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『キャリー(クロエ・モレッツ版)』映画感想 - 女は獣だ

クロエ・グレース・モレッツに関しては、なにしろ『HICK ルリ13歳の旅』というとんでもない変態映画を観てしまったので、もうこの可哀想な役しか回ってこない女優の行く末を見届けるしかないと覚悟を決めていたんだけれど、まあこの『キャリー』でも案の定ひどいことになってたわけ(ほめてます)。

クロエ・モレッツのグロさの研究

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『ルリ』ではトウモロコシ畑でサイコパス相手に処女失った彼女だけれど(最中にはやく終われと数え歌かぞえる演出が印象的)、まあ今回もあられもない姿。デ・パルマが撮った1976年版のキャリーでは単なる体育のバレーボールのシーンだったのが、今作は「水中バレー」になり、彼女とまわりの女子高生の下半身がプールの中からねっとりと撮られる。キモい。

このシーン、男性向けサービスだ! で割り切れればまだいいんだけど、この前に追加されたキャリーママの出産シーンと、この後にくるシャワー室での初潮シーンを考えると、俄然意味が違ってくる。ここでのカメラの焦点は、水の中のちちしりふととももじゃなくて、子宮にある。笑っちゃうほどキモい。キモいキモい。

有名なシャワー室での「18歳で初潮」シーンも清々しいゲスさ。体育の先生にすがってスカートにべったりとついた紫の血の跡とか、においまでイメージさせる。うひーなにこの一貫性。満腹。

同、ブタさの研究

クロエ・モレッツは横向いたときに凄く大人びた美人なのに正面から見るとブタ鼻のガキで、それが人気のツボなんだけど、今回の彼女は体型もヤバい。二の腕やウェストなど、見るからにゆるくなってる。いわゆる処女肥りだ(ほんとよくこんな映画に出したな……)。いじめっ子の名セリフ「ブタにはブタの血がお似合いよ!」も妙にリアリティがある。

そんな彼女だから、クライマックスシーンも76年版と筋書きは同じでも、演出が相当違う。76年版のガリ痩せ無表情のキャリーから一転、醜いまでに顔を歪ませ、おもいきり腕を振り上げ、自らの怒りを意識的に念動力に変え相手にぶつける。ウウウ、ウガーッ! ブンッ(腕を振る)ドカーン! X-MENで見たぞこういうやつ。

女性監督だから撮れた、生きたキャリー

こんな感じですばらしいゲテモノ映画になったなあ、と思っていたんだけれど、これ監督がキンバリー・ピアースという女性作家だと知って、あっと思った。

冒頭のアンバランスなまでの生理描写は、いくら変態性欲の男性作家だってもう少し表面的な美に拘っちゃうだろうなと思ってたのに、そういう衒ったところがなくゲスいのは、そもそも監督にそういう男性的な指向がないからか。

クライマックスの超能力シーンだってそうだ。デ・パルマの撮る、幽霊か妖精かのように細く、身動きせずに憎悪のパワーを発散するキャリーは、あまりに印象的だけれど、それはとても外面的な美の表現だ。

思春期の少女が内面に抱える怒りをテーマとするなら、ピアースの撮る、憎悪に顔を歪ませ、腕を振り回して破壊能力を放射する、獣じみたキャリーこそ、よりリアルで、真に迫った感情表現なのかもしれない。その結果はチープなSFアクションなんだけど。

そういえば今作では、キャリーが密かに思いを寄せるモテ男の描写が凄く薄く、だから物語も少し流れがぎこちないんだけど、これも監督にしてみたら「思春期のいじめられっ子がホイホイ都合よく恋心なんか持つかよバーカ!」という原作者への返歌だったのかもしれないな。

 それにしても、いま切望するのは墓場からよみがえったキャリーのX-MEN加入だ。あのパワー見たらだれだってそう思うよ。 空飛べるし。

字幕翻訳は稲田嵯裕里せんせい。映画にマッチしたモダンな訳でした。

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