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Law&Order シーズン15 140文字全話レビュー

Twitterを使った『ロー&オーダー』おおよそ140文字エピソードガイド&感想、第15シーズン。

あらすじ

f:id:debabocho:20130729221139j:plain27分署の顔役として捜査を続けてきたブリスコー刑事は引退する。彼は引退後もNY地検の殺人事件担当部の契約調査員としてときおり仕事をする。

ヴァン・ビューレン警部補の刑事分隊には、ジョー・フォンタナ上級刑事が転属し、グリーン刑事とパートナーを組むことになる。シカゴやブロンクスの警察で問題児扱いされていた彼は、グッチを着こなしメルセデスSL500を乗りこなす派手な男。捜査の手法も荒っぽく、彼の不正ぎりぎりの行動は検察にも影響を及ぼす。しかし検察の仕事を押し付けられたが原因でグリーン刑事が撃たれ危篤状態に陥り、フォンタナ刑事の検察不審も高まる。グリーン刑事の交代要員として、臨時でニック・ファルコ刑事が配属される。

NY地検ではジャック・マッコイ検事補とセリーナ・サウザリン検事補のコンビが引き続き活躍。コネチカット州知事のスキャンダルや、アフガニスタン問題に絡む大きな犯罪を担当するが、リベラルなサウザリン検事補は保守的なアーサー・ブランチ検事にことごとく意見を否定され、フラストレーションを貯める。その対立は決定的になり、彼女は解雇されてしまう。マッコイ検事補は新たにアレクサンドラ・ボルジア検事補とパートナーを組むこととなる。

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エピソードレビュー

15-1『鮮血の十字架』

新刑事フォンタナが登場、物語はイラク戦争の捕虜問題が焦点。新キャラ登場回はさすがに脚本にも演出にも力が入っていて、捜査編ではフォンタナの細かな仕草が彼の一筋縄ではいかない性格をよく表現し、法廷編の戦争と個人犯罪を峻別する議論も見事。 ★★★★★

 15-2『妻たちの9・11』

同時爆破テロから3年後の現状を描く。指紋を頼りに推理を進める捜査編は謎解きの面白さがあり、裁判編も罪とは何かを考えさせる内容。また今シーズンに入り撮影も変わったようだ。夕暮れの美しい光線や動きのある車内ショットなどが印象的。★★★★★

15-3『正当防衛』

マフィアもの。昔ながらの組織犯罪ではなく、今回は刑務所内マフィアという存在。検察、弁護士、判事、陪審員、あらゆる相手に恐怖を振りまき、制度そのものを揺さぶる不気味な姿が迫真の演技で描かれる。組織犯罪の真の問題を見せつける意義深いエピ。★★★★

15-4『死のダイビング』

精神疾患の治療薬による薬害問題。捜査編はまったく不可解な飛び下り事件の原因を追う展開に驚きがあり、法廷編は薬害の責任の根源を突く息詰まる展開。なにより、人の心のありようが勝手に変わってしまう怖さが、迫真の演技で描かれていた。★★★★

15-5『銃はめぐる』

捜査編は仲間を殺された警官たちのおとり捜査、法廷編はおとり捜査で子を殺された弁護士の復讐劇。グリーン刑事のおとり捜査はアクションもあり楽しめ、後半はベテラン黒人俳優二人による演技が見事! 警察の正義を揺るがせるだけの迫力があった。 ★★★★★

15-6『美の追求の果て』

医療過誤もの。医療事故を殺人罪として問えるのか。女性の期待に応えるために無理な手術を繰り返す医師と、社会の期待に応えるために際どい起訴をする検察。暗に共通性が示される。マッコイ検事補の被告への激昂は、彼自身それを感じていたからか。★★★★

15-7『知事の恋人』

コネティカット州知事の同性愛スキャンダル。夫婦間の秘匿特権がゲイ夫婦にも及ぶのかが争点となる。ゲイ同士の婚姻関係の合法性を巡る上訴裁での大論戦は唸る内容。そして結婚を否定された証人の反撃に、雷に打たれたような衝撃を受ける。傑作。★★★★★

15-8『ギャングの愛』

有名人の射殺未遂から広がる、マフィアのボスへの疑惑の環。科学捜査にイタリア語での尋問、銃を握っての逮捕劇と、幅の広い捜査が楽しめる。そうして積み上げられた証拠の山と対峙するマフィアのボスの、悲しみにあふれた眼も忘れられない。★★★★

15-9『ダイアモンド・ラプソディー』

傲慢な夫、マフィアという職業、宗教コミュニティ、三重の権威に縛られてしまった妻に明確な殺意はあったのか? 珍しい負けシナリオで刑法の限界を見せるが、前半語られるダイア商人などの設定がどうも単なる小道具に見えてしまう。★★★

15-10『敵の敵は』

9.11後のアフガン豪族と米国との癒着による問題を、麻薬による殺人を基に告発する。一種のマフィアものなのに、お決まりの報復殺人が一切ないのが、むしろ問題の複雑さを物語っている。問題は麻薬なのか政治なのか、矛盾した状況が率直に伝わる。★★★★

 15‐11『守るべきもの』

凶悪犯を世に放った罪の意識が、ひとを追い詰め、殺人犯に変えていく。セラピストの意識を読み解いていくプロセスは興味深いが、物語は平坦な印象。セラピスト役に表情の変化が乏しいのも一因か。★★★

15-12『強欲』

典型的な金持ち不倫事件。なにしろこれだけエピを見てると二重殺人も当たり前になってくるので、物語は驚きに乏しく広がりもない。役者の演技も特に目立ったところはなかった。サウザリン検事補検事補の浮いた感じがちょっと可哀そう。★★

15-13『ヒップホップと銃弾』

1点か5点か悩む問題作。物語としては正統派の捜査編も法の穴を突く裁判編も良かった。問題は今回で降板となるサウザリン検事補。最後のカムアウトは何なんだ! 15-7話の伏線があったとはいえあまりに唐突! 結局穏当なところで→ ★★★★

15-14『第三の男

偽インフルエンザ薬販売を殺人として裁く。毎回よくこんな題材を作品に落とし込むものだ。緊迫感ある捜査編、新任のボルジア検事補の論理展開、令状に関わる憲法問題、全編内容が濃い。そして圧巻は、映画第三の男を引用した反対尋問。ずっしりと響く。★★★★★

15-15『作家の美しき妻』

筋書きはオーソドックスな殺害教唆ものだが、男性優位主義者の夫と隠れ同性愛者の妻という両極端の夫婦に挟まれた、子供の心に焦点を当てたのは巧い。実は音楽も良い。最終弁論・判決時に重々しく響く低音は、子供にのしかかる葛藤をよく表す。★★★★

15-16『6番目の選手』

プロバスケ殺人事件。グリーン刑事とフォンタナ刑事の取調べの掛け合いが巧く回りだし楽しい。事件の焦点は正当防衛が成立する境界線。物証が全くない状況で、印象論に傾く弁論は弁護側にも共感を覚え、判決にはいま一歩カタルシスが乏しい。★★★

15-17『英雄か偽善者か』

自警団気取りの人物の行き過ぎた行動が招いた事故。その正義感は許されるべきか。誰もが情に流される中、頑なに責任を追求するマッコイ主席検事補の主張が、ボルジア検事補の目線を通じて浸み込んでくる。真の正義は、単純であってはならない。★★★★★

15-18『名声と打算』

女たらし殺人事件。割とシンプルな事件を長く引き伸ばした感があるが、奇妙な双子容疑者やウェンディ・マリック演じる熟女弁護士など、妙に存在感のある役者が揃い楽しい。フォンタナ刑事の捜査がいつにもまして辛辣。★★★★

15-19『ダニエルの書』

近親者や子ども同士の性愛を是とするカルト教団に挑む。教祖が女性というのが肝で、親権問題やレイプなど母性が犯罪性をうやむやにする。オープニングシーンで男が女の誘いを断っているというのも、世の中の性の変化を示唆していて面白い。★★★★

15-20『恋多き弁護士』

弁護士が撃たれ、直接ではないが経済犯罪も絡む事件となる。大手弁護士事務所に、日本の会社と大して変わらない残業漬けの仕事が垣間見れて面白い。本筋とは別に唐突にグリーン刑事が撃たれるが、こちらは別シリーズに繋がる。★★★★

15-21『それぞれの自伝』

ポルノ女優の殺人事件が、野心家警察官僚の秘密を暴く。モデルとなる実話があったのかもしれないが、淡々と推理を展開していく感じでいまいち入り込めなかった。犯人の悪党っぷりがなんだか日本の2時間ドラマみたいな感じ。★★★

15-22『名馬の秘密』

競馬殺人事件。騎手の殺人がどこに結びつくと思えば企業年金の大規模不正。最近筋書きが追いづらいエピが何話か続いたが、今回は真相のインパクトと法廷での簡明な説明で飲み込み易い。ブラックジャック並みの正義感で年金を取り戻すマッコイ検事補に惚れる。★★★★ 

15-23『信仰と更生』

捜査編はまるでピタゴラスイッチみたいな展開。ぼけっと見てたら一瞬で意味が解らなくなり笑ってしまった。法廷編は、神が人を更生させるのなら刑法に意味があるのかという根源的な論戦が熱い。マッコイ、ボルジア両検事補の表情が実に豊か。 ★★★★

15-24『通勤列車』

シーズン最終話はド派手に列車事故による大量殺人。法廷編もやり手のファロン弁護士が再登場。ただ見せられるのは情けない男の、救いようのない過失と自己弁護。ところが最後の最後、ファロンの台詞で、求刑の持つ意味合いにはっと気づかされる。 ★★★★

 まとめ

総ポイント数

96 / 120

平均

4.0

感想

今シーズンは5がかなり多く、個人の想いでちょっと甘目に点数をつけちゃったところがかもしれない。

終盤グリーン刑事が撃たれて突如降板となるが、これは演じるジェシー・L・マーティンが映画の撮影に入ったため。

グリーン刑事が撃たれる(一時降板となる)エピソードは、スピンオフ・シリーズの『Law & Order: Trial by Jury』とのクロスオーバーエピソードとなっている。刑事裁判に焦点を絞った Trial by Jury は、短命で終わってしまったため、日本でその結末を見るのは難しそうだ。(圏外日誌補足: やるってよ!)

ちょっとしたトリビア

第7話: 劇中犯人の同性愛結婚を受理したニューパルツは、実際2004年にニューヨーク州初となるゲイ同士の結婚を執り行っている。今回のエピはこれが下敷きになってるのね。

 DVDはシーズン15から“ニューシリーズ”と銘打って仕切り直しのリリースとなったため、“シーズン1”と表記されている。

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