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Law&Order クリミナル・インテント シーズン4: 海外ドラマ全話レビュー

Twitterを使った『Law&Order 犯罪心理捜査班(クリミナル・インテント)』おおよそ140文字エピソードガイド&感想、第4シーズン。 

あらすじ

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ニューヨーク市警本部、通称ワン・ポリス・プラザにに置かれた重要事件捜査班。ニューヨークの各地で起こる凶悪事件、難事件に、ゴーレン刑事とイームズ刑事のコンビが挑む。彼らが追う犯罪はは、ときにどうしようもない倫理的葛藤や、抗いようのない精神疾患のために発生する。自らも精神疾患を患う母親を持つゴーレンは、彼らを追い詰めることで、心に傷を負っていく……。

全話レビュー

4-1『強迫観念』

4-1『強迫観念』うつ状態ラジオパーソナリティの自殺の背後にある謎を追う。作劇はいつもの落ち着いたトーンだが、真相は何重にも隠され、驚きが持続する。物語は一種のパーソナリティ障害が引き起こす悲劇に落着。犯人の絶望とゴーレンの苦痛が重く胸に迫る佳作。★★★★

4-2『写真に込められた復讐』

殺された写真家は女性の死体写真を撮っていた? ドイツ系写真家のナチスとのつながりが示唆され気を引くがとんだ内容の水増しミスリード。犯人の殺人の目的もサイコというには安っぽすぎる設定。「死体検知犬」というのは知らなかった。★★

4-3『孤独な男の欲望』

ニール・パトリック・ハリスが普段のキャラと正反対の死んだ魚の目をした孤独な狂人をばっちり演じる。死刑に反対するゴーレンの激高はちょっと唐突だけど、彼の複雑な人間性と孤独への共感が垣間見え、最後のちょっとした間の演技が活きる。★★★★

4-4『みせかけの愛情』

日本人を装った非情な宝石泥棒の謎。ゴーレンの天敵ニコール・ウォレスが再登場。恋人に死んだ娘を重ね合わせるという歪んだ性愛はグロテスクで美しい。ただその表現が決まっていたかというと、やや演技不足。一瞬の表情は良かったが。★★★

4-5『家族の宗教対立』

謎の誘拐犯の陰には無宗教主義者と神父との対立が。証拠を拾って一歩々々犯人に近づいていくプロセスはシンプルだが楽しい。犯人の正体も巧いが、かなり手の込んだ犯行なのでもう少し掘り下げてほしかった。結末での裏切りの描写はまたヒドいの一言。★★★★

4-6『孤独なジェニー』

NYの地下に住むホームレスの連続殺人が発覚。壮大な事件の犯人は意外で新鮮味がある。地下住人探訪も冒険じみてて面白い。最後のゴーレン落としは動機というより一種の病理解明なんだけど、その虚しい結末をもう少し長く味わいたかった。★★★★

4-7『母親失格の代償』

4人の子供と疲れ切った妻。子供たちを死に追いやったのは何か? 前半は9.11後の在米アラブ人の窮状が垣間見える。後半の犯人の動機追及編は二段構えで鬼気迫る内容。解決できない不正義に対する絶望感がひしひしと伝わり胸を打つ。★★★★★

4-8『幻の銀食器』

たまたま捜査支援に出た絞殺事件が、稀代の大泥棒の捕り物に発展。普段とは追うものが違うがやってることは同じ。莫大な額が盗まれてるのに、妙に小さな物語で終わるのはさすがにアンバランス。ゴーレンの体がフラつく場面があるのは伏線か。★★★

4-9『孤独な天才』

高名な科学者の助手の物理学者が殺され……。なんとお題は「万物理論」! 究極の科学をネタにしたはいいが、残念なのが犯人の動機が結局卑近な欲求に落ち着いてしまい、オリジナルシリーズ4-15話に見られた科学と研究のあり方を示す描写が乏しい。★★★★

4-10『殺人マンション』

家政婦は見た! 高級マンションの管理組合をめぐるドロドロに巻き込まれた敬虔な家政婦。果たして彼女は本当に見たのか聴いたのか? 吹き抜け配管のサイコな描写にグッとくるがそこまでサイコにならず、オチはまたこれかよ、という感。★★★

 4-11『自由を奪われた天才』

観光客狙いの殺人か複雑な陰謀か、ふたを開けてみたらサイコパス! その正体が現れるシーンはなかなか衝撃的。歴史的な外交事件をもとにした設定にも惹かれるが、なんとも尻つぼみ。もっと派手な展開か、雄弁なゴーレン落としが欲しい。★★★

4-12『バンパイアの集い』

古いおもちゃにゴス集会、ナードの仲間たちの輪をかき乱すのは、ひとりの詐欺と希古本の謎。個性がありそうなキャラが何人も役者が出て誰もピンとくる演技をしてくれないのは残念。殺人のトリックはいかにもな感じで面白かった。★★★

4-13『スタンフォード刑務所実験』

殺された連邦刑務官が抱えていた、刑務所の秘密。あのマイク・ローガン刑事が趣味の悪いスーツを着て再登場! 愛国者法による不当収監という政治的なテーマにも切り込み、見応えがある。ラストのゴーレン落としはでき過ぎだが。★★★★

4-14『セックスとスキャンダル』

プレイボーイを創刊したヒュー・ヘフナーをモデルとした人物が登場。プレイメイトを殺したのは誰か? ヘフナーもどきと女性たちは画面の賑やかしで、事件そのものは母子の情に迫る辛いもの。今回のゴーレン落とし、ほぼ恐喝。★★★

4-15『究極メニューのワナ』

殺された料理評論家。次の犠牲者は……? 古株料理人による若手いじめというのはよくある話だが、L&Oにかかるとあっという間に変態性欲モノになってしまう。容疑者の女性のコケティッシュな表情はとても巧く、真犯人もちょっと意外。★★★

4-16『与え続ける男』

臓器移植が題材だが切り口が新鮮。自分は無傷のまま他人に臓器を与え続けることで万能感を得る、一種のサイコパスが現れる。その不気味な存在が徐々に明らかになっていく流れは引き込まれるが、肝心の不気味さがもう一歩足りない。★★★

4-17『DNAの呪縛』

久々にハードな変態連続殺人犯登場! うつぶせで曲げた足首と首を紐でつなぎ、足が疲れると窒息という拷問は目からウロコ(でも寝返り打てば?)。容疑者から真犯人に繋がる展開が少々杜撰だが、なぜ性癖が遺伝したのかという謎解きは面白い。★★★★

4-18『本当の家族』

殺された夫婦はマフィア裁判の証人だった。マフィアの復讐か? 生き残った娘の過去がカギになる。役者がなかなか良くて、ラストシーンの演技は久々に見応えを感じた。実物大の写真で犯行現場を再現して推理するシーンはなるほどだが、目が回る。★★★

4-19『美人姿の野獣』

ダイオキシンの注入で醜い姿にされた女性。高濃度ダイオキシンはどこから? で捜査が始まるけど、知識さえあれば原料はどこでも手に入いると証明してるぞこの展開。物語は人の美醜と複雑に絡み合った執着の話で、ゴーレン落としも見応えあり。★★★★

4-20『集団自殺の罠』

自殺サイトに唆された集団自殺、しかしその一人は自殺を望んでいなかった? 米国企業の過労死パワハラにテーマが置かれ、企業の「殺人担当」となる男の姿はリアル。久々にゴーレンが叫び、姿カーヴァー検事の見せ場があるのもうれしい。★★★★

4-21『セレブ被害者』

フィアンセを殺された俳優志望の男。彼の悲しみの裏に隠された秘密は? 二人の男の友情とその崩壊は大変見応えがあるし、殺人の動機も理解できるが、手の込んだ証拠隠ぺいはなんだか逆に興ざめ。人の傷に塩を塗りこむゴーレン殺法には苦笑。★★★

4-22『名誉と欲望の果て』

殺された公務員組合の関係者は、元警官の政治的野心と結びつく。例によって色事が絡む事件だが、容疑者が元警官だけに隻眼ダーキンス警部の見せ場がたっぷり。話のスケールが大きくワクワク感も上積み。最後の犯人大暴れもゲスで楽しい。★★★★

4-23『法を憎む男』

裁判官連続暗殺事件! 社会を揺るがす衝撃犯罪にゴーレン&イームズがいつもの調子で挑む。推理の展開も上々だし犯人の造形にも説得感あり。ただスケール感が欲しい。オリジナルシリーズからゲストを出すとか、もう少し派手さを出せなかったか。★★★★

まとめ

総ポイント数

81 / 115

平均

3.52

感想

キャストは引き続き変わらず。ひどすぎるエピもないが、最高のエピも少ない。それぞれ事件の解決プロセスはユニークだが、心を揺り動かすようなものに乏しかったという印象。

個別のエピソードで心に残ったのは第7話、20話など。どうしようもない状況で犯罪に走った人間を、更に追い詰める虚しさが心に響く。第1話も愛憎劇のかたちをとりつつ、精神を病んだ人間の哀しさを表現していた。マイク・ローガンの登場する13話は、今後のテコ入れへの布石ではあるが、普段とはテンションの違う展開で純粋に面白かった。