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『ロックアウト』映画感想 - リュック・ベッソン堂々のダメSFっぷり!

リュック・ベッソンの、宇宙刑務所からの脱出を描くSFアクション。いやーダメ映画だった! いくらユル系アクションったって限度があるわよ。

なにが Based on Luc Besson's Idea だ!

f:id:debabocho:20121123162115j:plainいや、ちょっと面白いかな、と思ったんですよ予告編観て。2079年という近未来と遠未来の境界線上で、現代と同じ社会制度が保たれている世界観。そのうえで宇宙、低軌道上でアクションをやってみせる。

宇宙刑務所というありがちなアイディアで、B級だとわかっていても、コレ、ちょっと面白いSFが観られるかな? と思うわけ。ほら、ベッソンて基本バカアクション監督だけど、たまーに真面目な作品もやってくれるじゃない?

ところがやっぱダメだった。わかってたのに……。『フィフス・エレメント』で、ベッソンの “アイディア” は中学生のまんま停まってるってわかってたのに……。

こういうたのしいアクションは、むしろSF設定をガチに詰めてこそスリルもサスペンスも盛り上がる舞台ができあがるんだと思う。リアルだからこそ思いもよらない障害が生まれるし、テキトーに設定しちゃうと、障害もご都合主義的になっちゃう。

舞台づくりをテキトーにしたこの映画は、SFならではの、いちばん美味しいところを逃しちゃってる。

着の身着のまま大気圏突入

まず『2001年宇宙の旅』のリスペクトっぽい絵が出たとおもったのに、軌道刑務所は遠心重力じゃなくて安易な“人工重力”。でも宇宙に上がるのは昔ながらのブースターつきスペースシャトル。このへんで既にイラ~っとくる。

んで宇宙に上がって着いたところは“警察署”なのに、出てくる戦闘戦闘機は“米国海兵隊”。ちなみに主人公はCIA。警護する相手は大統領のひとり娘。SF以前に、どうなってんだこの世界観。

極め付けはクライマックス。刑務所から宇宙服で地球に“落下”、文字通りエアロックからストン!と落ちる。そのまま大気圏突入して、大気上層で宇宙服を脱いでパラシュート落下(ど・こ・で・着けたんだ!)。そんで着陸点はたまたまニューヨークでパトカーに囲まれ即タイホ。なんてスケール感の無さ……。

アクションじたいは普通の出来かもしれない。でもSF設定を物凄くムダ使いしたせいで、サスペンスがすごーく小ぢんまりしちゃってると思うんだ。

ガイ・ピアースさん二択です:ダメ映画に出るか、ダメ人間を演るか

ダメといえば、ことしはガイ・ピアースの当たり年だ。去年の『英国王のスピーチ』でのダメ王子役から、流れるように大傑作バカ映画『プロメテウス』の気ちがいダメ老人役。そしてこのダメ映画。見事なダメコンボ。考えてみれば過去に主役を張ったSF映画『タイム・マシン』も、素晴らしいダメ映画だった。

本作の楽しみどころと言えば、そんなガイ・ピアースの皮肉たっぷりのセリフと、鼻っ柱の強い大統領の娘マギー・グレースのかけあいぐらいなのかもしれない。あと宇宙戦闘機がちょっとソルバルウとかコア・ファイターみたいなデザインなのも。

映画としての、根本的な不安

さいごに、この映画、オチがまともについてない。結局映画をひっぱった“陰謀”とはなんだったのか、どうケリをつけるのか、そして真の悪役はどうなるのか、まったくウヤムヤなまま、終ってる。いくら過程のアクションが目的とはいえ、この投げっぱなしはいかんだろ。

まさかベッソンめ、あわよくば続編を狙ってるんじゃなかろうな。現にこんなダメ映画が全国ロードショーされちゃうぐらいには、ヤツの会社、エウロパ社は資金集めが巧いのだ。とんだ口車だよまったく。