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Gaao Line's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

マネーモンスター

韓国映画『テロ、ライブ』は、ラジオニュースのキャスターが生放送中に爆弾を仕込まれ、犯人と丁々発止のやりとりをしていくワン・シチュエーションの映画だった。『マネーモンスター』はこれとほぼ同様のシチュエーションなんだけど、ここに金融を絡めるとこんなに面白くなるんだ!

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株取引って世界中の投資家・トレーダーが絡むわけで、テレビの外の世界への広がり、インタラクティビティが、すごくダイナミックに小さなスタジオと影響しあう。このアイディアで、『マネーモンスター』には『テロ、ライブ』の単なる二番煎じでない、スリルと笑い、そしてわけのわからん感動が生まれた。

序盤の大盛り上がりシーンがまさにそれ。株の暴落で全財産を失った爆弾魔の気を静めるには、株価を上げればいい! ということで、アルゴリズムが支配する最もドライなマネーの世界で、「人々の心」に訴えて公開で株価を上げようとするシーンは、ものすごい滑稽でシニカルなんだけど、同時にものすごく感動してしまった。そんな感動している自分がアホに感じられて、それがまた面白い。もちろんその後のオチもすばらしい。状況のコントラストが凄まじいだけに、最初から感動ありきのヒューマン映画よりも、笑いも感動も増幅される。

その後も通常の人質劇を裏切るようなシーンが続々で、悲しいのに大爆笑みたいな感動もある。ほんとうにシチュエーションの作り方がうまくて、最後の謎解きを踏まえたクライマックスが、むしろ平凡に思えてしまうほど。そして映画は、ドライに、とてもドライに終わる。終わってみれば確かに、金融という冷酷な怪物の存在感が感じられる、良い映画だった。怪物は人の意思の集合体だ。

 

翻訳は風間陵平せんせい。金融用語をうまくコンパクトにまとめるのは、ドキュメンタリーのそれに近い。韻を踏んだラップの翻訳もあり、こちらも楽しめました。

 

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