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Gaao Line's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

デッドプール:ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッドが素晴らしかった。

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たいへん下品なスーパーヒーロー(ヒーローじゃないか)が要所々々で観客に語り掛けながら愛を貫く良い映画だったんだけれど、観終わって肩がこらなかったスーパーヒーローものって何年ぶりだろう!

21世紀に入ってからこのかた、大作ヒーロー映画を観るたびに、やれ正義ってなんだ、力と責任ってなんだ、成長とはなんだと、テーマと葛藤のことばかり考えさせられてきたんだけれど*1、ずいぶん解放された感じだ。こういう小さなヒーロー映画って、いいものだなあ。これに倣って、毎年世界が終わるような深刻な映画ばかり作らず、ヒーロー2,3人で軽い仕事やる映画を量産してほしい。

意外と話芸の作りづらい映画

ライアン・レイノルズ演じるデッドプールについては、あと1.3倍ぐらいベラベラ喋ってくれてもよかった。

レイノルズは、1998年から4年つづいた『二人の男と一人の女とピザ・プレイス (Two Guys, a Girl and a Pizza Place』で主役の一人を演じていて、実質これがコメディ俳優たる彼のブレイク作品だったと思う。20代だった彼の、早口でアドリブも相当入った話芸とリアクションは、すごくエネルギッシュでゲラゲラ笑った。それに比べると、デッドプールのレイノルズはちょっとだけ、歳をとったなという感じがする。もうちょっと早口でまくし立ててもいい。

ただこれは映画の構造的な問題かもしれない。デッドプールがソロヒーローで、掛け合いのできるサイドキックに欠けるからだ。もちろんブラインド・アルなど面白い話し相手もいるけれど、なにしろメインの相手は物言わぬ観客だ。いちばん面白味の出るコロッサスも、CGIキャラに声優が声をかぶせるかたちなので、話芸も話芸に沿ったアクションも作りづらかったのかもしれない。

次回作では『ミッドナイト・ラン』よろしく、コロッサスなりゲーブルなりミュータント化した彼女なりとずーっと漫談を続けるスタイルで、観て見たいものだ。

ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド

喋るデッドプールに対し、ものすごく良かったのがロクに喋らないネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッドだ。こんな容姿の女優、どこで見つけてきたんだろう!

ボウズ頭で色白で鼻ピアス、わざといつも睨んだような眼をして、ちょっと丸っこい(この体形、ぜったい処女だ)。ひとめ見ただけでゴスの人間嫌いを装った反抗期ティーンエイジャーだとわかる。そのうえコスチュームも超能力もけっこうダサい(ウルトラダイナマイト)!  彼女にはデッドプールもどうにもかなわない。プールを無視してツイッターするシーンは、映画でいちばん笑ったかもしれない。

ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド(常にフルネームで呼びたい)は、キックアスのヒットガール以来の最高の暴力少女キャラだと思う。彼女単独のシリーズも観たい!

なんだか欲しいものだらけの感想になってしまった。要は、魅力の種がぎっしり詰まった映画だったということ。

もうひとつ

デッドプール/ウェイドの彼女ヴァネッサ、誰が演じてるのかと思ったらモリーナ・バッカリンか! ぜんぜんわからなかった。リメイク版『V』では爬虫類っぽい顔立ちで、不気味な敵のリーダー。『HOMELAND』ではアフガンから救出された夫との関係に悩む妻。役も外見・表情もまったく違って見える。いい役者だ。

*1:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』ですらそう感じた。まあ考えすぎってのもあるんだろうけど