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Law & Order シーズン18 - 海外ドラマ全話レビュー

Twitterを使った『ロー&オーダー』おおよそ140文字エピソードガイド&感想、第18シーズン。

あらすじ

f:id:debabocho:20131015104455j:plainジャック・マッコイが、アーサー・ブランチに代わりいよいよNY群地方検事となる。かつて政治を嫌っていた彼は、その正義を貫くため敢えて政治の世界へと足を踏み入れていく。

マッコイ検事の後任として主席検事補を務めるのは、マイケル・カッター。リスキーな戦術を好み、かつてのマッコイを彷彿とさせる彼が、ルビローサ検事補と共に法廷で戦う。

一方27分署では、キャサディ刑事が職場を離れ、グリーン刑事のもとにNY市警対テロ部門で中東に派遣されていたサイラス・ルーポ刑事が現れる。彼の弟の偽装自殺事件の参考人として呼ばれたのだが、そのままグリーンのパートナーとして、ヴァン・ビューレン警部補率いる刑事分隊に転属となる。

レビューリンク

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全話レビュー

 18-1『残像』

自殺ほう助で有罪となった医師の手法をまねた自殺が連続して起きる。遺族の兄弟としてルーポ刑事初登場。カッター検事補もエッジーな裁判手法で登場を印象付ける。自殺の権利とほう助の矛盾を見せる物語、結末はインパクトがあるが、整合性はいまひとつ。★★★★

18-2『誘拐の裏側』

停電のさなか起きた誘拐。非常時ゆえの焦りが後に裁判を難しくする。真夏の停電の空気感の作り方が見事! 更に状況を事件の根幹にまで結びつけ、検察・被害者双方を、利己的な不正が産む苦しみというテーマに落とし込む。よくできたシナリオ。★★★★★

18-3『遺伝子の秘密』

もし“ゲイになる遺伝子”が判明したらどうなるかを描く一種のSF。遺伝子研究所というテロの目標と、実際の被害者の接点はけっこう強引。しかし終局訪れる「ゲイ差別を作らない為にゲイ遺伝子の子を中絶する」という悪夢のような状況に胸が焼かれる。★★★★

18-4 『消えたズボン』

町場の弁護士殺人が、大規模な企業不正疑惑にたどり着くなんともスケールの大きな話。ウォルマートのようなの専制国家じみた企業に切り込む。企業の手先となっていた男が最後に示めす正義は、いささかヒーローじみてたけどホッとする終わり。★★★★

18-5『モンスター隣人』

隣接する白人コミュニティと黒人コミュニティ、子供同士の喧嘩の筈が、互いを恐れる大人たちによって大きな暴力になる。結末はいささか大岡越前じみてはいるが、罪に人種差はないという強いメッセージは頷ける。マッコイ検事の新たな活躍も見もの。★★★★

18-6『ゲームの結末』

3人の殺人が導く政治の裏側。マッコイが地検トップになった事を活かし、政治の世界を舞台にした新しい味わいのエピ。刑事編はハッテン場おとり捜査なんて無茶やるし、法廷編では劇場型詐欺師である容疑者の言動や騙し合いも楽しくエンタメ色濃厚。★★★★

18-7『ずるい女』

サブプライムローン問題を題材とした詐欺事件が、いつの間にやら一人の謎の女性による何重もの犯罪に。8人もの殺人を目前に、次々と繰り出されるウソに翻弄される警察、検察。正義のない異色なエピだが、ここまで徹底した悪女モノだと逆に感心する。 ★★★★★

18-8『法に背く時』

反移民法デモに発砲した警官は誰だ? 補助警官という弱い立場の人員を作る制度が、犯罪を哀しいものにする。裁判編は地方検事となったマッコイのリベラルよりの姿勢が問われる。過去の裁判に次々と触れられ、真面目な議論だがついニヤニヤしてしまう。★★★★

18-9『死刑執行人』

死刑執行に失敗、激痛に悶え苦しんだうえ無残な植物人間の姿になった犯罪者。その姿が被害者の遺族を更に傷つける。死刑制度によって起こる悲劇のひとつが描かれ、陪審や検事たちと共に視聴者の心をを試す。関係ないが今回ルーポ刑事がナンパしまくり。★★★★

18-10『検事補の選択』

レイプ殺人の容疑者には、ヤク中の情婦が……。男に媚びる情婦の姿が、終盤思わぬ形でルビローサ検事補との対比となる。中盤物語を締めるのは、清廉で通したマッコイ検事が、ついに取引のため軽罪のもみ消しをするシーン。感慨深い。★★★

18‐11『メレディスの思い出』

原題は"Betrayal"裏切り。精神科医の患者への裏切り、妻の夫への裏切り、マッコイ検事のオリベット博士への裏切り。そして最後、運命に裏切られた犯人の虚ろな目が印象的。オリベット博士とローガン刑事の驚愕の事実もあらわに。★★★★

18-12『服従のポーズ』

闘犬の胃から出た指。単なる報道レポーターと思われた女が……。単なるといっても『プラクティス』のララ・フリン・ボイルで目立つのなんの。シリーズ随一のお色気シーン満載エピ。やり過ぎ感満載で笑ってしまい事件の流れが頭に入らなかった。★★★

18-13『天使の制裁』

親殺しの少年。彼を聖人と唆したキリスト教原理主義者のを裁く。 修正第一条や脳科学を持ち出す弁護側と対峙する最終弁論が熱い。刑事編での少年の奇妙な精神性を示唆した撮影、マッコイからカッター引き継がれる法の精神を比喩したラストも印象的。★★★★★

18-14『守りたかったもの』

グリーン刑事が射殺した容疑者。彼は何を隠すのか? 彼の動揺が次第に膨らんでいくのが判り、最後、彼の涙をたたえた優しい瞳に打ちのめされる。ルーポ刑事、検事局の面々も辛さがにじみ出る演技。物語の積み重ねが感動を呼ぶ。★★★★★

18-15『見えざる恐怖』

新興宗教もの。教団に子供の命を奪われた男が陥る恐怖と不信の自家中毒。永遠に逃れられない信仰という名の恐怖が伝わる。カッター検事補の取った自白手法は、テーマとしては的を得ているかもしれないが、さすがに納得のある終わり方ではない。★★

18-16『ルビローサの挑戦』

妻殺しの冤罪から恩赦を与えられる男。彼は真犯人への復讐を働いたのか? 見どころは裁判編、なんとルビローサ検事補が検事補が弁護役に回る。逆の視点で語られる正義と法の葛藤は新鮮。カッターとの真剣勝負は逆に楽しくて笑いが止まらない。★★★★★

18-17『夢の終わり』

ネットの向こうの彼女はホントに彼女? 自分を若く見せるためには殺人も厭わない一種のサイコパス事件だが、なんだかダラダラと追及が続く印象で、捜査編の古地図窃盗も面白そうなのに活きない。シャルボイNY州知事の紹介エピといったところか。★★★

18-18『権力の壁』

売春絡みの殺人捜査が、州知事を巻き込んでしまい行き詰る。これまでも政治家や軍、FBIなど妨害と戦うエピは多かったが、マッコイが地方検事になった今、物語はより濃密に権力者たちの取引を描いて見せる。検事補たちは脇役だが、正義に燃える展開。★★★★

まとめ

総ポイント数

72 / 90

平均

4.00

感想

検察の主役がマッコイからカッター検事補に移った今シーズン。テレビ史上に残るパワフルなキャラの後釜ということで不安を抱いていたが、結果は意外なことにむしろポイント数が高くなってしまった。

これはキャラの弱さをシナリオのバリエーションでカバーしようとしたことと、政治の舞台に移ったマッコイをうまく事件に絡めた新しい見せ方のエピソードが増えためだろう。とてもフレッシュで、エンタテインメントとして楽しめるエピソードが増えた。

高評価をつけたエピにも、女性詐欺師に徹底的に引っ掻き回される7話、ルビローサ検事補が弁護士になる16話と、裁判やテーマの重みよりもシナリオの新奇さによるものが多い。このほかにも、政治を舞台にした6話、マッコイの過去が問われる8話なども印象深かった。

刑事編ではグリーン刑事役のジェシー・L・マーティンが降板(シーズン終了を待たずに終盤に交代というのは、またブロードウェイのシアターとの兼ね合いなんだろうな)。彼も9年という長期にわたって馴染んできただけに、寂しい。

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