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Gaao Line's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

『アウトレイジ』映画感想 - バカ映画

日本映画なんて最近は『おくりびと』すら観てないのに、たけし映画だけは、なぜだか観てしまう。

あの色が好きなんだ。あの乾いた空の色。足立区だろうがロスアンゼルスだろうが、場所も季節も関係なく、たけし映画フィルターを通すと、おんなじような、痩せた土地になってしまう。今回も茨城の、風力発電所の巨大な風車が回る海岸の色が素晴らしかった。21世紀になって出現したある意味未来的な光景。ダイナミックな動きのある魅力的な背景。それが、なにかつまらないモノのように見えてしまう。素敵だ。

映画は、バカの滅亡を描いた物語だった。

人間、社会に出てなにが辛いって、自分が馬鹿であることを自覚してしまえることだ。巧く立ち回れず、限られたことしかできず、ままならない人生。自分より頭のいい奴等が、賢い事をやっていて、それが理解できない、理解しても一歩遅い、そんな自分を自覚できる。

主人公たちは、馬鹿を自覚したヤクザの軍団だった。馬鹿だから、馬鹿みたいなことしかできない。あーあ、と半分諦めながら、自滅の道をたどっていく。馬鹿であることの鬱憤をアウトレイジさせながら。シチュエーションも暴力の描写も、コントかってぐらい馬鹿々々しいものが多かったんだが、ほんと、馬鹿の物語なんだから仕方ない。単純に笑って、そこに共感はあっても、湿っぽい同情なんかない。はー、馬鹿だなあ、ちくしょう。いい映画だった。

実力派の役者に囲まれた主役のビートたけしは、ところがきちんと自分の居場所を得た演技だったと思う。あの無力感にあふれたシニカルな顔は、観てるだけでこちらも無力な笑いが漏れてしまう。あと椎名桔平の濡れ場は、どこでどこを擦ってどうキモチイイかが想像できるイイものだった。

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