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Gaao Line's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

映画:スターウォーズ、ギャラクティカ、そして『アルゴ』

1980年のイラン・イラク戦争を前に起こったアメリカ大使館人質事件。映画はこの裏で起こった極秘の人質脱出作戦を描く。

 

ウソのようなホントの話を、徹底的にホントに見せるウソ

この実話をもとにした映画では『ニセモノの映画の制作』を軸にした人質救出作戦が展開される。ニセモノである役者たちがホンモノの人物の役でニセモノ映画を制作するホンモノの映画ってわけ。ちょっと捻くれた視点なのかもしれないけど、これが妙に面白い。何がホンモノなのか? ニセモノのなかに込められたホンモノを見抜くことができるのか、製作者から試されてるような気がする。

こんなウソみたいなホントの話を、映画はいたって生真面目に伝える。抑制された演技をする役者の目、息遣いから、人質たちの苦悩が確かに伝わってくる。当時のハリウッドらしい情景、飛び立つアルミボディの飛行機の輝き、イランの街並みの遠景など、映像のリアリティにも目を奪われた。事実とフィクションが混在した映画から、人質や救出者の人間としてのほんとうの感情が、感じ取れる。製作者の意図にまんまとハマって、引き込まれてしまった。

 

だからこそ気になる、映画的な安っぽさ

ただ、とことんリアリティにこだわった映画だからこそ、ちょっとウソっぽいところが見えるとすごく気になる。たとえば肝心のサスペンスの盛り上げ方。イランとペンタゴン、ハリウッドの3か所カットバックで盛り上げるやりかたはたのしいんだけど、たとえばハリウッドの撮影ロケ待ちで電話が取れなくてイラン側危機一髪とか、飛行機が飛び立つ直前に正体が……なんて展開は、ちょっと安直で、チープかなあ、と思ってしまう。それも事実なのかもしれないけれど。

なにより画竜点睛だと思ったのが、イラン人側の描かれ方が平面的だったこと。冒頭の説明で彼らにも分があることをちゃんと説明してるんだから、彼らを得体のしれない異世界の集団と描かず、一瞬でも、主人公側と心の交流があるシーンを作ってほしかった。肉親を殺された苦悩や、自らの正義を信奉する想いが、事実に忠実であろうとした映画のそこかしこにほの見えていたのだから。

 

スター・ウォーズギャラクティカ、そしてアルゴ

さいごに。この映画に出てくる『アルゴ』という映画が、往年のゼラズニイのSF小説『光の王』の脚本化だと聞いて、ちょっと笑ってしまった。たしかに、映画で語られるプロットはずいぶん陳腐化されてるけど、ラストの「花一本」というところは原作へのリスペクトだ。

当時は『スター・ウォーズ』がヒットして、テレビでは聖書の出エジプト記などをベースにした『宇宙空母ギャラクティカ』が鳴り物入りで始まったころ。インド神話(バガヴァッド・ギーターだとか)をベースにした『光の王』が映画化されるというのが、この映画でいちばんリアルな設定だったのかもしれない。ていうか本当なんだからリアルもへったくれもないんだけど。