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Gaao Line's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

海外ドラマ: Law&Order 性犯罪特捜班 3-8話『悪魔の子』

――チャイナタウンでレイプ事件が発生。アジア人マフィア同士の抗争が原因かと思われたが、犯人は中国語を操る黒人だった。捜査の中で、彼はかつて黒人男性にレイプされた中国人女性の子供だったことが判明する。同じくレイプ犯の子供である刑事オリビアは――

レイプ犯の子供がレイプ犯となるという、倫理的にも非常にセンシティブなテーマを扱ったエピソード。これが成立するのは、やはり刑事側にもレイプ犯の子供という設定のキャラクターがいて、バイアスを中和してくれるからだろう。法廷パートでは、犯人の弁護側が「暴力性向は遺伝子で定められており、遺伝によって引き起こされた病気は本人の罪ではない」という、これまた先鋭的な弁護手法を見せてくれる。

ほんの少し気になったのは、レイプ犯の設定よりも、チャイナタウンの設定。あそこまで閉鎖的じゃないと思うんだけどな。それから中国語を使う黒人て、けっこういると思う。

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中国系社会のなかで、レイプ犯の子供である上に肌の色まで違うというハンディキャップを負った犯人。その心理を描写するのに活躍するのが、セミレギュラーの心理学者ジョージ・ホァンだ。彼自身が中国系という設定なので、今回は通訳まで買って出てる。ホァン先生はシーズン2からの出演だけど、感情を表に出さず、非常に落ち着いた口調で犯罪心理学を語るシブい男だ。こういう、ぼそぼそ喋る設定の中国系キャラは珍しい。たま〜に、非常に興味深い犯罪が起こると、ほんの少し嬉しそうに犯罪心理を語っちゃったりして、そこがまたカワイイ。

ホァン先生演じるのはB.D.ウォン。なんと『M.バタフライ』でトニー賞を含め5つの賞を受賞してる立派な舞台俳優だ。テレビでももっと色んな演技を観てみたいと思うんだけど、8年もSVUに同役で出演し続けてるところをみると、今が気に入ってるんだろな。意外と日本語のWikipediaが充実してる。英語表記D.B.で中国名が黃榮亮って音が合わないじゃん、と思ったら、D.B.は Bradley Darryl の略なんだな。

視聴日誌補足こちらのサイトに、タイムリーに今回のエピソードの裁判描写を補足するような本の紹介が。時期的には本の出版よりテレビの方が若干早いようだけど、番組の中では裁判長が「それはトンデモ仮説だ」みたいなこと言ってる。21世紀になって、こういう行動遺伝子の研究が深まってきたんだろうな。