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farsite / 圏外日誌

Gaaoline's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

シンガポール雑感

仕事でシンガポールに4日ほど行ってきた。ニュージーランドで学生生活をしていたときは、そんなビジネスで海外に行くような職業にはつくまい、海外に行くなら束縛されず自由になんて甘い夢を抱いていたのに、因果なものだ。

ガイドブックのひとつも読まずに行ったので、マレーシアの端っこの香港みたいな国、というイメージぐらいしか持ち合わせていなかったのだが、香港よりはずいぶんと広く緑が多い。都心からちょっと離れたところにあるビジネスパークは、公園に囲まれた中層建築で、ゆったりしたところだった。

 

環状線に乗ってみると1周ほぼ1時間。だいたい東京23区ぐらいの大きさだとすると、CBDと歓楽街らしいのは千代田区と港区程度の領域で、そのほかは町田や昭島ぐらいの町並みがずっと広がってるような感じ。CBDの高層ビル群の密度はすばらしく、80年代SFを思わせるデザイン性とあいまって、高層ビル好きには堪えられないものがある。

事前に聞かされていたオフィスの冷房の効き具合はすさまじく、半日も室内にいると、底冷えがする。ダウンジャケットを持ち込もうかというぐらい。窓から見るスコールの空が、気温30度近いとは思えない。ところが現地の人は、別に冷え性で悩んだりしていないようだ。平気でヘソ出しルックで働いてるひともいる。日本人も3年も働けば慣れるという。地域による外気と冷房の温度差の関係をしっかり研究したら、面白い結果がでるんじゃないだろうか。

 

開発独裁のビジネスの国、ひとりあたりのGDPは日本を越えたと聞く。オフィスに行くと女性の社会進出率が高いこともわかる。ただ、なんとなく、階層社会の存在も感じる。既婚女性が健全に働いているのは、フルタイムのメイドを雇えるからだという。メイドはマレーシアや低所得の国々からやってくる。掃除のおばちゃんとか道路工事のひととかも、南アジア、西アジア系の顔立ちの人が多いように思える。

東京23区が独立し、そこでバリバリ働くビジネスパーソンが“東京人”と認められ、周辺の低所得県から来たひとたちがメイドなどをやりながら昭島あたりに住んでいる構図を描いてみる。そうしてみると、ごく単純に、GDPが抜かれたからどうとか、日本もシンガポールみたくあるべきとか、そういうことは言えないな、と思う。

ただ、そういう低所得のひとたちも、ちゃんと公営住宅を与えられて、それなりに満足な生活ができるようになっているからこそ、一党独裁だって許されているんだろう。

 

シンガポールのテレビは、多チャンネルであるが、コンテンツは貧弱に見えた。人口が低いせいもあるが、メディア産業が抑えられてきた、という事実も影響しているだろう。

最終日、半日だけ与えられた自由行動で、街をぷらぷら歩き、タクシーにのった。運転士のじいさんが英語で、香港人か? と話しかけてきた。日本人だと答えると、顔も服も香港人そっくりだな、と言ってきた。ほっとけ!

じいさんは昔日本に行ったことがあるという。テレビの取材で、日本の総理大臣にインタビューしたんだぞ! と。へえー、どの総理大臣と会ったんです?

「ああ、昔だからな、忘れてしまったな」

いやまあ言われても僕もわかんないかもしれませんよ、日本はしょっちゅう総理大臣かわりますもん。

「ははは、それがいいんだよ。それでも国は動いてるんだからな」

まあ確かに、誰が総理でもつぶれませんもんね!

シンガポールは、そうはならないからなあ」

彼は独立系のテレビ局で働いていた、と言った。そんな彼がなぜいまタクシーを運転しているのか、彼は政治になにを思っているのか、正直、めんどくさくて訊かなかった。でも、訊いたほうがよかったかなと、いま思ってる。