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スニッファー - シーズン1:海外ドラマ全話レビュー

AXNミステリーで放送された『スニッファー ウクライナの名探偵』、おおよそ140文字エピソードガイド&感想、第1シーズン。本作はNHKで翻案され、国内版が放送されている。

あらすじ

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異常嗅覚を持つ男、通称「スニッファー」。彼は世界のあらゆる香りに精通しており、僅かな残り香から、そこにあったモノや人物を特定する能力を持つ。超能力を持ちながらひねくれものの彼は、ロシア特別捜査局のヴィクトル・レベデフ大佐に嫌々ながら協力し、数々の難事件に挑んでいく。

スニッファーの別れた妻とその息子は、彼の人生をかき回す。そんななか知り合った医師の女性とスニッファーは恋に落ちるが、彼女には秘密があった。一方軍では特殊部隊の暗躍が始まり……。

エピソード・レビュー

1-1話

会社社長の殺害現場で、スニッファーはニコチンパッチとユーロ札の匂いを嗅ぐ。社長はなぜ殺されたのか? 導入編だけにプロットは比較的シンプルだが、スニッファーの超嗅覚の見せ場は多く、背景の家族関係もうまく絡められてる。期待させる内容。★★★★

1-2話

不動産開発に関わる大物を殺していくスナイパー。スニッファーは次の暗殺を防げるのか……。緊迫感のある物語になるかと思いきや意外とそうでもなく。ただラストはきっちりアクションで締めた。連続で汚職問題が題材となるのもロシアならではか。★★★

1-3話

シリーズの経糸だったスニッファーの息子の問題が、3話目にして早くもフォーカスされる。アクションあり返送ありと充実の内容だが、能力を失ったスニッファーにフォーカスが行かなかったのが残念。暴かれるのは警察の汚職汚職ばっかりだな……。★★★★

1-4話

ドイツから返還されたレーピンの名画は贋作? スニッファーはドイツ側に雇われ、ロシアの捜査局と競いながら捜査を進めるが……。殺人が絡むアクションシーンのない純粋な推理もの。謎解きは容易だが、レギュラーもゲストも個性が出て楽しい展開。★★★★

1-5話

軍の病院で射殺された若い兵たち。第1348部隊で何があったのか? 軍内のいじめ(カフカス出身者が狙われるというのがリアル)が森の中の美しい恋物語に化ける、驚きのある展開。3話に続き、探偵モノらしい適度に浮世離れした空気が心地よい。★★★★

1‐6話

誘拐された社長の息子。肝硬変の匂いを放つ犯人は誰だ? 推理が二転三転する正統派のミステリで、歯ごたえがある。様々な匂いが一貫して物語を導くのも、作品のユニークさを印象付ける。派手さはないが良質な佳作。奇妙な日本描写はアバタもエクボ。★★★★★

1-7話

マフィアのボスが殺され抗争が激化。スニッファーは1枚のスカーフから犯人を導きだせるか? 今回はアクション&特撮たっぷり。捜査はいつも通りだがマフィアに絡むので緊迫感がある。ただボスに妙に凄みがないのは演出不足か、意図通りか? ★★★★

1-8話

スニッファーに届いた全く匂いのない手紙は、殺人鬼からの挑戦状だった。古典的かつ王道の探偵VS犯罪者バトル! ハイテンションでぐいぐい引っ張られる。犯人の動機はありがちだし脚本の穴もあるけど、それを補う物語のノリとキャラの魅力。★★★★

 

まとめ

総ポイント数

32 / 40

平均

4.00

感想

なんと珍しい、ウクライナ製のドラマ。タイトルに惹かれて観始めたのだけれど、思った以上に出来が良く、評価も高めに出してしまった。なお、ウクライナ製とはいえ舞台はロシアで、製作費の比較的安い国でクオリティの高いドラマを作り、ロシア圏(旧ソ連領域)全体の市場や、その外を狙ったパッケージだと思われる。日本に対しても「アイディア売り」が成功していて、NHKで翻案したバージョンが作られている。

肝心の中身だけれど、“におい”で犯行現場の状況が分かるというワンアイディアの超能力を、『CSI 科学捜査班』のようなCGIによる描写で描き、それを物語の推進剤としている。世の中まだまだ、アイディアは尽きないんだなと感心してしまった。

物語もオーセンティックで、シリアスになり過ぎず、おちゃけ過ぎず。探偵という非日常的なキャラを軸に構築された世界は、リアルとは言えないけれど、説得力がある。捜査局のオフィスが浮世離れしたおしゃれさだったり、登場人物が結構わざとらしい独り言を言ったりする、最近のドラマじゃちょっとそれはないんじゃないの? と思える描写も、きちっと作りこまれた作品世界の中でなら、あまり気にならない。

エピソード的には、スニッファーの家族にフォーカスをあてた最初の3話が終わったあと、中盤以降は話のネタが多彩になってからが面白い。1話完結の推理ドラマとしてよくできている。殺人事件以外の事件を匂いで解決する4話、どこかファンタシーのような結末になる5話、そして歯ごたえのある推理が展開する6話。どれも楽しめた。

 余談

このドラマ、ウクライナ・ロシアの現代文化がそこかしこに見えるのも面白い。たとえば第1話では、「塩洞窟療法」みたいなのが出てくる。塩で塗り固められた部屋に入ってアレルギーを直すそうで、塩の産地によって効果が違うとか。また第2話では検察幹部の高級酒としてサントリーウイスキー ローヤルが出てきたりする。ステータスなんだろうか?