆笑のロングテイク・アクションでたいへんニコニコした気持ちにさせて、その後もお決まりのウィットの利いたジョークとアクションが数珠つなぎ。ストレートなアドベンチャーが展開される。

でも考えてみれば、前作『スカイフォール』だって、出鱈目なアクションとジョークがたっぷりだったはずなのだ。それでも「帰ってきた」と思えてしまうのは、やっぱりスカイフォールの後半のあの展開と、ボンドの内面に切り込むテーマが、すさまじく、また異例中の異例だったからだと思う。

今作だってシリアスなところはシリアスなのに、前作のインパクトがあるからすっごく明るく見えてしまう。それ以上に新鮮と言うか奇異に思えてしまったのが、今回ボンドが一人の女にずっと優しくしているところだ。

もともと旅先で相手をとっかえひっかえするキャラだけど、前作ではどんな美女だろうが不利益になると思えばサクッと見殺しにして、敵キャラと競い合うようにママを求めるとんだマザコン野郎と化したボンド。そんな彼の姿はもうない。瞳の奥の冷たい影は薄らぎ、道中出会ったどんくさい娘さん(美人ですけどね)を守るために、犬コロのようにかいがいしく走り回る。そんなボンドを見て、なんとまあ殊勝なことしてんなあと思えてしまう。それほどまでに前作のインパクトが強かったということなんだな。

大作のはざま

ダニエル・クレイグはもう1本ボンド映画にでる契約になっているという話は以前から見聞きしているので、もし事実なら(そうあってほしいけど)、今作の比較的明るい作劇は、クレイグ最後となる次回作への大きな助走ということなのかとも思う。「スペクター」というシリーズ初期からの仇敵組織がリバイブし、予告編で示唆されてるとおりに敵とボンドの関係が新たにセットされ、その上で敵の外見的特徴が作られた。とすれば次回作では十中八九、冒頭で今回のボンドガールが殺され、顔に傷のある黒幕が車いすペルシャ猫を抱くことになるんじゃなかろうか。

ボンドがなぜ今回の彼女にそこまで愛情を抱くのか、全体を通してもう少し納得感が欲しかった気はする。幕切れも多少優しすぎという感もある。でも、それらをひっくるめて次回作への余韻を残したと捉え、2大傑作に挟まれた壮大なインターミッションとして楽しんだ。次回作が傑作になるか、はたまたクレイグがちゃんと続投するかは、神のみぞ知るだけど。

観るべき映像美

なんか物語そのものから外れたところばかりに気がいっちゃうけど、本作の映像の出来は素晴らしく、劇場で観た甲斐があった。冒頭のカーニバルからの長回し撮影だけでなく、その後も1カット1カットが、すべて色も構図もビシーッと決まっている。ダニエル・クレイグはあらゆるカットでそのまんまカレンダーアートにできるぐらい美しい。

はっとしたのが、クライマックス前でボンドとボンドガールが分かれるシーン。一見凝った構図もライティングもなく、凄い演技がなされているわけでもない、ある意味取ってつけた印象すらある単なるクロースアップショットだ。なのに、すごく美しく感じられる。IMAXの画質もあろうが、雑さの無い、良い映像が堪能できる。少しだけ登場する東京のシーンでも、その都市の印象をうまく捉えて、味気ない青灰色の空気感を作っていた。

 

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