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『ハウス・オブ・カード』シーズン2 第1話:海外ドラマレビュー

ワシントンの政界を舞台にしたスリラー『ハウス・オブ・カード』、第2シーズン。

前シーズン最終話では、果たしてフランク(ケヴィン・スペイシー)は本当に副大統領になれるのか……というところでクリフハンガーになったわけだけど、今回は文字通り畳み掛ける展開で、第1シーズンの物語にケリをつけ、新しい物語に橋渡しをする。

エピソードガイド

レビューリンク

第1シーズン 1話 / 2話 / 3話 / 4話 / 5話

あらすじ

サウスカロライナ州選出の民主党下院議員フランシス・アンダーウッド(フランク)は、ルッソ議員の急死で欠員の出たペンシルバニア州知事候補に現職のマシューズ副大統領を就けることに成功、後任の副大統領の座を確実なものとした。

フランクと関係を持ち協力関係にあったジャーナリスト ゾーイ・バーンズは、ルッソ議員の死がフランクに仕組まれたものではないかという強い疑念を抱き、最後の証拠を追う。

一方フランクの妻クレアは、自らのNGOの腹心に迎えようとしていたジリアン・コールからの雇用訴訟に片をつけるため、非情な手段に出る。

ゾーイらの追跡に気づいたフランクは、腹心ダグ・スタンパーを使い事件の鍵を握る売春婦レイチェルを失踪させ、周到に事件を隠ぺいしていく。そしてフランクとゾーイは、再び地下鉄の駅で密会する……。

感想

概要

これ、実質第1シーズンの最終話じゃなかろうか。第1シーズン終盤で盛り上げまくったプロットに、明確にオチがついた(無論引き継ぐ部分もあるが)。興行的に失敗だったらこのエピを第1シーズン最終話の最後につけて完結させていたのかもしれない。

物語にオチがついたことで、主人公であるフランクのキャラも完全に固まった。第1シーズンでは、彼が本当に“権力のために手段を選ばぬ悪人”なのか、それとも“パワーハングリーでも根底は善人”なのか、観ていて微妙に判断がつかず、それが物語の謎をいっそう深め、物語を引っ張っていった。ところが、この第2シーズン1話で彼の立場もはっきりした。彼は、悪人だ。

悪を為して身を成したフランク。次回からは新たな立場で、そのダーティなパワーを思う存分発揮して、さらにグイグイと、さらにノリノリで! 物語を引っ張っていくんだろう。フランクが最後に視聴者に向けるギラリとした視線に、こちらもニヤニヤが止まらない!

みどころ

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もう1シーン1シーン、1カット1カットに意味が込められていて、どこを取ってもみどころという濃密さだった。オープニングで闇夜から走り出て周りを見回す夫婦、視聴者に "Fxxx U" を突きつけるエンディング。ただ1シーン選ぶとしたら、フランクの密かな友人、フレディの、スペア・リブ店での語りが最高だ。「ゆっくりと血抜きした豚肉は美味い」の言葉に、このシリーズが見せるモノが、端的に表現されている。

もうひとつ、クレアの物語も、見事なクライマックスだった。

部下の妊娠に対する嫉妬、苛立ちという根源的な感情に駆られ、まっとうな解決策を放棄したように見えて、実はもっとも合理的で利益の多い手段を実行していた彼女。フランクと並ぶ天性の策謀家だ。情熱と冷静の混合体が、この夫婦をいつも勝利へと導いていく。

夫婦は互いに補完し合う存在で、性格も違うほうが愛情も長続きする。よく言われることだけど、フランクとクレアにはこの方程式が利かない。むしろ二人の性格(というか“性質”)は極端によく似ている。だからこそ互いを理解し合い、利用しあい、愛し合える。そんな風に見える。