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Law & Order シーズン6 - 海外ドラマ全話レビュー

Twitterを使った『ロー&オーダー』おおよそ140文字エピソードガイド&感想、第6シーズン。

あらすじ

不祥事で巡査に降格、異動となったローガン刑事に代わり若手のレイ・カーティス刑事が27分署に着任する。ペルーとプエルトリコの複雑な血を引く彼は、保守派で家族想いの敬虔なクリスチャン。ITを使いこなしスピーディーに捜査をすすめる彼は、古株で昔ながらの捜査を好むブリスコー刑事とは正反対だ。

若く頭に血の上りやすいカーティスに、ブリスコーと上司のヴァン・ビューレン警部補は手を焼きながらも経験を積ませていく。事件のなかには『ホミサイド』の殺人課の面々と絡む捜査もある。

NY地検では人事の入れ替えもなく、シフ地方検事のもと、マッコイ主席検事補とキンケイド検事補のコンビが事件にあたる。しかし彼らの職務で、大きく変わった点がひとつだけある。ニューヨーク州で死刑制度が復活したのだ。

初の死刑求刑裁判のあとも、たびたびこの極刑の存在が捜査と裁判に影を落とす。そして彼らが死刑の執行に立ち会ったその日、刑事たち、判事たちはそれぞれの心のはけ口を求め、辞職を決意したキンケイド検事補を無慈悲な運命が襲う……。

レビューリンク

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エピソードレビュー

6-1『復讐の代償』

新刑事カーティス登場。家族想いの彼が扱うのは正反対の離婚家庭を襲った悲劇。少女はなんのために殺されたのか。意外な陰謀が露呈し、法廷での銃撃など派手なシーンもあるスピーディーな展開。母親の涙の告白、真っ赤な口紅が醜く歪むのは印象的。★★★★

6-2『反逆者たち』

チョイ悪ライダーに憧れる金持ちの若造が調子に乗って殺られちゃう。怪しげな人物がごろごろ出てきて証言も二転三転、なかなか真犯人が見えないが、むしろそれが退屈に感じた。原因を作った女性の悲しみもあまり活きない。★★

6-3『残酷な罰』

警官殺しの麻薬商人はあっさりと捕まり、法廷編でテーマになるのは極刑の妥当性。この年州で復活した死刑制度の該当初案件に、検事たちはどう向き合うのか。検察内の重苦しい雰囲気、上訴審でもどこか宙ぶらりんな論戦。BGMを排した演出も印象的。★★★★★

6-4『不肖の息子』

金持ち一家の秘密シリーズ。捜査編は最近のエピにしては手堅い証拠固めで問題捜査もなく、どう盛り上げるのかと思えば判事の不正。不正をもとに一事不再理を覆すマッコイ検事補の弁論がこぎみ良い。シフ検事が27分署で取調べをするというレアシーンも。★★★★

6-5『洗脳』

捜査編は強盗犯の追跡もの。携帯電話を駆使するカーティス刑事がまぶしい。裁判編は強盗犯に誘拐され共犯を強要されていた女性が本当に被害者なのかを争う。母親の支配から逃れた結果、誘拐犯に支配されてしまった彼女の心が見透かされ、重苦しいものが残る。 ★★★★

6-6『パラノイア ~妄想の敵~』

人の持つ異常心理が焦点捜査編は殺された女性のストーカーを追い、法廷編では意外な犯人の偏執病を明らかにしていく。捜査編が法廷編とリンクしないが、テーマは同じなので違和感は少ない。珍しい検事補とやり手弁護士の裏取引も楽しい。 ★★★

 6-7『屈辱』

被害者は娼婦、容疑者は裕福な医者、そして彼に尽くす妻。動機があるのは誰だ? キンケイド検事補が殺人事件の裁判でデビューを飾る。妻の演技はよかったが、被害者友人のHIV感染や残された2000ドルなど、回収されない伏線も目に付いてしまう。★★★

6-8『天使のために』

信仰がテーマ。教会で起きた幼児誘拐の真相を探るため、カーティス刑事が母親と静かに信仰について語り合う。その末に見えた地獄の如き炎には絶句する。裁判編は弁護士の計略で殺人の責任を神に求めるという展開。神と人の罪に関する弁論は見事。★★★★★

 6-9『学園の傷』

カンニングを咎め殺された女性教師。その動機は単なる報復か? 差別を煽る情報に毒され、憎しみを増幅させていく生徒。裁判編ではKKKよりの弁護士が、ブリスコー刑事がユダヤ系であることを突くなど、差別の扇動がいかに影響を及ぼすかが描かれる。★★★★

6-10『30年前の真相』

コールドケースもの。女性をめった刺しにしレイプした犯人が冤罪かもしれない。軽い告白から始まる混迷の裁判。検察の追い込まれる攻防で最後まで緊張して観られた。冤罪とされた男の醜い笑みも巧い。事件担当だったシフ検事の言葉も印象的。★★★★

6-11『遺体なき殺人事件』

妙に楽し気なシーンから始まると思ったらなんと殺馬事件。そこから始まる詐欺と殺人の謎。視聴者側も犯人に確証が持てずすっきりしないが、マッコイ検事補の暴走演技に加え、彼が真の勝者となりほくそ笑むシーンは撮影も美しく印象深い。★★★★

6-12『戦利品』

5年前の黒人を狙った連続殺人事件の模倣犯。彼の口から出た真実はかつての裁判を全て覆し、マッコイ検事補と元パートナーを苦しめる。「誰かに捧げるための罪」というテーマが、殺人鬼と検事補の両面で描かれるのだが、後半の展開が強烈で全体感に欠ける。★★★★

6-13『ボルチモアからの刺客』

黒人を狙った地下鉄での毒ガス大量殺人。容疑者は5年前ボルチモアでも同じ事件を起こしていた。ホミサイド/殺人捜査課の面々がゲスト出演。足の引っ張り合いで荒れる現場。裁判も混迷し、差別の過激化を感じさせる不安な結末も印象深い。★★★★

 6-14『子を盗む』

ロビネット元検事補と人種問題を賭して正面から戦う傑作。母親に問題があるとはいえ黒人の子を強制的に白人の養子にするのは民族の抹消ではないか? あらゆる手を使い論戦を挑むロビネットに息を飲む。「正しい心が世界を変えるとは限らない」は名訳。★★★★★

6-15『アンコール』

5-2話で妻殺しの容疑者となったが有罪にならなかった男が再度登場、再び新妻の殺人容疑をかけられる。犯人が巧妙に仕組んだカモフラージュを一枚々々剥がしていく推理もの。今回もラリー・ミラーの悪人顔が極上だった。★★★★

16-16『家族殺し』

妻子を殺したのは泥酔した夫なのか? 刑事編・裁判編通して丁寧な推理が楽しめる。弁護士がキンケイド検事補の親友で、オリベット博士も加わり女性だらけの裁判。珍しく弱気だったマッコイ検事補が最後にビシっと真実を突き止めるのは心地よい。★★★★

6-17『偽りの人生』

ゲイのカミングアウトにまつわる問題。自分を偽り結婚生活を続ける方が辛いか、それを知らずに相手を愛し続けるほうが辛いのか。真犯人の存在も、真犯人の追い詰め方も、よくあるっちゃある流れだけど、最後、真犯人の毅然とした表情は実に巧かった。★★★

 6-18『償い』

売れっ子モデルに惚れてしまった冴えない男。彼がモデルを殺したのは単なる恋愛の暴走か? 男が見せる最後の意地にちょっとしんみりだけど、ごく普通のサスペンスって感じ。シフ検事はマルクス兄弟に続き三バカ大将も好きな模様。★★

6-19『かばう少年』

寝ていた夫の横にいつの間にか妻の遺体が、というミステリーは意外と早く解け、焦点は貧困が生み出すチャイルドギャングの問題に。大人顔負けの凶悪な子供も、大人に隷属する被害者なのだということを法で証明する。刑事たちの小粋な会話も楽しい。★★★★

6-20『裏の顔』

乱れる若者の性、女子大生売春組織のまき。敢えて真犯人を無罪にしてその悪意を見せつけるという流れなのはわかるけど、それにしてはインパクトが足りない。法廷では売春組織を企業腐敗防止法に絡めて争うのが面白いが。★★★

6-21『妄想と現実の狭間で』

統合失調症患者が犯した殺人。逮捕後薬を飲み回復した彼が、自分自身の弁護を始める。デニス・オハラ迫真の演技で伝わる精神病患者の苦しみ、そして判断ミスを問われるキンケイド検事補をかばうマッコイ検事補の友情。感情を突かれる名作。 ★★★★★

6-22『ホームシック』

赤ん坊を殺したのは誰だ? 留学生ベビーシッターにかけられた濃厚な容疑がある証言でがらりと変わり、タイトルが見事なダブルミーニングだと判る。働く母である弁護士の弁論やキンケイド検事補との会話も良いが、まだ裏がありそうで喰い足りない。★★★

6-23『余白』

いつもの形式を離れ、死刑執行を見届けた刑事、検事たちのその後の一日を描く。感情に戸惑い、家族を求め、また酒に酔い潰れる主人公たち。セリフの一言ひとことが、死刑に対する意味を持つ。6年間積み重なってきた犯罪劇に重いカタルシスを与える傑作。★★★★★

まとめ

総ポイント数

88 / 115

平均

3.82

感想

カーティス刑事参加で中盤戦に突入。今回は黒人差別犯罪が意外と多く、それぞれ心に残るシーズンだった。『ホミサイド』とのクロスオーバーが始まり、まだ直接の絡みはないものの、マンチ刑事の登場もうれしい。

現実のNY州の死刑制度の復活を強く意識したシーズンでもあり、6-3話での重苦しい議論は、死刑は正義の執行のオプションして認められるべきなのかという疑問の投げかけとなっている。そして、死刑の結末としての最終話は、従来のフォーマットを飛び出しはじめて、キャラクターの家族や過去、内面を直接的に描く。演じるジル・ヘネシーの降板のため、キンケイドの唐突な死が描かれるのだが、これもまた、死というものが何かを描くショッキングな演出のひとつとして、心に深く突き刺さる。

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