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Law&Order シーズン14 全話レビュー

Twitterを使った『ロー&オーダー』おおよそ140文字エピソードガイド&感想、第14シーズン。

あらすじ

f:id:debabocho:20130715191333j:plain警察、検察ともに前シーズンと変わらぬチームで幕を開けるシーズン14。

ブランチ地方検事が2年目に入ったNY地検では、9.11後の中東での米軍活動は長引き、地裁の裁判にも色濃く影を落としていく。保守派のブランチ検事と、リベラルの若手サウザリン検事補。ふたりの間でマッコイ主席検事補は、時に双方から暴走だと指摘されながらも、あくまで自分の信ずる正義を追及する。

27分署ではヴァン・ビューレン警部補のもと5年目に入るブリスコー刑事とグリーン刑事のコンビが、どっしりと安定した捜査を展開。もはや職人芸的なブリスコー刑事のテクニックにも、次第に体力の衰えが見えるようになるのが哀しい。ブリスコー刑事は、遂に勇退を決意する。

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エピソードレビュー

14-1『信念の男』

連続殺人犯と、彼を弁護する公選弁護人の物語。ただの冴えない弁護士が巨大な事件に巻き込まれ、次第に信念に目覚めてゆく様が、表情でうまく演じられてる。犯人に余罪を吐かせるには極刑を減刑しなければならないというトリックも面白い。★★★★

14-2 『英雄の重圧』

捜査編は内容を水増ししたような展開。裁判編で性格俳優ピーター・ジャコブソン演じるドワーキン弁護士がでると一転、「黒人優遇措置の重圧で黒人が罪を犯す」という突飛な弁護が楽しめる。黒人が白人をカネで弄ぶ状況を暗示したラストも興味深い。★★★★

14-3『患者0号』

当時問題になっていたSARSウィルスがNYで拡散するという衝撃の展開だが、その理由が男女のもつれでは、さすがに話のスケール感がちぐはぐだ。最後も「女は怖い」的な表現で終わって結局なにが表現したかったのか掴みづらい。★★

 14-4『真の支配者』

このシリーズを観てるとアーティストには気が触れてるか極狡猾な犯罪者かどちらかしかいないように思えてしまう。今回は前者。ただ真犯人は最初から思い切り怪しいし展開も単調、人心操作というテーマを効果的に表現できていないのでは。 ★★

14-5『過去の栄光』

落ち目のセレブ、ロックスター編。防火設備のないクラブハウス火災、23名という犠牲者数を見れば強烈な社会悪の摘発となるかと思いきや、結末は意外なほどちいさな家族の物語に。テンポよく進むが、掘り下げられるテーマが弱い。★★★

14-6『誇り高き人生』

久々の老俳優大活躍エピ。経済犯罪の物語だが、老いた黒人男性の演技はすばらしい。軍に出征しポーターとして働いた彼が取り戻す“誇り”は、老人問題だけでなく黒人差別をも暗に告発する。捜査プロットも複雑だが展開に無駄がなく見応えがあった。★★★★

14-7『誤算』

身内の問題エピ、判事編。前半の殺人事件も捜査で明らかになった判事の癒着問題が、後半の新たな捜査シナリオに。二重の犯罪、二重の謎が広がりどう収束するのかと思ったら、最後の最後で、見事に共通のテーマがついて物語が収束した。納得のシナリオ。★★★★

14-8『従軍記者』

イラク戦争の是非を正面から扱う政治色の強いエピ。軍の問題・失態の告発を、記者は正義の為と信じ、兵士は悪と断罪する。事件の真犯人はこの終わりのない議論を一層救いのないものとし、検事たちの吹っ切れたような締めのセリフに共感が集約される。 ★★★★

14-9『聖所への裁き』

子供の終末治療を行う医師が求めた交霊会による癒し。それが殺人という矛盾した行為に及ぶとき、彼女の心にあるものは何か。マッコイ検事補の最も嫌うニセモノの信仰と同情や共感という心情に、彼がどう立ち向かうかが見もの。 ★★★

14-10『奪い合い』

不法移民に加えもう一つの社会問題が複雑に絡み合い事件を形成する。捜査編、裁判編を通してその真相が解き明かされていく展開は驚きを含みながらも一貫性があり引き込まれる。ギャリアーノ弁護士によるミランダ警告の瑕疵を突いた論戦も盛り上がる。★★★★★

14‐11『ジャングルの掟』

前半の捜査パートは壮大なミスリードで、この展開はどうかと思う。真のテーマはホームレス問題。邦題のとおり人間以下の環境で生きる辛さが絶叫とともに語られ心に響く。原題は "Darwinian"つまり進化論者。皮肉なタイトルだ。★★★★

14-12『大義の犠牲』

マフィア犯罪もの。遺体に刻印をつける殺し屋を追い詰める複雑な捜査に、FBIや連邦検察、マッコイ検事補の私怨も絡み合い、物語に引き込まれる。そのうえで最後の虚脱感は見事。しかしマフィアのボスのあの初登場シーンはいくら何でもやりすぎ。 ★★★★★

14-13『ソフィーにはママが二人』

別れたゲイ婦婦の養女を親権のない方の母親が誘拐し、もう片方の母親を殺害する。もし同性婚が合法になれば犯人も法的母親と認められ、誘拐が成立せず殺害動機の認定も困難になるという法のパズル的状況。感情を掻き立てられる大裁判。★★★★★

14-14『市庁舎にて』

生活を追い込む市の方針に銃で抗議した犯人。有罪を阻むのはFBIの秘密捜査による証拠隠匿。優先されるべきは市民の安心か、自由かというテーマが明確に立ち昇り、最終弁論で見事に収束する。これが観たかった! ゲスト陣も豪華。★★★★★

14-15『退役軍人の怒り』

国論を二分するイラク戦争の是非を、平和活動家の殺人に絡めて描く。珍しく検察側に決定打のない裁判。感情的な証言のみで評決審議に入らざるを得ない状況が、国勢を暗示する。真面目な人間が犠牲になる現状を示したブランチ検事の一言も見事。★★★★

14-16『狙われた証人』

世相を反映してかストリートギャングの犯罪エピは少なくなっていたが、今回久々にじっくりと描かれる。法制度を揺るがす脅迫とどう戦っていくかがテーマで、14-12話に近い。ただこちらは判決に至る展開に緊迫感も納得感も少し足りない。★★★

14-17『検察の快挙』

遺体なき二重の殺人の立件という異常事態に立ちふさがるのは技巧派アーチャー弁護士。今回は専門家軍団を引き連れ捜査手法の常識を覆しまくる。いちどは敗れても辛抱強く調査を続け、正義を貫いたマッコイ検事補の充足した表情にこちらも満足。 ★★★★

14-18『悪の種族』

60年前のナチの強制収容所の犯罪を現代のネオナチと絡め、強い問題意識を打ち出すエピ。老女の証言が心を揺さぶり、ネオナチが崇拝するものの根源を見せつける。言論の自由は絶対だが、言葉が実際に犯罪の原因になれば例外だという言葉が耳に残る。★★★★

14-19『孤独の検事』

検事補の殺害からはじまるミステリー。検事局内の事件ということでマッコイ検事補たちも積極的に捜査に関わり、謎解きのプロセスに引き込まれる。殺害の犯人と、被害者本人の謎、そして被害者の正義感まで明らかになる結末も見事。★★★★

14-20『危険な人気店』

「映画と現実のマフィアの違い」をキーにしたある意味メタフィクション的なエピ。変化球ぎみの題材で推理プロット優先のため、その分マフィアの描写が迫力に欠け、舞台となるマフィアの店が州の上層部御用達だったという設定も活きてない。残念。 ★★★

14-21『警察官の良心』

偶然の引き起こした野球選手殺しが、20年前の隠れた不正、更にその裏の犯罪を暴く。警察の捜査と検察の追及が有相互にうまく噛み合い、最後までテンションが続く。アクションシーンもファロン弁護士の早口弁護も楽しめる、密度の高い作品。★★★★★

14-22『ニューヨーク市の返報』

日本人の起こした殺人事件。日本人から見れば細かな文化描写は変だが、日本に共謀罪がないことを突いた展開には納得。物語の本質=テーマは人間の持つ偏見。米国だから、黒人だから、日本人だからという偏見が起こす問題が良く描かれてる。★★★★★

14-23『誰がマニーを殺したのか』

ペルシャユダヤ教徒の移民のしきたりを巡る物語。邦題通り誰が殺したのかを追いかけるパートに重点が置かれているが、どうも腹に落ちないのは世代間の文化差異というテーマが巧く伝わらないからぁ。ありきたりな話を見せられた感じ。★★

14-24『さよなら、ブリスコー』

トリッキーな交換殺人の謎を暴いていく物語。今回でL&O刑事の顔ともいえるブリスコー刑事演じるジェリー・オーバックが降板。オーバックは放送の8か月後、癌のため亡くなっている。彼の取調べの迫力ある演技は、最後まで生きていた。★★★

 

総ポイント数

91 / 120

平均

3.79

感想まとめ

2011年にスカパーのSuper!  Drama TVで放送が始まったのはシーズン15からだったので、今シーズンで全20シーズンがすべて放送されたことになる。内訳をみれば、ポイントの高いエピと低いエピがくっきりと別れてしまった。

特に中盤は5点連発で、少し甘くつけたかと思い冷静に思い返してみたけれど、やはりどれも観ているうちに画面にくぎ付けになってしまうものばかりだった(本当なら第1話も5点をつけたかった)。いずれも飽きさせない展開とともに、社会問題を正面から取り上げ、その倫理的問題を明らかにしている。

一方で点尺を稼ぐための水増しのような捜査プロットが気になり、2点をつけたエピも増えた。演出がよかったり、テーマが明確で面白かったりすれば、多少シナリオに無理があっても気にならないんだけど……。ブリスコー退任のシーズンフィナーレは、もう少し彼に見せ場のあるエピがよかったな……。

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