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Law & Order シーズン7 - 海外ドラマ全話レビュー

 

Twitterを使った『ロー&オーダー』おおよそ140文字エピソードガイド&感想、第7シーズン。

あらすじ

f:id:debabocho:20131203120256j:plain交通事故で命を落としたキンケイド検事補に代わり、ジェイミー・ロス検事補がマッコイ主席検事補の補佐に就任する。シングルマザーでもある彼女は、時にシフ地方検事らから十分な仕事ができないのではとの疑念を持たれるが、大手弁護士事務所で培った強気の姿勢と的確な調査で、その辣腕を振るう。

ヴァン・ビューレン警部補指揮下のブリスコー刑事、カーティス刑事は、引き続きコンビで殺人事件の捜査に当たる。今シーズンではハリウッドで起こった大がかりな事件でなんども西海岸に飛ぶことになる。 

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エピソードレビュー

7-1『タフな助っ人』

ジェイミー・ロス検事補初登場。これまでにない強硬な態度で、キンケイドの死が忘れられず極刑の求刑に怯むマッコイ検事補とぶつかりながら裁判を進める。物語は自動車強盗という身近な犯罪。初心に戻ったような落ち着いた捜査と裁判。★★★

7-2『カラクリ』

殺された女性詐欺師の秘密を、その妹が握る。エレベーターの停車階を手掛かりにした捜査や大胆なトリック、更に裁判をかき乱すセクハラ判事に収監されるマッコイ検事補ど、見どころがたっぷりで楽しめる。犯人の最後の告白はいささかドラマ過ぎるけど。★★★★

7-3『恋する二人』

白人に殺された黒人。両者の親がそれぞれ人種偏見をまくしたて、法廷の中で静かに人種対立が進んでいく。板挟みになるマッコイ検事補が少しかわいい。終局明らかになるのはロミオとジュリエットのような哀しい恋物語。話が綺麗にまとまって心に残った。★★★★

7‐4『生還者たち』

コイン収集殺人。道楽者どうしのいさかいかと思いきや、コインはまさかの50年前のナチスに繋がる。享楽的な金持ちコレクターと陰鬱な美術修復家の対比も面白い。コインというキーワードが一貫して物語を引っ張り、安心して観られる良ミステリー★★★★

7-5『腐敗』

麻薬ディーラーを殺したブリスコー刑事の旧知の刑事。それは本当に正当防衛だったのか? 真実を求めるカーティス刑事の孤独な捜査に始まり、後半は腐敗防止委員会での論戦。裏切りの連鎖にブリスコー刑事まで巻き込まれ、腐敗が蝕む人の心がよく描かれている。★★★★

7-6『ダブル・ブラインド』

不可解な動機の殺人で逮捕された精神疾患の男。次々と明らかになる彼の主治医の虚偽の報告、故意の見過ごし。自らの怠慢を隠すために行われた行為は、まさに悪行と呼ぶに相応しい。ロス検事補の最後の一言が、怠慢の本質的な問題を突きつける。★★★★

7-7『温情』

離婚問題もの。白血病の息子の養育費も払わない暴力男。残された元妻とその父は何のために彼を殺したのか? 筋書きに荒があるわけでもないが物凄い驚きや感動があるでもない、普通の人情話といった感じ。 マッコイ検事補の最後の行動も彼には珍しい人情。★★★

7-8『ファミリービジネス』

金持ち一家の秘密、姉妹確執編。デパートのCFOの殺害を追って、警察も検察も創業者一族の屋敷を行ったり来たり。怪しげな宗教家やらもぽんぽこ飛び出し、うーん。なんだかマッコイ検事補も冷めた感じで、観てるほうも力が入らなかった。★★

7-9『見えない罠』

なんと3-3話の続編。かつて暗殺されたアフリカ系アメリカ人会議の議長後任が再び命を狙われる。会議の内紛がFBIを巻き込み様々な罠と陰謀が巡るが、いちばん賢かったのは前回も暗躍した議長だったという話。彼を単純に憎めないというのが奥深い。★★★★

7‐10『名残』

捜査編はヒットマンによる平凡な男の殺人を追い、裁判編はその動機となった別の殺人を追う。どちらも丁寧な犯罪追及で、ブリスコー刑事の変装姿も楽しめる。ただ真の犯罪の証拠はけっこう安易だし、やっぱり事件が小ぢんまりしてるせいで物足りない。★★★

 7-11『親子たちの風景』

ブルックリン橋からの身投げは交通事故でキレた男から逃げるため。現代の不寛容な風潮を問題にするかと思いきや……二人のタイプの違うダメ息子が登場するが、うまくテーマとしてまとまっていない。裁判に辟易するロス検事補がかわいい。★★★

7-12『悪魔との取引』

誤認殺人から暴かれる殺人の連鎖。捜査編は偶然手がかりを掴む展開で少し不満だが、終盤真犯人による殺人取引の強要が語られるシーンは戦慄。マッコイ検事補のあまりに彼らしからぬ取引にどうなる事かと思ったけど、見事な逆転劇でホッとした。★★★

7-13『年の差婚の罠』

まーそのまんまのシナリオ。70代の老人が殺され疑われるのは20代の妻。住み込み秘書とか妻の母親とか、出てくるキャラがみんな怪しげで、逆に緊張感がない。妻のキャラも大概で、葬式直後にエステ通ってて「心から夫を愛してた」なんてなあ。★★★

7-14『ワーキング・マザー』

乱暴な客を殺した売春婦は裕福な主婦。老女優エレイン・ストレッチ演じるフェミニストのスティーグリッツ弁護士登場で、女性の心理を丁寧に解き明かす。彼女の「女性がノーという権利」という最終弁論は感類の迫力で、主役を完全に喰っていた。★★★★★

7-15『ハリウッドの女』

シリーズ初の連続エピソードは、舞台をハリウッドに移してカーティス刑事が色男っぷりを存分に発揮するちょっとしたお祭り騒ぎ。全篇ブリスコー刑事の小粋なトークと捜査も楽しめる。土壇場で証拠が謎を呼び、不穏な空気を盛り上げ次回に続く。★★★★

7-16『ハリウッドの女 PART2』

15話の続編。今回は法廷がメインで、ロス検事補の元夫が敵弁護士として立ちふさがる。検事さえ懐柔するLA流の人脈フル活用の弁護手法が見られ、対するマッコイ検事補の弁論も熱い。しかしロス検事補もやたらモテるなあ。 ★★★★

7-17『ハリウッドの女 PART3』

大裁判となる完結編。マッコイ検事補の激しい尋問で明らかになる夫婦間の不信という動機が、ロス検事補、カーティス刑事にも重なる。3話分のディティールが感動を重厚にし、最後はマッコイとともに、心地よい満足感が味わえる。★★★★★

7-18『執念の追い討ち作戦』

連続婦女暴行犯の仮釈放直後に発生したレイプ殺人。証拠がない中、仮釈放の男に目星をつけ追い込むマッコイ検事補。正義感のあまり男の生活を踏みにじる手法が悲劇を生む。凶悪犯に人権はあるのか? 善悪の区別がつかない胸糞の悪くなるエピ。★★★★★

7-19『勝負の時』

強盗誘拐犯が知る人質の居場所。彼を救うために行った司法取引が裏目に出て、検察は沽券をかけた勝負に出る。久々のマンハントで緊迫感のある展開。容疑者収容先の病院で行われる手書きの交渉や、裏の裏をかくプロの法廷戦術がじっくり楽しめる。★★★★

7-20『善人マイクの災難』

平凡な自動車強盗に平凡な容疑者、どう展開させるかと思ったらこうきたか! この絵に描いたような平凡な男は、警察、検察との関わりで様々な災難に巻き込まれ、その対応に怒り倦みながらも、善人であることを捨てきれない。見事な人間描写! ★★★★★

7-21『愛という名の悲哀』

作家の家で殺された若い女性編集者。作家もその恋人も不在の中、いったい誰がどうやって? これだけの事件が起こってもまだ相手を愛する感情を言い当てたロス検事補の最後の言葉が印象的。もう少し演技がよければ……。★★

7-22『二度目の拒絶』

婚外子の相続問題。といっても推理ドラマではよくある題材で、本作も被害者家族への捜査で意外な容疑者が浮上し、最後に動機が告白される、スタンダードな推理プロット。弁護士を絡めたトリックもそれほど盛り上がらない。★★

7-23『生と死の瀬戸際で』

憎悪犯罪と思われた殺人は単なるカネ絡み。彼を死刑に問う権利は誰にあるのか。まさかシフ検事にこんな見せ場のあるエピがこようとは。末端医療と重ね合わせ、人命を奪う権利を論じる重い物語。それだけに描き切るには尺が足りなく思える残念。★★★★★

 まとめ

総ポイント数

 85 / 115

平均

 3.70

感想

20年に及ぶシリーズで唯一、3話連続のエピソードが展開する。面白いのは、連続ものでありながら各話の冒頭はいつも通り、市民による殺人の通報から始まる点。このフォーマットへのこだわりが、数あるテレビドラマのなかでLaw & Orderを際立たせる。ただ、それゆえにこのクリフハンガースタイルは定着しなかったんだろう。

今シーズン心に染み入ったのは、18話『執念の追い討ち作戦』と20話『善人マイクの災難』。どちらも警察・検察を正義の味方ではなく、むしろ権力を振りかざす一種の脅威と描いている。従来の枠を超え、法と正義の執行の問題点が描かれている。

ちょっとしたトリビア

7-5話、警察腐敗を追及するヘルマン委員会のモデルとなったのは、92-94年にあった同様の組織、モレン委員会(Mollen Commision)だと思われる。70年代にはナップ委員会というのもあり、それぞれ元裁判官が長となっている。

7-16 激怒するシフ検事の台詞「死んだ名検事を掘り起こしてでもゴードンを叩きのめせ」は、名検事はトマス・E・デューイのこと(原語台詞にあり)。戦中期のNY検事で、ギャングの大物ルチアーノと対決、のちに州知事となる。

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