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Gaao Line's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

『チェイサー』 映画感想

かなり前、『スター・トレック』の前あたりに観た韓国映画。事件に巻き込まれ失踪した売春女性を追いかける風俗店オーナーの話。今年のベスト1かも知れない。

これは愛の映画だ。主人公は、女という“商品”を回収し自己の利益を守るために、その女を追いかける。この最低の動機意外に、彼には何もない。しかしこの行為が、次第に、無償の愛の性質を帯びてくる。結果よりも、追いかけるという行為こそが、愛なのだ。

いたるところにキリストと神を感じさせる絵がちりばめられている。特に後半、犯人の動機が次第に明らかになる中、浴室に釘でつるされた女性の肢体と、犯人のアジトに殴り書きされた絵、そしてあるモノが、一体となって見える演出は圧巻だ。

エンディングも美しかった。東洋的な救いの無さ、無常感(仏教用語だ!)に満ちた世界に、神の愛が、ほんのひと触れ、感じられる。



日本と韓国の文化面・宗教面での違いは、海外からは「ネオ儒教」とひとくくりにされる近代儒学各派の思想解釈の差なんかよりも、キリスト教の存在にあると思う。韓国でのキリスト教の浸透は、日本とは比べ物にならないくらい高い。日本の『呪怨』のようなホラー作品が欧米でカルトな人気を得たのは、キリスト教が殆ど存在しない東洋の世界でしかできない発想での作品だったからだろう。反対に、本作はキリスト教が根付いた東洋の世界ならではの発想で製作された作品だ。これも、キリスト教圏の国から大きな評価を得るんじゃないだろうか?

 

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