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海外ドラマ: HEROES/ヒーローズ 第40話『死にゆく光』

――レベル5から脱獄した“人形つかい”(パペットマスター)能力者エリック・ドイルは、小さな劇場を支配していた。彼を追ったメレディスは、ドイルの能力に捕らえられ、歪んだ愛情の対象とされようとしていた。メレディスを助けるために劇場に入ったクレアとサンドラも、ドイルの能力の支配下に置かれ、3人はドイルによって、生死を賭けた“劇”を演じさせられる――

HEROESはモジュラー型(複数のストーリーが平行して連続する形式)のドラマだが、個々のキャラクターが受け持つ物語の独立性が非常に高いので、「ひとつのエピソード」に対して感想を持ちにくい。

『LOST』はその点、1話の中でも複数のストーリーが一環したテーマでまとめられて巧いと思わせるエピソードが多いんだが、HEROESは個々の物語の連続性を重視する傾向が強すぎるように感じる。僕がHEROESにイマイチのめり込めないのは、そういう構造のせいなのかも知れない(連続性がもっと強い『24』は、更にスルーだし)。

そんな中でも、はっとさせられるエピソードはある。たとえば今回のエリック・ドイルの物語は、レギュラーキャラクターの設定を活かした上で、独立したドラマ空間を巧く作り出していた。生みの母と育ての母、そして娘が、なんの関係もない男の歪んだ精神によって支配下に置かれ、即席の無意味な親子劇を演じさせられるのだ。ドイルは演出家兼観客、まさにパペットマスターである。

ドイルを演じるディビッド・ローレンスの狂気を感じさせる演技と、ふたりの母親役の熟練した演技、それに狭い部屋に4人がテーブルを囲むというセットで、なかなか引き込まれるシーンが成立していた。ただ残念なのが、結局クレアの能力に頼ることで物語が終わってしまい、3人の関係に明確なデベロップメントが観られなかったこと。それは、今後のエピソードに響いてくるから刮目せよ、ということなんだろうが。

今回はヒロとアフリカ人の「時間跳躍者VS予知能力者」の騙しあいも、超能力合戦というとすぐに殴る蹴る刺す稲妻バリバリ挙句の果てに核爆発、というこのシリーズで、純粋に暴力に頼らない(いやシャベルで頭叩くんだが)バトルで面白かった。