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Gaao Line's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

海外ドラマ: Law&Order 性犯罪捜査班:11-10話『移民』

1シーズンに1話はある、ICE-T演じる、フィンことトゥトゥーラ刑事メインのエピ。彼が主役になるとどうもヒロイック・アクション系の話が多いような印象だが、今回は裁判劇として見応えがあった。

フィンを頼る売春婦が見つけた、子供の死体。管轄外であるがために、フィンは内々で捜査を続けるが、新聞の報道をきっかけにこれが移民の子供をターゲットとした連続殺人であることが判明する。本当の悪は、不法移民に理不尽な攻撃を続ける犯人か、それとも彼に思想を植え付けたテレビ番組なのか……?

メディアが扇動する犯罪という問題は、常にLaw&Orderシリーズのなかで問われてきた。Law&Orderという番組自身が、かつて社会問題に起因する暴力事件を逆に煽っているとそしられたことも、無関係ではないだろう。

ただシリーズのエピソードとして見れば、常に取り上げられるからこそ新鮮味がないと言えないこともない。直接の殺人者を裁くか、その大元を裁くかで起こる葛藤というのは、いつも通りのLaw&Orderという印象だ。若干印象が異なるのは、今回大元のメディアを裁こうとするのが、彼ら差別主義者の味方かと思われていた弁護士であることだ。

そして終盤、フィンとこの弁護士との会話で、物語の軸が見えてくる。それは黒人差別と同根の問題だ。善良なはずの我々が、なぜ特定の人種や移民に対して“無邪気な”悪意を持ち、それを差別感情として認識することができないのか? そして、差別をする我々は、むしろ扇動者に操られた犠牲者ではないのか?

物語は最後まで逡巡しながらも、視聴者に突きつける。我々は犠牲者だという言い逃れで、自分のなかに潜む本当の悪に、目を逸らすことにならないのか、と。