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『ガンダム Gのレコンギスタ』全話レビュー

Twitterをつかった『ガンダム Gのレコンギスタ』おおよそ140文字全話エピソードガイド&感想。ふだんは海外ドラマや映画のレビューばっかり書いてるけど、なんでここにきてアニメかといえば、それが富野由悠季の作品だからだ! 血であり、肉であるからだ!(ファンなんです)

あらすじ

宇宙移民に失敗し滅亡しかかった人類が、再興の道を歩んで千年の時が流れた。軌道エレベーターで宇宙からエネルギー源を輸入する中米の地域国家、キャピタル・テリトリーは、海賊と称する軍事組織の攻撃を受けていた。それは北米国家アメリアとの対立を予感させるものであった。

軌道エレベーター「キャピタル・タワー」の運行長官の息子、ベルリ・ゼナムは、キャピタル・ガード候補生として宇宙に上がった日に、海賊の操る謎のモビルスーツ、G-セルフと邂逅する。捕虜となったG-セルフのパイロット、アイーダ・スルガンの代わりにその操縦席に入ったベルリは、なぜかG-セルフに承認され、操縦資格を得る。G-セルフを取り戻そうとする海賊の攻撃は激化し、ベルリと友人たちは、次第に戦闘の中に身を置いていく。

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全話レビュー

1話『謎のモビルスーツ

少年ベルリは宇宙に上がり、海賊アイーダの駆るガンダムと出会う。ありきたりの導入説明を切り詰め、細かな所作と会話で劇にリアリティを与えていく。これぞ富野由悠季の演出! ただ逆に言えば創ったキャラや世界観、ひいては視聴者を信頼しすぎとも。★★★★

第2話『G-セルフ機動!』

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空襲の中ガンダムのパイロットとなるベルリ。玩具的な巨大ロボットの舞う戦場が「リアル」に感じられる立体的な描写が凄い。意図的にプロットを省略して見せる戦場のカオス的状況から、主人公が乗り越えるべき人の死を描き出す展開も見事! ★★★★★

3話『モンテーロの圧力』

軍調査部の手の内でガンダムを再起動するベルリとアイーダガンダムの奪還を目指す海賊軍のクリム。2つのプロットが交わり、新たな戦争と冒険の始まりが描かれる。野生動物や機械の細かい描写には楽しさがあり、かつ作品世界をよりリアルにしている。★★★★ 

 4話『カットシー乱舞』

海賊の船に連れてこられたベルリたち。腹の探り合いで違和感の際立つ会話は楽しいがもう少し納得感があっても。後半はかつての味方との空中戦。空間の説得力は見事。ガンダムが立ってカモメが舞う。兵士が泣いて雨が降る。映像の隠喩が繋がり活きている。★★★★

5話『敵はキャピタルアーミィ』

敵の新メカが襲い主人公たちが防戦するという古典的な構成を維持しつつ、戦争に陥っていく社会・国家の空気感、人々の駆け引きを多面的に描く。キャラの声が入り乱れる乱戦なのに、どこで誰が何をしているかビシっと伝わる構成力に惚れぼれ。★★★★

 6話『強敵! デレンセン』

敵が恩師とも知らず戦闘を続けるベルリ。それは人殺しの継続でしかない。第2話と対となり、戦争の意味を突きつける物語。宇宙の丁寧な描写も、ノレドの密やかな表現も見事だが、要のエピだからこそ、本来見せるべき表現の欠落が多く感じられた。 ★★★

7話『マスク部隊の強襲』

被差別階級故に功を求めるマスク、我が子の為に冒険に出る母親と、新しい物語の軸が立ち上がるエピ。大人を殺して男になったベルリは、自然と現状を受け入れていくのだが、少々描写が薄いか。MSのハイタッチなど、相変わらずメカの所作には目を見張る。★★★

8話『父と母とマスクと』

新兵器以上に演出がトリッキーなエピ。爆炎渦巻く戦火の中で、父娘の団らん、母子の再会が描かれる。緊張感皆無のBGMの不自然さが逆に、戦争とはこういうものなのかも知れないという示唆を印象付ける。それにつけてもマスクのアホカッコ良さ! ★★★★

9話『メガファウナ南へ』

次の局面への変化を描く中間話。会話を通して人物の個性が再度丁寧に演じられ、この世界の国や文化のありようが、中南米の豊かな動物たちとともに浮かび上がる。姫様の顔だちがよく描かれている。ロボットと有人機の戦いはもっと見たかった。★★★

10話『テリトリィ脱出』

大人たちが状況の見極めを図るなか、若者たちは足元からの攻撃に抗する。悪役らしい悪役にヒーローとヒロイン、巨体なのに超高速というケレンの効いたメカが、極上のアクションを繰り広げる。これぞロボットもの! アルケインの肉感的な描き方も絶妙。★★★★★

11話『突入!宇宙戦争

宇宙からの脅威を認識し軌道に上がった3勢力が、初めての艦隊戦に突入する。混乱の中から統制を見出す無重力化の戦闘。その描かれ方の変化自体が事態の複雑化を表現する。この混戦こそ富野の真骨頂。お人形のようなモビルスーツの目の表現が秀逸! ★★★★

12話『キャピタル・タワー占拠』

資源の占有を図り聖地に攻め込むアメリア。起こってしまった事態に、大人と若者たちが再度一つになり意思を疎通しようとする。リズムが確立されていて心地よい。キレキレのアクションは、ヘカテーの射撃が音で魅せる。一斉射でしょう!★★★★

以降、順次追記していきます。

 

 23話『ニュータイプの音』

地球、月、金星、それぞれの勢力が入り乱れ、莫大なエネルギー源たるカシーバミコシを巡って戦争を繰り広げる。乱戦の光の中に芽生える個人の感情を一つ一つ汲み取り、繋げてみせるのは富野監督の真骨頂。「名前は希望。保障じゃない」は名セリフ。★★★★★

24話『宇宙のカレイドスコープ』

恋に破れ出撃する女戦士、前線に回されてもで和平を信じる父親。ともに死を感じながら乱戦に身を置き、生き残った者の心を揺さぶる。光の洪水のような激しい戦争描写に、断層的に積み上げられるキャラたちの言葉は生きている。目が離せない。★★★★★

 

しかし、気持ちを抑えず書くとぜんぶ★5点になっちゃうから大変だ。普段TVアニメを観ないからアニメ固有の文法・文脈も理解が薄いのだけれど、富野作品に関しては、そういった一種伝統芸能的なものへの理解を持たずとも、幅広い文芸の文脈でじゅうぶん楽しめると思っている。