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Law&Order シーズン3 - 海外ドラマ全話レビュー

Twitterを使ったロー&オーダー おおよそ140文字全話エピソードガイド&感想、第3シーズン。

あらすじ

国際問題に絡む犯罪やコンピューター犯罪など、複雑化する犯罪に挑む警察と検察の面々。心理学の検地で彼らを支える準レギュラーの契約精神科医、オリヴェット医師(キャロリン・マコーミック)がレイプ被害者となり、それは後の公判にも暗い影を落とす。そして組織犯罪の捜査中、凶弾に倒れるレセッタ刑事。

半身不随となったレセッタに代わり、ローガン刑事の新たなパートナーとなるのは堅物で有名な老練のレニー・ブリスコー刑事(ジェリー・オーバック)。なかなかブリスコーとそりが合わないローガンも、いくつかの事件と、復帰の断念を決意したレセッタとの対話を通じ、心を開いていく。

ストーン検事補とルビネット検事補の検察チームも、黒人差別やゲイ差別、幼児虐待といったアメリカの人権問題に繋がる重い事件を次々と相手にし、ときには弁護士とも共闘しながら、真の正義を追及していく。

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エピソードレビュー

 3-1『はかなき備忘録』

落ち目のモデルを売春へと誘う写真家が殺害される。モデルの娘の、自分もモデルになり母を超えたいという虚しい夢。いびつなモデル業界で生きる虚しさが胸に残る。しかしこれこれ後半シーズンでやったら間違いなく法定強姦が焦点になるよな。★★★★

3-2『リーダー暗殺』

黒人政治団体の指導者の射殺という、憎悪犯罪を描くのにこれ以上濃いものはないというぐらいの題材。捜査編から審理開始までの流れは固唾をのむ展開だが、終盤パワーダンして尻すぼみに。真相そのものは説得力があって面白くなりそうなのに、無念。 ★★★

3-3『身勝手なざんげ』

貧しさは罪を正当化するのか? 富める者の天真爛漫さは、貧しきものには傲慢と映り、理不尽な格差が憎しみを育てる。心身喪失が争点だが、当たり前の弁論に当たり前の判決が出て、当たり前のやりきれなさが心に残った。★★★

3-4『ファミリービジネス』

医療犯罪モノ。単なる事故と思える事件の責任をとことん追求し、こういう殺人の裁き方もあるのかと気づかせてくれる。初期シーズンの抑え目でハードボイルドな演出は、犯罪のすべてが露呈した時の犯人たちの一瞬の心の機微をうまく見せてくれた。★★★★

3-5『ドレスに潜む闇』

移民労働者の問題を追う。非常に残忍なケースで、またメキシコ移民が縫製工場で酷い扱いを見せるにはいいが、事件そのものは家族間の問題が主で動機などの描写が薄い。先にシーズン後半のエピを見てしまった故に感動が薄くなってしまった。 ★★★

3-6『屈せざる女』

産婦人科医という立場を利用しレイプを繰り返す名医。警察の契約精神科医オリベットが独断で彼を訪れ、彼女もまた被害にあう。被害者たちの悲痛、混乱する裁判、そしてなぜオリヴェットは医師を訪れたのか。クライマックスで久々に涙がこぼれた傑作。★★★★★

3-7『撃つ権利』

自衛権と銃問題を真っ正面から取り上げたエピ。事件の主役を市民権を得たばかりのギリシャ移民におき、米国が市民の権利をどう捉えているのかを客観的に見せる。後に『シカゴホープ』で主演するアダム・アーキンが微妙にギリシャ訛りを出す押さえた演技。★★★★

3-8『闇の帝王』

コロンビアの組織犯罪を描く。両親を目の前で殺された無垢な少女の悲鳴で幕が開け、少女を襲う悲劇の暗示で幕が降りる。周囲を次々と巻き込んでいく悪の本質に寒気がする。今回降板のセレッタが倒れるシーンも派手さがなくむしろリアリティを感じる。 ★★★★★

3-9『揺らいだ中立性』

虐げられた女性の逆襲はどこまで許されるのか。過去暴行された経験のあるオリベット精神科医を絡めて、正義の線引きの難しさを印象付ける。ブリスコー刑事初登場。昔気質の難物というキャラ設定だが、ラストの人を食ったにやけ顔がなんとも可笑しい。★★★★

 3-10『親切な領事』

アフリカ問題エピ。ダイヤ、麻薬、政治汚職、労働問題と、テーマを並べて描かれるナイジェリアは少々ステレオタイプな印象。彼らには彼らの価値観と正義があるということなんだが、腑に落ちなさがある。外交も絡む攻防は見ごたえあり。★★★★

3-11『証言台の天使』

殺人ではなく誘拐事件から、幼児性愛と家族問題を掘り下げる。家族の概念的が崩壊する現代、親同どうしの確執は子への偏愛へと転化し、それが法廷で逆に子供を道具に変えてしまう。この複雑な愛と異常性の交錯をどう消化すべきか。★★★★

 3-12『高みからの転落』

資産家の老女の殺害。いかにも怪しげな男が逮捕されするすると物事が進むが……。階級社会のコンプレックスが描かれるが、単なる動機づけとしか取れず、説得力に欠ける印象。 ★★★

3-13『ホロコーストの生き残り』

原題“Night and Fog”は強制収容所を描いた名著と同じ。ユダヤ人がユダヤ人を暴力で管理した歴史が50年を経て悲劇を生む。被害者の証言に涙する加害者、過去の50年が先の50年に繋がることを暗示したラストも印象深い。★★★★

3-14『秘められた思い』

境界性人格障害の男が抱く精神科医への想い。それは恋なのか、それとも依存なのか。捜査編では犯人がみるからに怪しげで先が読めるし、法廷編もだらだらと続き、焦点の精神科本人の感情が読めない。そういう演出意図なのかもしれないけど、退屈。★★

3-15『母の愛』

堕ちた黒人女性の射殺。その犯人の動機を巡って、番組は視聴者=大陪審に差別とはなにかを突きつける。黒人の起訴による差別批判を恐れる検事局に対し、同じ黒人であるルビネット検事補が説く公平性の議論は見事。それを受けたシフ検事の笑顔もよし。 ★★★★★

3-16『裁きの権限』

合議による陪審制度では、一度有罪が確定するとそれが誤りであっても容易に無罪釈放できない。この問題を、警察による知的障碍者の誘導と絡めて描く。ストーン検事補と人権派グリーン弁護士の共闘は燃える。マイケル・バダルーコのしぐさの演技も見事。★★★★★

3-17『愛の幻想』

動物愛護テロと思われた事件が、奇妙なサイコスリラーへと昇華する。エロトマニアとは重度の恋愛妄想。その狂気が白日となる瞬間が素晴らしい。フランチェス・フィッシャーが青い目に狂気を湛えて演じ切り、筋書きの読めない偽証戦が楽しめた。★★★★

3-18『パーティーの代償』

航海を終え丘にあがった海兵達のパーティーから始まる軍隊エピ。お決まりの展開として第一容疑者軍法会議に取られ、それに対抗しながら真犯人を探す。背後に男女差別というテーマも潜んでいたがいまいち迫力不足に感じた。★★★

3-19『コンピューター・ウィルス』

医療プログラムの書き換え攻撃で起こる殺人。90年代中盤の作品だが、その描写は文化背景を含めかなり正確。2010年代の現実で起きている事件と比しても遜色はない。その動機が明確になる裁判描写もエモーショナル。 ★★★★

3-20『秘密警察』

NYで知る海外問題エピ。今回はルーマニア移民の店主の殺害から、かつてのチャウシェスク独裁政権の異常性を暴く。国外ネタはやはり極端に描き過ぎなきらいがあり。冒頭、犠牲者が車から転がり落ちてくるシーンはインパクトがあった。★★★

 3-21『無情という名の動機』

刑法125条25項2号。ある人物に悪意を持ち死を招く行動を起こした場合、死をもたらすことに匹敵する。第二級謀殺である。警官らの身勝手なゲイ憎悪が警官の命を奪い、差別の何が罪かを抉り出す。警官射殺の瞬間の寒々とした絵も印象深い。★★★★★

3-22『行きすぎた献身』

恋愛のもつれだと思われた聴覚障碍者女性の殺人が、NPO絡みの金詐欺事件へと変わり、最後にまた個人の嫉妬と怒りへと戻ってくる。演技は手話のオンパレードで、怒りの表現など興味深い。普通の電話と違う聴覚障碍者用の電話が証拠になるかが鍵。★★★★

 まとめ

総ポイント数

85 / 110

 平均

3.86

感想

ホロコーストなどユダヤ人差別を主題とするエピソード、アフリカの問題を描くエピソード、コンピューター犯罪のエピソードと、今後も繰り返し取り上げられる題材が一通り揃った感がある。個人的にも好みのエピソードが多く、特に6話のクライマックス、力なきものが立ち上がる展開は印象深かった。

ちょっとしたトリビア

3-1: シフ検事が証拠の調査不足を叱責するときの「検察はマヌケの集団か」というセリフ、直訳では「いつからここはマルクス兄弟の手に渡ったんだ!」

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