2000年に作成されたミニシリーズ。“ダーク ジャスティス”,“メルトダウン”,“リザレクション”,“クラッシュ&バーン”の4話構成。
――ロボコップ開発から10年が経った。開発元の総合企業オムニ社(OCP)は、人工知能による行政サービスの完全自動化ソリューションを開発、デルタシティ(旧デトロイド)への導入を決定する。ロボコップの素材となった警官マーフィの遺児であるジェームスは、いまやOCPの若手幹部となり、そこで不要となるロボコップの運用終息・廃棄を命じられる。その処理のため、もう一体のロボコップが投入されることとなった――
とにかく盛りだくさんの内容だが、メインとなるテーマは“家族の葛藤”だろう。ジェームスは不幸な身の上から脱却し自分の成功をつかむため、彼の父親を、そうと知りつつも殺さなければならない。また、ジェームスの背後にいるOCP女性幹部も、かつて結婚した黒人警官を捨て、企業でキャリアを追い求めた身だ。その黒人警官は、犯罪の犠牲となり、ロボコップIIへと改造されてしまう。物語の鍵となる、人間とコンピュータ双方に感染するウィルスの媒体となる少女もまた、狂った父親と母親の間で悲鳴を上げている。家族にまつわる幾重もの悲劇が重なり合い、ビジネスの波に飲み込まれてゆく。
個人の意思・欲望を吸い上げる巨大な企業組織が、古い夫婦・親子・家族という概念を、破壊してゆく。この今日的な問題を、ロボコップという「ヒトがヒトでなくなった存在」を主人公に据えたSF作品で、象徴的に見せようとしている。それは、とても正しいことに思える。
とまあ、テーマだけ見れば立派な作品に思えるが、なにしろ低予算のミニシリーズなんで、安っぽいし、話はゴチャゴチャしてるし、演技演出もガサツなところが多い(それでも映画第3作や、旧テレビシリーズに比べれば相当マシだが)。ロボコップならではの残虐描写も微妙に演出がブレていて、ストーリーにも映像的な面白みにも寄与していない。このダメさに目を向けず、製作者の想いをまっすぐ汲み取ろうという集中力が必要になる。はっきり言って凶悪犯罪者との戦いなんて、このテーマであればもっと描写を縮小してもよかったのではと思う(そうできない所が、アクションものの辛さかもしれないが)。
また、正面から描こうとしている“企業”や“ビジネス”というモノの描写が浅いのも残念に感じた。製作者は、今日的な組織ビジネスの有様をまだ捉えられてないか、うまく視聴者に表現できる手法を確立できていない。もしビジネスのダイナミズムをあと一歩踏み込んで表現できていれば、この作品はサイバーパンクから生まれた稀有な“ビジネスSF”として、歴史に足跡を残せたのかもしれない。
個人的には、ふたりのロボコップがお互いに肩を支えあいながら、人間のハンターから逃げてゆくという第二話のラストが、非常に印象的だった。ちょっとホモセクシャルな空気も読めるけど。
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視聴日誌補足:旧サイトに掲載したものを修正して再掲載