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Gaaoline's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

ザ・ホワイトハウス 136話『リークの張本人』:海外ドラマレビュー

ザ・ホワイトハウスは最終第7シーズンでいよいよ大統領選の本選挙がテーマとなり、視聴者は半年かけて、架空のアメリカ大統領選を追体験することになる。バートレット大統領の後継たる民主党のサントス議員と、共和党のヴィニック議員の熾烈なキャンペーンを通して、毎回アメリカの抱えるさまざまな政治的議題が提示される。
無論、このドラマの製作者は民主党よりのリベラルな考え方に軸足を置いているんだけど、共和党側にも非常に魅力的なキャラクターを配している。日本の我々も、アメリカ社会の争点や、アメリカ自身が誇りにしているものとは何なのかを、非常に親しみやすいかたちで学ぶことができる。

第7シーズン第4話にあたるこのエピソードでは、選挙選のテーマとして「宗教と教育」の問題が取り上げられ、リベラル派である筈のサントスが「インテリジェント・デザインを信じますか」という質問に、「神を信じる」という紙一重の回答をしてしまう。一方バートレット大統領の官邸では軍用シャトルの機密リーク問題が最高潮に達し、更にテロによるパレスチナ指導者殺害で世界情勢まで危うくなるという非常にホットなシチュエーション。この3つのプロットがストーリー面でも演出面でも有機的に結びつき、ひとつの物語として展開するのは、まさに米国クオリティ・ドラマの真骨頂だ。

3つの混乱が駆け上るように物語を展開させ、後半、サントスのレオナルド高校PTA対話集会のシーンとなる。これまで押し寄せてきた緊迫感がふっと引き、画面の色味が落ち着き、宗教と教育に関する、静かな対話が始まる。以下、吹き替え版セリフ起こし。

科学教師「サントス議員、インテリジェントデザイン説を信じていますか?」

サントス「お名前は?」

科学教師「ミシェル・バンクス。この学校で、科学を教えています」

サントス「わたしはカトリック教徒で、毎週教会に行っています。わたしは神を信じていますし、世界を創った偉大なる存在がいると思っています。(別の人を指名し)どうぞ、お名前は?」

国語教師「クリフォード・グリドルス。ここで国語の教師をしています」

サントス「はじめまして」

国語教師「どうも。訊いていいですか? 進化論を信じているかどうか」

サントス「進化論抜きで、地質学や人類学や動物学を教えるのは、かなり難しいでしょうね。科学を信じることと神を信じることは、矛盾しないと思います」

国語教師「インテリジェント・デザイン説と進化論は、どちらの考え方も、公立の学校で教えるべきだと思いますか?」

サントス「……そうは思いません。進化論は科学に基づく考え方で、インテリジェント・デザインは、宗教に基づく考え方です。合衆国憲法では、公立校で宗教を教えるのは禁じています」

国語教師「ここにいる者は、子供にはあらゆる考え方を教えてほしいと思っています」

サントス「わたしもそう思います。進化論は完璧ではない。不十分なところもありますが、科学的事実に基づいている。事実というのは、予想や検証や証明ができる。インテリジェント・デザイン説は、神学的な見方です。多くの人が、何らかの力が働いたと思っているでしょう……生命の誕生に(一同:笑)。それが何かはわからない」

国語教師「サントス議員、わたしたちは信仰と一致する科学を子供たちに教えてほしいと思っています」

サントス「お気持ちはわかります。ですが、学校で非科学的なことを教えると、系統立てた学術的な思考を学べなくなる。それには危機感を覚えます。なぜなら、公立校の目的が危うくなるからです。学術的に読み書きのできる労働人口を育てる目的です。もし教育に問題があると思うなら、参加してください。教育委員会の方針に不満があるのなら、委員になってください。参加することこそ、民主主義を守る、一番の方法なのですから。きょうはありがとうございました」

まるでゴールに吸い込まれるボールのように、“聞きたかった答え”が返ってくる(もちろん脚本家に書かれたんだから当然なんだが)。この対話のシーンは原語で観ていて、サントスのメッセージが終わった瞬間、テレビの中の聴衆と同じように拍手をしてしまった。

参加することが大事。どんなときにもこのメッセージを打ち出せることが、アメリカ政治の魅力の源なのかと思う。

なお、今回は翻訳もかなり苦戦した痕跡が見られた。会話中に笑いが起こる部分は、原語では "I'm sure that many of us would agree that at the beginning of all that begat-ing, something begun" で、ちょっとした言葉遊びになってる。このウィットが利くから、原語のサントスのトークは流れるように続き、引き込まれてゆくのだけれど、日本語版でこのこの笑いを違和感なく活かしたセリフにするのは、さすがに神業だよ。