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Law & Order シーズン4 ‐ 海外ドラマ全話レビュー

Twitterを使ったロー&オーダー おおよそ140文字全話エピソードガイド&感想、第4シーズン。

あらすじ

刑事分隊のボスとしてブリスコー刑事、ローガン刑事を率いてきたクレイゲン警部が(物語では語られないものの)汚職防止タスクフォースへの移動という形で降板となる。代わって指揮を執るのはアニタ・ヴァン・ビューレン警部補(S・エパサ・マーカーソン)。黒人女性という立場で、社会から疎外されたがゆえに罪を犯した者たちを、時に優しく、時に厳しく、取り調べていく。

検察ではストーン主席検事補を補佐してきたロビネット検事補が退職、弁護士に転進し(これも物語では語られない)、若い女性検事補クレア・キンケイド(ジル・ヘネシー)が着任する。ストーン検事補は時にシフ検事から制止されながらも、彼の信じる正義のため容赦なく悪を追い詰めていく。しかしその厳格すぎる正義の追求が無実の人の犠牲を産むとき、彼もまた進むべき道を決断をするのだった。

レビューリンク

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エピソードレビュー

4-1『犯罪のお膳立て』

どぎついテレビ番組が題材。服役後の児童性的虐待犯と被害者児童をインタビュー番組で対面させるが、親が犯人を撃ち殺す。この状況を作ったジャーナリズムのありかたを批判する。オープニングは驚きがあったが、物語の展開にはそれが乏しかった。 ★★★

4-2『善意の人々』

住宅街に根付き、迷惑行為を続ける薬物中毒のホームレス。住民の彼への逆襲は許されるのか。住民トラブルが原因の殺人未遂は、現実にありそうな事件。驚きの新事実もトリッキーな法廷戦術もないが、力強い弁論の飛び交う描写は裁判ドラマの王道。敢えての★★★★★

4-3『不協和音』

大物ミュージシャンに連れ込まれレイプされたと主張する女性。合意か強要かの線引きが難しい事件で、4-2話に続き双方の聞き応えある最終弁論が楽しめる。ヴァン・ビューレン警部補の女性らしい尋問、キンケイド検事補の葛藤と、新キャラにも見せ場あり。★★★★

4-4『プロファイリングの死角』

連続殺人の捜査にFBIの行動分析が使われ、捜査・法廷ともに一味違った展開。法廷編では白人優位主義者の弁護に超有能な黒人弁護士がつく。検事補にその良心を問われ「白人弁護士が黒人を弁護したら同じ質問をするか」と返すのが秀逸。★★★★

4-5『葬られた真実』

金持ち一家殺人事件。巧妙な殺人手法、やり手の弁護士、捜査編・法廷編ともに困難な状況に立ち向かい、それでも越えられない壁を見せつける。見どころは上訴審での、検察官と弁護士1対1の真剣勝負。★★★

4-6『ねじ曲がったプライド』

社会階級の問題が「親を虐待する子」という反社会性病質を引き起こす。10代の子供が家計を管理するなど驚く情報が多い。肝心の少年役に狂気を感じる演技がなかったのは残念。妹役のローレン・アンブローズは後に『トーチウッド』で活躍。★★

4-7『預言者の真偽』

カルト犯罪もの。爆破テロでまずIRAの名前が挙がるというのが時代を感じる。日常に潜むカルトの異常性が目を引くが、事件の動機の描かれかたが乏しく、腹に落ちなかった。指導者が双極性障害というのも、躁期はともかく鬱期はどうすんだこの教会。★★★

4-8『過去から届いた挑戦状』

なんだかSFのタイトルみたいだが、過去にストーン検事に裁かれた犯罪者が法廷で彼に復讐を挑むという燃える展開。悪意訴追で逆提訴されたストーンが見せる、わずかな狼狽や怒り、そして勝利の笑い。彼の顔芸がたっぷり楽しめる。★★★★

 4-9『片隅の少年たち』

汚れた街角で殺された少年。殺したのも少年。親に恵まれず最下層とも言える生活環境で罪を繰り返してきた14歳を救うために弁護士が使った「犯罪傾向の遺伝」という奥の手が焦点。その結末は端的に、遺伝子にすべてを求める事の怖さを表している。 ★★★★

4-10『幸せを求めて』

外国人花嫁問題。ロシアから嫁をカネで取り、傍若無人に振る舞う男を殺したのは誰か。オープニングの現調で不可解な証拠がバラっと提示され、動機解明のプロセスで回収されていく正統派の展開。肝心のロシア人嫁が美人過ぎず絶妙の顔立ちだった。★★★

4-11『許されざる罪』

病に伏せる裕福な老女を殺したのは強盗か、それとも飢えか。不法移民の問題も絡ませつつするが、飢えという殺人手段ゆえかどうも盛り上がりどころが掴めない。最後に明らかになる動機にも迫真性が感じられなかった。★★

4-12『誘拐犯の正体』

金持ち一家の秘密、誘拐編。成功した父親とダメな一人息子の歪んだ愛憎が描かれるのだけど、両者の心の奥底がうまく見えてこない。流れも妙に杜撰。殺人課の刑事がなんで夜中の2時に大金持ってただけの親父を取り調べたんだろうな。★★

4-13『彼女が出産する理由』

行方不明の新生児捜しから明らかになる養子縁組を悪用した新生児オークションという異常事態。最後、ホワイトトラッシュを自認する母親が語る、妊娠する理由のおぞましさと哀しさ、そして刺すような眼光の示す強さにやられた。 ★★★★★

4-14『しっぺ返し』

身内の問題エピ。不倫関係に執着するがゆえ犯罪を自作自演する判事。キンケイド検事補も巻き込み大スキャンダルに。突飛な状況だけど、男性の歪んだ承認欲求がよく伝わった。自分の行為を法廷で宣言する犯人と、それを見つめるキンケイドの表情に注目。★★★★

4-15『口封じ』

邦題ネタバレシリーズ。子供にも広がる銃利用がテーマ。身を守る為とはいえ無実の少年を撃ってしまった優等生の元警官の子。悪環境の産んだ事件に正義はどこまで厳しくあるべきかが問われる。結末は一転、元警官の父親と旧知のブリスコー刑事の渋い顔。 ★★★

4-16『宇宙の終わり』

陽子崩壊の新論文を権威ある教授に盗まれた男の復讐。色モノエピかと思ったらトリックの絡む粒子加速器や観測施設など、どれも筋が通ってるんでびっくり。その上で老学者の成果への意地と、若手の純粋な科学指向、両方が伝わるよくできた物語。★★★★★

4-17『大騒動』

いつもの構成から外れたイレギュラーエピ。1本の事件を追わず、1日に起きる複数の殺人事件に翻弄される刑事たちを見せる。消耗していく刑事たちが面白くもあり、悲しきもあり。場面転換に時計のチクタク音を入れて濃密な時間経過を表しているのも面白い。★★★★

4-18『賭け』

プロスポーツもの。大リーガーの父が殺されたのは彼のスポーツ賭博の為か? 被害者も容疑者も皆黒人だが、差別問題は一切でない。理性的すぎるぐらいの語りで悲しき親子の関係が明らかになる。捜査編では振りすこー刑事のプールの腕前が明らかに。★★★

4-19『幻の保護区』

ユダヤ人が黒人の子供を引き殺したことから発生する暴動。そして暴動に居合わせた無関係の市民が殺され……。直球勝負の黒人差別もの。差別されるが故に別の集団を差別する悪意の連鎖を断ち切れるか。黒人擁護の旗手グリーン弁護士登場で奥深い議論。★★★★★

4-20『失踪の真相』

妙に駄洒落な邦題。育児放棄家庭の少女を攫ったのは、かつて実の娘を亡くした女性。被害者と加害者に同意があるとき、罪とはどう定義されるのか? 結果はなるようになった感じ。かつて手話弁護士を演じたキャムリン・マンヘイムが今度はダメ母に。★★★

4-21『犯罪のダブルス』

プロテニス傷害事件。若い女子プロ選手を襲った暴漢を陰で操っていたのは誰か。意外と早く犯人が予想できる展開だった。スポーツ漬けにされるティーンエイジャーの必死の抵抗を描くが、少し迫力不足に感じた。★★★

4-22『旧知の友』

マフィア絡みの経済犯罪。命を狙われる目撃者への証言強要は正しいのか? マイケル・モリアーティ(ストーン検事補)の迫力の演技、それを受ける証人役アリソン・ジャニーの静かな感情表現が素晴らしい。無情の結末にストーンの決断、静かな余韻が涙を誘う傑作。★★★★

まとめ

総ポイント数

79 / 110

平均

3.59

感想

いちど扱われた題材が、より深い表現を伴って表されるようになり、円熟味が出てきた。いっぽうこれまでのスタンダードな題材から外れた異色テーマの物語も増え、その完成度が高いのか単にネタが面白いのか判別しづらいエピが増えてきた。そんななかでも16話『宇宙の終わり』は、高度な物理学を題材にしたもの。もちろんムリのある展開はあるのだが、使われている理論はかなり高いレベルで実際のものと一致させており、しかもそれが物語の展開と見事に結びついている良エピソードだった。

そして今シーズンでストーン検事補役のマイケル・モリアーティが降板。その理由には、社会問題に踏み込み過ぎな番組の内容を批判する議員への抗議があったとも伝えられている。最終エピソードは彼が4年間育ててきたストーンというキャラクターの総決算のような見応えのある演技で、涙なくしては観られなかった。

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