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『パークランド - ケネディ暗殺、真実の4日間』映画感想

ケネディ暗殺を描いた作品はメディアを問わず数あるけれど、本作は周辺人物の行動記録・証言をまとめ上げ、可能な限り事実に即した形で当時の状況を描いてみせる。言ってみれば『ER』に近い、パニック的状況の中から紡ぎあげる、“普通の人々”の群像劇だ。

あらすじ

ケネディ大統領が撃たれた。偶然現場を撮影していたおっさんは気が動転、大統領が運び込まれた病院は大パニック、ジャクリーン夫人は血まみれだし、シークレット・サービスはやり場のない怒りに駆られて荒ぶるし、容疑者のお兄さんには頭のおかしいお母さんがいるし、とにかくみんな大変なことに。

感想

こういう硬派なつくりの映画は大好きなのに、なぜか本作では気持ちが最後までついていかなかった。頭ではすっごく面白い状況だと判っているのに、何がもの足りなかったのかな、と考えると、それはユーモアだったのかもしれない。

f:id:debabocho:20140711175253j:plain事件描写のリアリティは凄い。撃たれた瞬間が明確に表現されないこともあって、観ているこちらも劇中の人々と同じ心理状態になってくる。当初何があったのかわかず、徐々にパニックが心に広がっていくのだ。特に、警護スタッフがM16ライフルを構えるシーンが印象的だ。背広姿に機関銃という異常な絵が、景色を一気に緊迫したものへと変える。窓の外から聞こえる悲鳴やクラクションの音は、9.11を思い出させる。米国人にとって、JFK暗殺は9.11と同じレベルのパニックだったのだろう。

この緊迫が複数のプロットにまたがって続くんだが、中盤になって、次第に観ているこちらの集中力が切れてしまった。問題は、どのプロットにも気の抜きどころがないこと。もちろん中盤テンポも少し変わるし、傍から見れば間抜けな状況も描かれるんだけど、そこで心を画面から離して、笑って小休止することができえない。結果、だんだん単調になってくる。

例えば大統領の棺を専用機に積み込むシーンなんて、状況ははっきり言ってコメディだ。タラップをうまく登れず棺の中からゴツンゴツン音がして(脳みそもれちゃう!)、扉をくぐれば曲がれないので大急ぎでノコギリで内側の壁を切り取る始末。

でも、大統領の死というあまりに重い事件は、そんな状況をコメディとして描くことを許さない。棺を抱えたシークレット・サービスの、感動的な努力として描かれる。9.11がギャグにできないのと同じだ。

 

オリバー・ストーンの『JFK』のような陰謀論テーマから一歩引いて、事件の状況そのものを主役にした本作は、すごく現代にマッチしていると思う。登場人物の会話や表情から、様々なメッセージや共感を得ることができる。でも、1本の映画としてどうかというと、どうにももどかしい作品だった。