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Gaao Line's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

『オールド・ボーイ』(米国版)映画感想

日本の漫画『オールドボーイ - ルーズ戦記』(土屋バロン)を原作とした韓国版『オールド・ボーイ』(パク・チャヌク監督)を観たのは10年前。物語の衝撃的な真相と引っ掛かりの多い演出、「餃子は完全栄養食」というイメージが記憶にこびりついてる。今回スパイク・リーの更なるリメイク版でどうなるのかと思ったら、意外なことに、筋書きはけっこう同じじゃん、コレ。

あらすじ

クソみたいなビジネスマンのジョーは、酔っぱらってゲロまみれになり気が付くと監禁されていた。それから20年。密室で餃子だけ食べて生まれ変わったジョーは、突如解放される。誰が何のために、彼を監禁し、解放したのか……?

感想

スッキリしたプロット

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パク・チャヌクの『オールド・ボーイ』はすごく面白かったんだけれど、演出になんというか、引っ掛かりの多い作品だった。比喩の込め方とか、不思議な描き方が多かったような……。うすぼんやりした記憶だけど……。

で、スパイク・リーの『オールド・ボーイ』は、基本的なプロットは同じなんだけれど、この引っ掛かりが凄く少ない。明快なサスペンス調の音楽に乗って、立ち止まることなく、次々と謎が立ち昇り、解明し、ゴールに導かれていく。

短い時間に物語をぎゅっとつめたので、アクションシーン、拷問シーン、そしてエロシーンも、それぞれ1か所、こってり濃密に楽しめる。まるで『ファイナルファイト』みたいなワンカット横スクロールアクション、サミュエル・ジャクソンのマザファッカ&命乞い芸、そして「オルセン姉妹の妹」(あの双子にさらに妹がいたんですねえ)の堰を切ったようなセックスも……これはぼかしもたっぷりでちょっとヤキモキ。見せようよ!

明確になったテーマ

そぎ落とされ引き締まった物語の展開は、なにより、この不条理な事件全体の輪郭を明確にしたと思う。原作漫画はバブル崩壊後の日本の世相を絡めた人間論のようなものだったけれど、キリスト教受容度の高い韓国を経てアメリカに渡った本作では、テーマに人智を超えた罪と罰を見ることができる。

主人公が明確に、倫理的に堕落した人間と設定されたこと。同時に、監禁の原因となった事件も反倫理的な過激度が上積みされたこと。このふたつは、主人公が不条理に“巻き込まれちゃった”感を際立たせることになった。またエンディングでそれが一種の神罰であるとわかったとき、彼の見せるやるせなさ、哀しさが、迷いなくぐっと胸に迫ってくる。

これには本作特有の、プロジェクターや特殊効果で画面に別の絵を重ね合わせて、人の心に去来するものを見せる手法が効いてくる。終わってみれば、実にアメリカ映画らしい、手堅くも重い感動の得られる作品だった。

 

字幕は岡田壯平せんせい。泣かせどころでキッチリほろりと泣かせる字幕。