ハウス・オブ・カード第3話、今回は一旦中央政治を離れ、主人公フランクの地元選挙区での騒動を中心に描く。
エピソードガイド
レビューリンク
あらすじ
議会下院の院内幹事として教育改革法案の詰めの折衝をするフランクのもとに、地元選挙区サウスカロライナで、彼に対する訴訟の動きがあるとの報が入る。事態沈静化のため、地元で彼は泥臭い駆け引きを強いられる。
フランクの妻クレアは、自らのNPOを新しい方向に向かわせるため、不遇の切れもの活動家ジリアン・コールを迎え入れようと画策する。一方フランクにドラッグ癖の弱みを握られている若手議員ピーターは、恋人クリスティーナとの関係を修復し、状況を変えようと動き始める。
新聞記者ゾーイは、フランクからリーク情報を得られていない事にフラストレーションを抱えていた。新聞社内での駆け引きにも疲れていた彼女は、フランクに挑発的なメッセージを送る。フランクにとって彼女とのやりとりは、ささやかな楽しみになり始めていた……。
感想
概要
全13話、ずっとワシントンでの血で血を洗う陰謀詭計が続くと思いきや、今回はインターミッション的なエピソード。サウスカロライナの片田舎に、市長や群の行政官、神父、そして娘を失った夫婦というベタなキャラを取りそろえ、小さな政治劇が繰り広げられる。中年男が4人集まって事件対策を練っていたのに、いつのまにやら猥談になっていたりと、笑いどころもたっぷり。さりげない描写だが、黒人市長のフランクに対する腰ぎんちゃくな言動は、笑えつつもフランクの地方での権力を巧く表していたと思う。
エピソードはフランクが中央に戻り、再び教育法案の中心となって動き出すところで終わるが、今回の地方の活動が本筋に影響するのだろうか?
見どころ
本筋はフランクの地方での駆け引きだが、意外と感じ入ったのは、ワシントンにいる他のメインキャラのシーン。彼らのプロットに大きな動きはなく、次回以降のタメといった感じだが、印象的な絵と会話がみられる。
その筆頭がフランクの妻、クレアだ。彼女は劇の中でも独特のポジションを与えられている。ワシントンにあるNPOという、このドラマの中ではもっとも市民生活に近い場所にいる彼女。その眼を通して、再解雇され再就職先に苦しむ老齢の女性、また健康保険に入れない女性といった、弱者の姿が映し出される。これは同じワシントンの中枢で陰謀を繰り広げるフランクらとの良い対比だ。
また、前の2話ではフランクが遭った暗喩的状況は、今回クレアの前に現れる。墓地をランニングするクレアの不敬を叱る老女、そして終盤、その墓地で愛を交わす若いカップルだ。その意味が、今後クレアの物語にどう重なってくるのかも興味深い。
しかし最も目を引いたのは、物語終盤のゾーイとフランクの携帯テキストメッセージのやり取りのシーンだ。これは文字を画面に埋め込む演出手法もあいまって鮮烈なアクセントとなっている。そこで交わされるのはリークを求めるゾーイの訴えだが、まるっきりセックスの要求になっている。エロい。
セックスの前の駆け引きのようなメッセージを平然と打ってみせるゾーイの大胆さ、それを楽しむフランクの度量。両方が見事に表現され、二人の欲が絡み合う関係を感じさせる、良い会話劇だった。
ラストシーン。フランクの家のダイニングルーム、左右対称に揃えられた調度のまんなかに、空間を切り裂くように白く美しいチューリップが置かれる。クレアが植え、フランクが摘んできたこの花の花言葉は、愛の終わり。これもまた、不穏な何かを予感させる。