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Law & Order ベスト3エピソード集 - シーズン16~20

独断で決める Law & Order 各シーズンベスト3、今回はシーズン16~20の計107話から、15話を選出。 いよいよシリーズ終盤、キャストが若返えり、派手な展開のエピソードも増えています。しかしテーマとなる社会問題は、実は日本社会の抱える問題とほどんと変わりありません。身近な問題解決のヒントに! Let's watch Law & Order!

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ロー&オーダー 第4クォーター(2006 - 2010) ベスト15

シーズン16 ‐ ベスト3

16-8『血塗られた愛国心』★★★★★

移民問題、そして移民排斥運動の問題を、これでもかと見せつける。ごく普通の人間が、自分の人生に充実感を得るために、いつしか極端な差別運動に吸い込まれるように加担してしまう。その恐怖が、裁判の証言を通してしっかりと語られる。重苦しい物語がすべてが終わり、最後にお茶を差し出された検事のカットがまた鮮烈。そのお茶を注ぐのは誰だ。

16-18『葛藤』★★★★★

原題 "Thinking Makes It So" はハムレットの一節だが、まさにその通りの内容。邪悪な犯人から命を守るために行われる、警察の必死の捜査。正義の為には多少の悪も許されるのか? だとすれば、その線引きはどこにあるのか? 善悪は誰が決めるのか? 永遠に出ない問題の矢面に立たされるのは、法廷で悪を追及するはずの検察官たち。裁判官の言葉が、どすんと胸に落ちる。

16-22『最後の手段』★★★★★(傑作!)

集団による意思決定によって起こされる犯罪は、個人の倫理や恐怖心が薄まるため、往々にして過剰なものとなる。様々なエピで繰り返し描かれてきたマフィア・組織犯罪の恐怖だけれど、それが今回最悪なものとなって検察を襲う。それに対するマッコイの復讐戦も、あまりに濃密な内容に時間を忘れるほど。非情な戦いを終え、わずかに歪む彼の表情が忘れられない。

そのほか

1話、3話、6話、9話、11話、17話に★5点をつけている。組織犯罪や無差別殺人、誘拐など、緊迫感の高いエピが多く、点数も高くなった。また、★5はえうけなかった10話や21話など、メインキャラが主役ととなり事件に感情的にコミットする物語も多く、楽しめるエピが多い。

 

シーズン17 ‐ ベスト3

17-6『戦争成金』★★★★★

イラク戦争軍需産業を題材に、守られるべき正義とはなにか、激しい論戦が繰り広げられる。自分の過ちを暗に認めながらその行いを止めない軍事企業のトップや、「正義を高望みするな」という保守派ブランチ地方検事の言葉には、最大公約数の「正しさ」を遂行したいという強い信念がこもる。一方マッコイ検事には、その正義への信念こそ別の悪を生む根源であり、法によって止めなければならないという信念が。正義がぶつかりあい、息の詰まる大論戦が楽しめる。

17-7『酒の中の真実』★★★★★(傑作!)

ヘイトスピーチを繰り返す男。彼の生み出した憎悪が人を殺す。彼は、自分の発言に責任を取れるのか? 「特定人種が社会で悪行を繰り返しており、罰を受けるのは当然だ」という言説を、彼自身すべて正しいと信じていたのか? 誰もがいつのまにかヘイトのとりこになってしまうかもしれない。そんな状況に胸を締め付けられる物語。

17-9『正義か復讐か』★★★★★

逃亡犯を追いかける刑事たちの息詰まるサスペンス。その結末はシリーズ屈指の衝撃度。まさに極悪を体現したような逃亡犯だけど、その悪を裁く権利は誰にあるのか? 悪を裁くことに悪は無いのか? 多重的な倫理の葛藤は、極悪の犯人とその被害者、どちらにも「親子」という関係を描くことで、いっそう強く示される。非情によくまとまったドラマ。

そのほか

4話、19話、22話に★5点をつけている。19話は珍しく(最後のほんの1シーンだが)マッコイの私生活が描かれ、シリーズを観続けたマッコイファンにはボーナスのようなエピ。22話は非情に珍しいコメディ色の強いエピソードだが、その結末にはじんわりと心にしみるものがある。

 

シーズン18 - ベスト3

18-2『誘拐の裏側』★★★★★

ニューヨーク大停電の中で行われる犯罪と捜査。エアコンのない夜の暑さや苛立ちが伝わってくるような空気感がよく伝わってきて、その中で緊迫感のある捜査が楽しめる。裁判編も停電の混乱を作劇に活かしながら、その原因に迫るという二重に巧くできた展開。ニューヨークという舞台の引き出しの多さを感じる一篇。

18-7『ずるい女』★★★★★

Law&Orderの「悪女モノ」パターンの中でも、本作はピカいち。捜査パートでのまさかと思わせる展開で捕まった彼女は、法廷パートの追いつめても追い詰めても落とせない。このイライラ感が逆に楽しくなってきて、最後は感心の域に到達する。見事な性格描写。

18-16『ルビローサの挑戦』★★★★★

こちらもエンタメ色の強い一篇。裁判の都合でルビローサ検事補が突然弁護側に指名されてしまい、局内で独り敵となり争うという展開で、まさに正義の裏側の視点から犯罪や犯罪者のありようを描く。敵になってみると意外と手ごわい検事補に戸惑う上司の面々は楽しいが、真実の追求と職務の遂行というテーマは意外に思い。

そのほか

13話、14話に★5点をつけている。14話はシリーズ後半を引っ張ったグリーン刑事最後の事件で、彼のやさしさに泣ける人情話。シリーズ終盤に入り役者も若返ったことから、突飛な設定で目を引くエピも多い。中でも12話は女優のお色気で引っ張る珍作の部類。

 

シーズン19 ‐ ベスト3

19-1『報復の乱闘』★★★★★

同時多発テロを契機に制定された対テロ法を、国内の乱闘事件に適用するという法の暴走を、主役であるマッコイがやってみせる。歯止めの利かない暴力から犠牲者を救い、正義を果たすために、どこに一線を引くべきなのか? 善悪の判断を視聴者にゆだねる一篇。

19-8『悲しき子供たち』★★★★★

ハリケーンで崩壊状態になったハイチから、人道支援の名のもとに海外に養子として取られる子供たち。彼らが実態として召使い、つまり奴隷として扱われる実態を描く。奴隷を使う加害者側が「良いことをしている」と信じ切っている点は、今も昔も変わらない。法制度のはざまで苦境から抜け出すことができない被害者がいる。強烈なメッセージとなる一本。

19-9『偽証による殺人』★★★★★

アメリカの法制度といえば、派手な訴訟で荒稼ぎする高級弁護士。このシリーズではあまり描かれてこなかった弁護士の負の一面が、今回正面からサスペンスとして描かれる。今シーズン繰り広げられるカッター検事とルーポ刑事の微妙な反目と友情もたっぷり楽しめる。

そのほか

4話に★5点をつけている。このほか、閉鎖的な村を舞台にした5話や都市伝説題材の12話など、社会派というよりフィクションらしい面白さを持った筋書きのエピも目立つ。10話の中年男の抱く女性への劣等感に焦点を当てたエピソードは、地味だがイヤ~な話。

 

シーズン20 - ベスト3

20-1『人の闇を映す文書』★★★★★

イラク戦争で米軍が行った捕虜の拷問問題が題材。殺人事件ながら、マッコイ検事お得意のトリッキーな弁論で、なんと米国の政策そのものが裁判で試されることに。その「倫理のドライブ感」とでもいうべき法廷ドラマならではの展開が堪能できる。またマッコイとカッターという子弟の成長物語としても楽しい。

20-5『命を問う法廷』★★★★★(傑作!)

キリスト教が絡み、どうしても日本ではその対立が理解しにくい米国の中絶問題。しかし、このエピソードでは焦点となる1件の中絶手術にある真相を与えることで、その本質を抉り出してみせる。それは宗教ではなく、生命そのものの問題。刑事・検事たちの議論もずっしりとした聴きごたえ。

20-23『報復へのカウントダウン』★★★★★

日本でも報道で伝わる教師の劣悪な労働環境。アメリカはどうかというと、もっと劣悪だった! 通常の構成を変え、警察・検察が共同で犯罪予告の犯人を追う過程でこの重大な社会問題を描き出す。そして、シリーズ最長出演のヴァン・ビューレン警部補に焦点を当て、この20年のドラマが締めくくられる。

そのほか

シーズン20は初の試みとして、シーズンを通してヴァン・ビューレン警部補のがん治療が描かれる。ベスト3以外では11話に★5点をつけているが、これはヴァン・ビューレンのプロットが本筋のプロットに上手く取り込まれ、感動を押し上げた例。こほのか、21話は久々にハードサイエンスなネタで、実在する医療実験で使われているある黒人女性のがん細胞を、人種・貧困問題とうまく絡めている。変わり種では4話も笑えるシーンが多く楽しい。

 

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