前回まとまりのないエントリを書いて、それからずいぶん間があいてしまった。リハビリに、『ザ・ホワイトハウス』シーズン6最終話の吹き替え版セリフ起こしをしておこう。
指名候補者選びが紛糾した民主党全国党大会の、マシュー・サントス大統領候補の最後の演説だ。短い尺で言葉をクライマックスに運んでゆく、見事なスピーチだったと思う。そして吹き替え版の文章の運びも、演技も、映像のトーンをしっかりとフォローしながら、文章としての良さを充分に感じさせるものだった。
本来は別の形で、今夜ここに、立つことを望んでいました。
私は今、尊敬する人々から要請を受けています。これをひとつのチャンスだととらえて、いっしょに戦ってきた候補を、サポートしてもらいたいと。指名候補の決定に協力を求められています。
だが私にはできない。私にはできない。わたしの立場では、指名候補を決めることはできません。決定権はみなさんだけにあるのですから。
きょうはベイカー知事(候補)の問題がマスコミをにぎわせました。知事は夫人の健康状態を公表しなかった。すべきだったという人も多い。私にはベイカー知事が、見栄やプライドを気にして公表を差し控えたとは思えません。知事が公表しなかったのは、我々が偽善者だからだ、そう思います。
我々はみな、不完全だ。完璧な人間はいない。だが欠点などないようなふりをする。我々はみな、ままならぬ人生を送っています。それなのにきっとどこかに、理想の人生があると信じ、国のリーダーはそれを体現すべきだという。もし国のリーダーに、より高い倫理観に基づく暮らしを期待するなら、それはだましてくれと言っているのと同じです。
今週は様々な誘いがあった。仕事やポストとひきかえに支持を取り付けるべきだと。そういう人もいれば、みなさんの代議員としての権利より、党の結束のほうが大事だという人もいました。しかしそれは違います。
そう、それは違う。決断を下すのはみなさんだ。
我々を完璧だと思うなら投票しないでほしい。みなさんのためだけに何かをするような人物にも投票しないでください。夢や、希望や、理想を分かち合うことができる、そういう人物を、選んでほしい。
この国の強さと、自由を守るために必要なもの。それを最も体現する人物に投票してください。そしてそれが済んだら、堂々と胸を張って、シアトルや、ボストンや、マイアミや、オマハや、タルサや、シカゴや、アトランタに帰って、ぜひ、こう言ってください。私はこの誇り高き、民主党の一員ですと!
誰もがサントスに勝ちはないと思っていた民主党の指名争いで、サントスはこの天性とも言えるスピーチ能力で逆転に成功する。人々の心が次第にサントスに傾いてゆくのが、この演説に挿入される様々な人々の表情から感じ取れる。良い演説を聴いている人々の顔は幸せそうだ。バートレット大統領とともにテレビで演説を見ていた娘のゾーイが、そんな顔をしていたのが印象的だ(ささやかだが、素晴らしい演技!)。そして、バートレット大統領も、そのひとりだった。
何よりも印象的だったのが、夫の勝利を確信していたサントス婦人が、テレビで流れる演説を観て涙目で微笑むシーン。愛と誇りにあふれた良い表情だった。