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レイ・ドノヴァン ザ・フィクサー シーズン3: シーズンレビュー&おすすめエピソード

レイ・ドノヴァン 第3シーズン 各エピソードガイドはこちら。

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レビュー

『レイ・ドノヴァン』はその世界観に強い一貫性を持ったシリーズだけれど、毎シーズンけっこう趣向を変えてくる。今回はフィニーという大きな存在が、非常に大きな物語の軸としてあった。そのわきで、ジジイやテリー、バンチー、ブリジットのプロットが、あまり相互に交わることなく進んでいくかたちだ。

今シーズンは第2シーズン以上に、主要なキャラのプロットが交わらず、扱いが小さい。ほぼ独立した物語だ。ここに当初は少々の不満を感じてしまった。ところが最終回の前の第11話が終わった時、実はこれも、今回の大きな趣向だったんだろうなと思い直すことになった。極端に言ってしまえば、今シーズンは実はメインプロットのはずのレイとフィニーの物語は実際はサブプロットで、各個に走っていた家族のプロットの束こそ、メインプロットだったのだ。

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フィニーのプロットは物語、孤独に陥りかけたレイを成長させ、物語の真の目的を達成させるための障害でしかなく、その障害は、最終話の1話前に取り除かれる。フィニーの問題を決着させることは、そして最終話、真のクライマックスで、レイはこれまで背景で語られてきた家族のプロット、家族の問題を、すべてまとめて受け受けて、なんとか解決する。つまるところ、レイ・ドノヴァンの一貫したテーマ、守るべき家族に収束する。

どのシーズンも、どんなにひどい家族の状況であっても、レイはなんとかそれを守ろうとしてきた。第2シーズンではそれが複雑に絡み合いながら進んできたけれど、第3シーズンは分断して描き、最後の最後にガツンとまとめ上げた。

そしてジジイだ。ジジイはこの家族のプロットの中でも、かなり大きな扱いになっている。何しろ最後のアクションシーンはすべて、ジジイに懸かっているんだから。あらゆるモノをダメにして、あらゆる人に迷惑(と呼べるレベルではないひどい事)をかけ続けたジジイ。レイは彼をなんとか退けようとしつつも、やはり、どこかで見放せないのだ。

ゆがんだ家族の象徴であるフィニー家に支配され、そこで得た経験で無意識のうちに何かを悟り、決心したレイ。そして彼は、分解寸前の自分の家族を救うため奔走する。神にすがって、個人として守り通してきた過去の恥辱をさらけ出しても、ドノヴァン一家を守る。ダークでハードボイルドでバイオレンスな物語をいろいろ引っぺがしてみると、結局、そんなシンプルな構造が見えてくる。

おすすめエピソード

今回のおすすめエピは、なんといっても第10話。第2シーズンでさんざん笑わせてくれた元FBI支局長がまさかの再登場を果たし、キーキャラクターとしてレイを引っ掻き回す。このエピソードではそんな彼とのやり取りがユーモアたっぷりで、一方ジジイのプロットでは相当なバイオレンスが楽しめる。レイ・ドノヴァンの面白さが濃縮された一話だ。

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