Twitterを使ったロー&オーダー おおよそ140文字全話エピソードガイド&感想、第5シーズン。
あらすじ
連邦検事局NY支部のオファーを受けたカーマイケル検事補は、それを受諾しNY地方検事局を去った。マッコイ主席検事補のアシスタントに着任したのは、セリーナ・サウザリン検事補。カーマイケルとは打って変わってリベラルで弱者への共感を露わにし、時に悪を厳しく追及し、時に非常な検察方針に疑義を呈していく。彼女とルーウィン地方検事、女性二人のあいだに挟まれたマッコイは、時に肩身の狭い思いも。
27分署殺人課では大きな人事異動もなく、ヴァン・ビューレン警部補のもと、ブリスコー刑事とグリーン刑事が凶悪犯罪の捜査にあたる。9.11同時多発テロを経験したニューヨークでは、当たり前の日常を取り戻そうという動きの一方、市民の不安に呼応し従来の枠を超える正義の執行が求められるようになった。それは時に行き過ぎとなり、無実の人々を一層傷つける。薄氷のような正義と不正義のはざまで、刑事たち、検察官たちの腕と心が試される。
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エピソードレビュー
12-1『犬を放した犯人を追え』
そのまんまの邦題どおり、人を殺した闘犬の飼い主を追う。カーマイケル検事補に代わってサウザリン検事補が、例によって何の紹介もなく新登場。薬で凶暴化された闘犬たちの悲惨な環境、飼い主の傲慢さを見せつけられる。犬好きには辛いエピ。★★★★
12-2『果てしなき戦場』
一種のコールドケースもの。ベトナム戦争で現地の村を襲った小隊の兵士たちが罪に問われる。年老いた彼らが悲痛な過去を語るとき、まるで当時の年端もいかない子供の口調に戻る。その演技が素晴らしい。物語に驚きは少ないが、丁寧な演出。★★★★★
12-3『裏切りの報酬』
これも一種のファムファタールものか。捜査も裁判もだらだらと抑揚に乏しくいまいち集中して観られなかった。終盤犯人の弁護士までもハメられるシーンは少しよかったが、そのあとのドンデンは安っぽくて拍子抜け。★★
12-4『血のダイアモンド』
テロリストの資金源となっている闇ダイアモンドをめぐる裁判。“アフリカから来た不幸な黒人たち”ってのも、何回か出てくるパターン。殺人自体の重みより、シエラレオネ出身の犯人の故郷への想いと不正義への憤りを見せるエピだった。★★★★
12-5『執着がもたらした悲劇』
ウェルメイドな推理モノ。法廷パートも専ら裁判所の外の捜査と推理に充てられ、2人の容疑者と舞台となるアパートの謎を、会話と証拠を積み上げながら解いていく。単純な推理モノにはあまり関心を引かれないのに、今回は違った。★★★★
12-6『過去の人』
栄光を失ったスター、すべてを失っても守るべきものはなにか。ラストに立ち上るテーマはよかったが、それまでの推理が盛り上がりに欠けいまいち引き込まれない。金髪のサウザリン検事補は予備審問なんかで女性弁護士と相対すると見栄えがするな。★★★
12-7『指紋は神ならず』
身内の問題エピ、法医学研究所編(いまは科捜研て訳すのね)。科学を科学たらしめるのは何か? 科学鑑定にたよる警察が科学をゆがめ、その無残な結果が胸をえぐる。バンビューレンと絡む研究所のボスの演技が素晴らしい。★★★★★
12-8『操られた理想』
環境テロモノ。若い実行犯と、彼らを焚きつける思想家。責任はどこにというお決まりの構図。結審して結果に釈然としないマッコイ検事補の顔が題材の難しさを物語るが、単体のドラマとしていまいち魅かれる要素がなく、別の意味でも釈然としない。★★★
12-9『ヒップホップスターの真実』
身も蓋もない邦題だが、仕事のためにギャングのイメージを身にまとった知性ある青年の、苦悩と愛を貫く信念が心に沁みる。珍しく検事側の負けパターンで話がすすむのも、この人情話であれば納得。★★★★★
12-10『憎悪の報い』
久々登場アーチャー弁護士、今回は偏執的な黒人差別者を精神疾患として弁護する。9.11の4か月後に放送されたストレートな憎悪犯罪もので、最終弁論も迫力。「憎悪犯罪を放免する社会こそ異常だ」というマッコイの台詞にすべてが込められている。★★★★★
12-11『神父の決断』
信徒の秘密を守るという聖職者の神聖な倫理。この壁を乗り越えようとする検察と、ひとりの神父の葛藤が描かれる。終局、真実に勝る高潔さは無いと信じつも、その真実と引き換えにひとりの男の魂を奪ったマッコイ検事補の横顔が胸を打つ。 ★★★★
12-12『奇跡への渇望』
保険の支払い問題を描くエピ。犯容疑者は病気の娘のため傲慢な保険会社と闘いう一種の英雄でもある。9.11後の米国の“善い物語”を求める風潮が、正義を歪めるのではという告発が物語の裏にある。捜査編の犯行時間を追うプロセスは面白かった。★★★★
12-13『資格剥奪の危機』
法律家は法律家であるが故に、その厳格な規定を守らなければならない。しかしその規定が人命を危険にさらすとしたら? 珍しい懲罰委員会での論戦。倫理学教授であるルーウィン検事も巻き込み見応えがあるが、議論の展開は一直線で驚きは少ない。★★★★
12-14『ずるい男』
安っぽい邦題だが、男の浮気癖を問題にしたエピ。何の目的もなく他人の人生をもてあそび、しかもそれを罪にも思わない男の傲慢が裁かれる。筋書きは平凡だが、かつて職場で浮名を流したマッコイ検事補も事件の幕切れに胸に重いものが残った模様。★★
12-15『安全のしわ寄せ』
痴情のもつれによる平凡な殺人、違うのは凶器がネット情報ブローカーが売る個人情報だということ。検察はプライバシーのない世界の恐怖を暴いて見せる。ラスト、検察の執務室に響く雨音が、不安な将来を予期させるよい余韻となっている。★★★
12-16『再誕生』
代替医療の問題を扱ったエピ。これもよく出る題材だ。タチの悪いシナリオの典型で、最後のドンデンがメインテーマである社会問題に全く結びつかない、たんなる“意外な真相”で終わってしまっている。演技も全体的に迫力不足。★★
12-17『二人の秘め事』
スクールカーストの同調圧が原因で起こった事件。女性の秘密を暴くことに終始し、法廷シーンがないので不満足。生徒二人が作った処女登録掲示板って、Facebookの初期の“女子大生ランキング”と似てるけど、FBのほうが後だったんだよね。★★
12-18『か弱き勝者』
投資絡みの復讐犯罪と思わせて、真相は全く異なる虐待の物語。捜査編の展開が法廷編に何の影響も及ぼさないのはどうかと思う。法廷編は珍しい負けパターン。過去にも陪審が情にほだされるエピがあったが、なぜ前回勝てて今回負けたのか、理由が弱い。★★
12-19『もう一つの隠ぺい』
食肉業界の食中毒問題を扱うエピ。日本でも近年あったレバ刺し問題に近いが、裁判モノだけに問題をとことん突き詰めていったい誰に責任があるのかを明確にしていく。訴えたいことには共感できたものの、物語としては小ぢんまりとしたな印象。 ★★★
12-20『修復不能』
年の離れた後妻殺し。犯人は夫か元妻か。見覚えのあるプロットだから犯人も容易に想像がつきイマイチ、と思っていたが、元夫婦の状況は表情でよく伝わったし、真犯人の最後の鬼気迫る演技にはくぎ付けになってしまった。演技の勝ち。★★★★
12-21『反則』
アマ野球殺人事件。プロ選手を生み出せば巨大なカネになることから、スカウトや育成者の歪んだ欲望が少年野球にはびこる。何も知らず証言台に立った少年のたどたどしい答弁が胸に来る。しかしこの番組は米国のあらゆる闇を暴く気か。★★★
12‐22『不実な弁護士』
刑事たちの捜査の結果が検事補たちの再調査であっさり覆る展開は他のエピでも見られるけど、結果的に内容が薄くなる。このエピもその典型。法律家たちの裏の裏をかく裁判で、彼らの守るべき正義とは何かを描くが、盛り上がりに欠けたと思う。★★★
12-23『蛙の子は蛙』
ひどい邦題だが、マフィアの扱うスマートドラッグの問題を扱った意欲作。マフィアや連邦検察とのポーカーのような騙しあいに翻弄されるも、反撃に転じチェスのごとく犯人を詰めきるマッコイの手腕に快哉。ラストはまさに邦題どおりだった。★★★★
12-24『愛国者』
第二次大戦で米国政府は、日系人という理由だけで彼らを収容所に送った。911後、それが再び繰り返されるのか? 恐怖が殺人を正当化するならば、それこそテロではないか。まさに国民の正義が試される見事な論戦。腕を組みながら聴き入った。★★★★★
シーズン12 まとめ
総ポイント数
85 / 120
平均
3.54
感想
今シーズンは厳しめの内容が多かった。番組自体がマンネリに落ちかかっているのか、それともこちらが集中して観れていないのか。
今シーズンは9.11同時多発テロ直後の放送なんだけど、4か月目からすぐにこの事件に呼応した内容が出ているのが凄い。その内容は、反テロによって引き起こされる不法な差別、行き過ぎな反応を諌めるもの。テレビは映画と違い、全国民に無料で流される。米国の社会派ドラマはその特性ゆえの存在意義を心得ている。
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