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ハウス・オブ・カード 第1話:海外ドラマレビュー

『ハウス・オブ・カード ~野望の階段~』は、同名小説およびイギリスBBCのミニシリーズを翻案したアメリカのテレビシリーズ。ジョージ・クルーニー主演映画『スーパーテューズディ』の原作者、ボー・ウィリモンが再びワシントン政治の神髄を描く。

エピソードガイド

レビューリンク

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第1話あらすじ

民主党の大統領候補ギャレット・ウォーカーの参謀として彼を勝利に導き、国務長官の座を約束されたはずの下院議員フランシス(フランク)・J・アンダーウッドは、自分が選んだ大統領首席補佐官リンダ・ヴァスケスから、逆に国務長官候補から外されたことを伝えられる。彼は、信頼する妻のクレア、腹心のダグ・スタンパーと共に、自分を裏切ったホワイトハウスの者たちへの復讐を開始する。

一方、ワシントンヘラルド紙の新人記者ゾーイ・バーンズは、手柄を得るためにフランクに近づく。フランクは彼女を利用し政治の内情をリークすることで、ホワイトハウスをかき乱し、自分の影響力を強める戦略に出る。彼は手始めに大統領の政策の要である教育法案を、ゾーイにリークする……。

レビュー

概要:実にテレビらしい演出、テンポ

f:id:debabocho:20131012123114j:plain政治ドラマが大好物な自分としては、見逃せないこのシリーズ。期待通りの出だしで大満足。いいもの観られた時の笑いが止まらなかった。

ディビッド・フィンチャー監督、ケヴィン・スペイシー主演と、大物の名前が躍る。こういう布陣だと「映画のような」とよく言われるけれど、複数のキャラクターが絡み合っていくクィーキーな展開、主人公が視聴者に向けてモノローグを語る手法など、これまで様々なテレビ作品で培われてきた演出手法をぞんぶん活かした作品だ。そのスタイルは同じ大統領府を描いた『ザ・ホワイトハウス』より、法廷スリラーの『ダメージ』を思わせる。

映像は暗く陰鬱な感じだけれど、流れはスピーディ。テンポよくシーンが切り替わり、話がグイグイ進んでいく。第1話だからこれからの種まきもあり、登場人物が掴みきれない部分もあったものの、肝心のシナリオはちゃんと1話完結になっていて、かつ第2話に向けた広がりを感じさせるいい終わり方。

舞台を政治の中に納めず、カウンターパートに新聞記者を置いたのも巧い。デンマークの政治ドラマの傑作『コペンハーゲン』と同じく、キャラの年齢や個性に幅が出るし、状況を外から俯瞰するのにも役立つ。

見どころ:重厚さとシャープさの激しいコンビネーション

ガツっと胸をつかまれたのは、前半で主人公フランクと新聞記者ゾーイ・バーンズとの絡みが始まるところまでの状況説明をキチっと終え、フランクと妻のクレアが歌劇を鑑賞するシーンだ。

劇場で壮大な音楽が始まり、続くかと思うと、一転、フランクが家でFPSの戦争ゲームに熱中するシーンに切り替わる。彼の意外なストレス発散の趣味だ。この画面の落差、壮大さとシャープさのコンビネーションが、これから始まる激しい復讐劇を予感させ、素晴らしかった。

そして終局、陰湿な復讐の第一歩を成功裏に終わらせ、町はずれの薄汚いバーベキューハウスで朝からスペアリブをかぶりつくフランク。これも落差の演出だ。彼の南部出身の気質が明明確になり、ほくそ笑む彼に、すっかり虜になってしまった。

 

ところでこのドラマ、日本では イマジカBSが5.1チャネル音声で放送を始めたのだけれど、最初に流されたのはスマホ向けメディアのNOTTVだ。もともと米国ネット配信サービスのオリジナル作品だし、スマホの解像度も十分上がっているといはいえ、こういう重厚な物語、精細な映像のドラマをスマホで楽しめってのは、ちょっと的はずれなやりかたじゃないかなと思う。

 

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