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Gaao Line's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

『ベガーズ・イン・スペイン』 読書感想

“ベガーズ”って何のことだろうと思ったら、乞食(beggar)のことだったのね。カタカナで書かれるとなんか高尚な言葉にみえてしまう。そういえばニュージーランドでは、誰かに向かって悪態をつくとき「バガ!」と言ってたけど、あれも beggar の音変化だったと思った。それとも bugger だったのかな?

最近ぶあつい3部作が訳されてたヒトの短編集。女性作家だとは気づきもしなかった(名前見りゃ一目瞭然なんだけど)。そして含まれる短編も、女性の視座を活かしたものが多く、テクノロジーによって変化した世界に翻弄される女性の苦しみや、苛立ち、切実さが、リアリティをもって胸に迫ってくる。

表題作の『ベガーズ・イン・スペイン』と、同じ世界をシェアした『眠る犬』は、ぜひ長編でも読みたいところ(未訳だが存在する模様)。お気に入りはバレエの世界を描いた『ダンシング・オン・エア』。SF的なアイディアとしては特に尖った所がないけれど、バレエ界の描写と母娘の確執の表現に説得力があり、共感できる。

こんな小説家なら、3部作の『プロバビリティ』シリーズも読んでみたいなと思ったけれど、その世界をシェアしている長編『密告者』は、どうも設定が込み入りすぎて物語についてゆけなかったので、うーん、すこし足踏み中。

さて、次は『泰平ヨンの航星日記』改訳版だ。いちど読んだんだけどな、原作が2003念まで改訂され続けてたと聞くとな。好きだし。

 

ベガーズ・イン・スペイン (ハヤカワ文庫SF)

ベガーズ・イン・スペイン (ハヤカワ文庫SF)