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Law & Order: UK シーズン1 - 海外ドラマ全話レビュー

Twitterを使った『ロー&オーダー: UK』おおよそ140文字エピソードガイド&感想、第1シーズン。

あらすじ

2009年、ロンドン。長年続いた「好景気の英国」というイメージはリーマン・ショックを契機に崩れ始め、固定化された社会格差やテロなどの社会問題が顕在化しつつあった。ロンドン警視庁、セントラルロンドン署の重大犯罪課に所属する熟練捜査官ロニー・ブルックス巡査部長と、彼を慕う若きマット・デブリン上級巡査は、ナタリー・チャンドラー警部補のもと、グレーター・ロンドン各地でおこる様々な凶悪犯罪を捜査し、容疑者を挙げていく。

f:id:debabocho:20141019122624j:plainセントラルロンドン署で逮捕された容疑者は、英国検察庁ロンドン支局により起訴される。ジョージ・キャッスル局長のもと、ジェームス・スティール検事、彼をアシストするアリーシャ・フィリップス検事が、刑事法院で犯罪者を追及する。彼らは警察と協力しながら事件の全容を解明し、社会の歪みと対峙することとなる。

レビューリンク

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エピソードレビュー

1-1『慈悲なき心』

貧しい母親、荒んだ住環境、乳幼児を死に至らしめたのは何か。米国版初期の名作を英国風に仕立て直す。警察の推理は奥が深く、法廷での責任の追求も複雑で原版同様見応えがある。ただ最後に立ち上る「各人の小さな欲望の積み重ね」というテーマの表現が、弱い。★★★★

脚本: Chris Chibnall / 演出: Omar Madha

オリジナルシナリオ: 米国版 2-18『死のゆりかご』

1-2『愛せざる者』

13歳の殺人犯に自由意志はあったのか? セロトニン代謝欠損遺伝子を援用した弁護が、社会を、親を、彼自身を、宿命論という名の地獄に引き込む。美しい撮影が、希望を失った少年の瞳を印象付ける。シナリオも演出も、米国版からの見事に飛躍した傑作。★★★★★

脚本: Terry Cafolla / 演出: Andy Goddard

オリジナルシナリオ: 米国版 4-9『片隅の少年たち』

1-3『娼婦の素顔』

殺された風俗課刑事の陰部に付着していた口紅が、高級売春の意外な実態を暴く。検察の追求により一人の女のプライドがズタズタに切り裂かれる尋問シーンは、恥辱という言葉だけでは言い表せない重みがある。そこに至る捜査過程に起伏がもう少し欲しい。★★★★

脚本: Chris Chibnall / 演出: Omar Madha

オリジナルシナリオ: 米国版 7-14『ワーキング・マザー』

1-4『因縁の棲家』

アクロイド殺しは冤罪だったのか。収監されていた知能犯がやり直し裁判でスティール検事に挑む。敵の計略が効きまくり、涙ぐんで激高するスティールが見どころ。しかし犯行の謎解きそのものはいまいち腹落ち感に乏しいので、ドラマ全体のカタルシスも控えめ。★★★

脚本: Chris Chibnall / 演出: Andy Goddard

オリジナルシナリオ: 米国版 4-8『過去から届いた挑戦状』

1-5『葬られた記憶』

20年前の行方不明事件の遺体が発掘される。曖昧な記憶を頼りに進む捜査と裁判で、最後に容疑者が突然自白を始めるのは安易だが、見せ場はそこから。老人となった犯人の独白、周囲の者の反応が物語と強く結びつき、見事な劇場空間が生まれる。★★★★★

脚本: Catherine Tregenna / 演出: Mark Everest

オリジナルシナリオ: 米国版 2-7『記憶の中に』

1-6『天国の扉』

不法移民の多いトルコ人クラブで起きた火災。大量の犠牲者の責任は誰にあるのか。BGMを含め異国情緒や悲劇性を前に出しすぎて、偏見に屈しない為にかばい合うマイノリティの社会組織に巣食った欺瞞という、複雑な問題の本質が巧く伝わらなかった。★★★★

脚本:  Chris Chibnall / 演出: Tristram Powell

オリジナルシナリオ: 米国版 2-10『偽りの楽園』 

1-7『アリーシャ』

産婦人科医の性的暴行を確かめるため自ら医師にかかった検事補。果たして立件は可能なのか? 彼女の恐怖反応、周囲の男たちの反応、見事に感情を捉えている。最後の映像コラージュも印象深い。この街を行き交う人々の中に、レイプ被害者はいる。★★★★

脚本: Catherine Tregenna / 演出: Mark Everest

オリジナルシナリオ: 米国版 3-6『屈せざる女』

 

まとめ

総ポイント数

29 / 35

平均

4.14

シーズン1 感想

米国版オリジナルシリーズの初期シーズン(1990 - 1997年あたり)のエピソードを、2009年の英国に置き換えてリメイクするこのシリーズ。1シーズンあたりのエピソードが少ないせいもあるけれど、結果を見ると自分でも驚くほどの高評価となってしまった。

本作のシナリオは、基本的に驚くほどオリジナルシリーズに忠実だ。シーンによってはセリフの一言一句まで、オリジナルシリーズのそれを鮮明に思い出せるぐらいに似ている。第1話を観たときはその類似性から、「ホットドッグがフィッシュアンドチップスになっただけか?」と危惧したのだけれど、第2話を観てその考えは大いに改まった。オリジナルよりシャープでメッセージ性の高い内容となっていたからだ。

UK版第2話『愛せざる者』の原作にあたる米国版『片隅の少年たち』は、子供たちの人生を潰す育児ネグレクトなどの様々な側面を描き出す物語だったが、UK版では、その中でもネグレクトの究極の姿とも言える「遺伝子の問題」を掘り下げる構成に変えられ、人生を奪い去られた子供の絶望というテーマを鮮明に描き出すことに成功している。同じシノプシスでも、演出が違えばこうも変わるのかと、驚いた。

そのうえで、UK版はラストシーンで大胆に変更された少年と検事の会話が、非常にエモーショナルな感動を呼び起こす。オリジナルのストーン検事補よりほんの少し情に厚いUK版のスティール検事の、小さな希望ともいえる最後の言葉が胸に突き刺さり、大胆に変更されたエンドテーマ曲が流れると、胸に熱いものが感じられる。これは素晴らしかった。

第5話も同様で、シナリオの展開は込み入っている割に、少々安直すぎる嫌いもあったのだが、ラストの感情に訴える演技、演出、ことに舞台設計は、見事としか言いようがない。

 

一方、エモーショナルにしたことで評価が難しくなったシナリオもある。第6話は、社会的弱者に悲劇をもたらした権力者への懲罰という意味では溜飲の結果だったが、かつては弱者の代弁者だったはずの善き権力者が、なぜ腐敗していったのかという問題が、感情的な描写の陰に隠れて見えづらくなってしまった。

第7話も同様で、オリジナルシリーズでは被害に遭うのは冷静なドクター・オリベットだったが、UK版では若き検事補アリーシャ。感情面での訴求は非常に強くなったが、オリジナルシリーズのハードボイルドな視点が視聴者に与える複雑な感情は、薄れてしまったといっていい。米国版の虚無的ともいえる演出は、ドラマが取り上げた社会問題について「考えさえる」ことに成功していたというのが、逆説的によくわかった。

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米国オリジナル版 Law & Order 全話レビュー