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Law&Order 犯罪心理捜査班 シーズン1 全話レビュー

Twitterを使った『ロー&オーダー』おおよそ140文字エピソードガイド&感想、第1シーズン。

あらすじ

ニューヨーク市警には、各分署の刑事課とは独立した刑事事件専従組織、重要事件捜査班(MCS)がある。市警本部「ワン・ポリス・プラザ」に居を構える彼らは、分署だけでは手に負えない凶悪犯罪や知能犯罪に対し、高度な技能、捜査能力を持って立ち向かう。

陸軍犯罪捜査司令部(CDI)出身のロバート・ゴーレン刑事は、卓抜のプロファイリング能力、推理能力で、多くの知能犯のトリックを暴き、その心理を揺さぶる尋問技術で自白を引き出していく。彼とコンビを組むアレックス・エイムズ刑事は常に冷静さを失わず、時に常人には理解不能に思えるゴーレンの捜査を支える。

ふたりの捜査を支えるのは、捜査班を指揮するジェームズ・ディーンズ警部、そして捜査班付きの検事補ロン・カーバー。彼らはときに刑事たちと対立しつつ、職業人として犯罪捜査に当たっていく。

全話レビュー

1-1『右脳捜査官VSカリスマ犯』

ダイヤ強盗団と重要事件捜査班との対決。敵は単純なミスで証拠を残し、歯ごたえのある捜査が観られたかと言われるといま一歩。シリーズ初回としてインパクトがあったのは実はゴーレンでなくカーバー検事補の感情の欠片も見せない尋問。★★★

1-2『アートと詐欺とプライド』

美術絡みで2人死ぬ。これまた手の込んだ計画殺人。見どころは映像叙述トリックで、殺人現場にいた意外な人物が明らかになるとともに、アートの世界でもがき苦しむ辛、必死さが表現されている。ただ演技にもう少し迫力がほしい。 ★★★

1-3『依頼殺人のからくり』

親子問題モノ。薬に溺れた良家の息子、彼の恋人を殺したのは? 出てきた瞬間こいつが真犯人だと想像できるセオリー通りのオチで、ぐっとこない。原題Smotheredは窒息の意味に母親をかけていて巧いが、ネタバレじゃん! ★★★

1-4『祈りは誰のために』

貧者を救うべき教会で起きた貧困少年による殺人。そして容疑者自身が被害者に。教会の体質や養子制度、弁護士の巧妙な戦術など、真相を隠す要因はどれも面白そうだがいまいち掘り下げられず、人情噺的に終わった。それはそれでいいのだが。 ★★★

1-5『暴走する欲望』

ゴーレン先生のクズ人間追い込み漁。ギャンブルと麻薬と女に溺れ、次第に殺す快感を覚えたクズ弁護士。証拠が出ず証言も得られない状況で、心理トリックを使い犯人を追い詰めていく。じっくりと描かれるその工程にワクワク感はあるが、驚きは少ない。★★★★

1-6『消えた詐欺師』

ゴーレン先生、今回は詐欺師を釣るのまき。前半は上流階級の経済犯罪を描き緻密な推理ドラマが展開するが、後半で真の仕掛け人が現れるのは意表を突いた展開。流れも変わり飽きさせない。相手を罠にかけたゴーレンの顔の小憎らしいこと!★★★★

1-7『死の天使』

今回ゴーレンが釣り上げるのはポイズン・アイヴィ。病院の内部告発が毒物混入薬の存在を明らかにし、珍しく合同捜査本部で指揮するゴーレンが観られる。27分署の面々もゲスト出演。しかし話は結局こじんまりと終わり、テーマが見えず食い足りない。★★★

1-8『恩赦になった男』

新聞記者の死からマフィア、そして知事周辺のスキャンダルへ。スケール感が大きい分、率直に言えば、盛り上がり場をつかみ損ねたまま終わってしまった。最後の葛藤と余韻が弱いせいだろう。名前で呼ばれない謎の「知事」はリアリティを欠く。 ★★★

1-9『法廷での心理戦』

浮気のバレた整形外科医の妻が行方不明。さて、医師はセスナを飛ばしてどこで何をしたんでしょーか? というのが今回の問題。今回カーバー検事補の法廷での活躍が観られるが、論理的な追及でなく相手を激高させ自白を得る方法は新味がない。★★★

1-10『パーフェクトクライム』

金持ち一家の秘密、偏屈老人編。セーフルームにこもり窒息した銀行頭取は、誰に殺されたのか? タイトルどおり詰将棋を逆に説くような展開で飽きない。ただ推理ドラマとはいえ、なぜそこまで仕組めるのかの理由づけがもう少し欲しい。★★★★

1-11『第三の騎士』

産婦人科医を狙撃したスナイパーを追えのまき。シリーズ毎度おなじみ中絶反対派によるテロリズム。今作はこの社会問題に関して抜きんでた描写があるとは言いがたいが、やはりテーマがテーマだけにその辺の金持ちお家騒動エピより見応えがある。★★★★

1-12『ラストチャンス』

殺された医師は幼児性愛者? 偽りの正義感の裏にある哀れな欲望を暴く。犯人を落とすゴーレン節はピカいちにえげつない。その横に女性のイームズでなく冷徹なカーバー検事補を置いたのも、男の愚劣さを描くという意味で納得。スコダ先生登場!★★★

1-13『騙されたセレブ』

金持ち一家の秘密、ゴシップガール編……と思いきや話はマフィアが出てきて更に意外な方向に。展開は面白いが犯人が置かれた状況に対して殺人の動機が弱すぎ、いまいちピンとこない。肝心のヒロインのお顔がちょっと貧相なのは狙ってのことか。★★★

1-14『人間の皮を着た狼』

お題は殺人でなく誘拐事件。借金男の妻娘を誘拐した元セルビア民兵が妻の目前で娘に行う行為は最悪でおぞましく、表現もリアルなためインパクトが非常に強い。娘の現実否認の精神描写もリアル。謎解きの面白みは少ないが、忘れがたいエピ。★★★★

1-15『犯罪の第一法則』

法務助手を殺したのは誰だ? 二人の判事の意地の張り合いを刑事と検事がとっちめる。前話とは打って変わってコミカルさのある結末で、内容にバラエティが出てきた。しかしプロボクサーで小説家の叩き上げ判事は、物語に出すと逆に嘘くさい。★★★★

1-16『幸せな共犯者』

人生のすべてを偽ってきた男の運命を描く。マイケル・エマーソンが見事な表情で追い詰められた詐欺師を演じ、対峙するヴィンセント・ドノフリオも銃を突き付けられ一層弁舌の立つゴーレンの人格障害っぷりを見せつける。狂気VS狂気の緊迫感。★★★★

1-17『激怒型殺人事件』

殺人衝動と脳の障害の関係の研究のなかで、殺人者に好意を抱いてしまった女性。彼女もまた操られていたのか? 殺人犯と研究者の関係性を突き崩すのかと思いきや、医療研究そのものをトリックにした展開。この謎解きははっとさせられた。★★★★★

1-18『心の奥底にある欲望』

河原に棄てられた20年前の死体。誰がなぜいまここに? ディーキンス警部の絡むコールドケースものかと思いきやさほど絡まず、チェスマスターの真犯人との心理戦もさほどチェス要素は絡まず。もう少し踏み込んだ描写があれば。★★★

1-19『マフィアの娘』

金持ち一家の秘密、寮学校編。暴露本で父親を刑務所送りにしたマフィアの娘。今度は一体だれを裏切ったのか? 先の読めない展開は合理性の乏しいシナリオと表裏一体。殺人犯は大金持ちでマザコンでシスコンで女装癖? さすがに盛りすぎ。★★

1-20『警察官の誇り』

ヴァン・ビューレン警部補登場。彼女の教え子警官が行った汚職を追及する。立場の弱い黒人シングルマザーを無慈悲な殺人犯に仕立てたのが新鮮で、役者もそれに応えるパワフルな演技。それゆえラストの涙は、展開に必要であっても上滑り気味に感じる。★★★★

1-21『難病のベストセラー作家』

現代のヘレン・ケラーと呼ばれるASLの少女と、その養父母、編集者。殺したのは誰で、嘘をついているのは誰だ? 少女の存在が詐欺なのは最初からミエミエなのだから、ミステリを解く部分にもう少し丁々発止が無いと乗れない。★★★

1-22『失った記憶と偽証』

企業の不正決算を正そうとしていた女性社員に殺人の容疑が。彼女は事件当時の記憶を喪失していたが……? 謎めいた殺人に手の込んだ経済犯罪が重なり、重厚な謎解きが楽しめる。しかし殺人が実際どう行われたかは解明されず不満が残る。★★★★

シーズン12 まとめ

総ポイント数

76 / 110

平均

3.45

感想

Law&Order 第3のスピンオフシリーズは、犯罪捜査に焦点を絞った作品。いかに知能犯を尋問で落とすかが物語の見どころで、ゴーレン刑事のキャラクターに依存した作品となる。ゴーレンを演じるのは国内では『フルメタル・ジャケット』の"あの新兵"で知られるヴィンセント・ドノフリオ。今シーズンでもそのメンタルな言動は端々に観られるが、それが深刻化するのはこれから。

社会派的な要素を強く打ち出したオリジナルシリーズとは異なり、犯罪捜査の謎解きを楽しむシリーズだから、率直に言えばまだ観ていてどう楽しむべきか迷うところがある。捜査だけだとどうしても間延びして感じるのも確か。しかし後半はシナリオもオリジナリティのあるものが増え、かなり楽しめるようになってきた。特に役者の演技が見ものの16話、謎解きに驚きのある17話は印象深い。また14話も、オリジナルシリーズほどではないが戦争犯罪問題と絡めた社会性のあるエピで、その衝撃的な描写は忘れられない。主役はあくまでゴーレンだが、時に彼を上回って怪物的に見えるカーバー検事補にも、活躍の機会がほしい。