Twitterを使った『新スタートレック(スタートレック:ザ・ネクスト・ジェネレーション)』おおよそ140文字エピソードガイド&感想、第5シーズン。
あらすじ
クリンゴン帝国政変の陰にあったロミュラン帝国の陰謀を、艦隊を率い砕いたエンタープライズ号のクルーたち。彼らは再び探査航海を続ながら、ときに巨大国家間の圧政に苦しむ人々の現実と向き合っていく。カーデシア連合に併合された惑星ベイジョーの難民たちも、そのひとつだった。ここでエンタープライズは、ベイジョー人の新たなクルー、ロー・ラレン少尉を迎える。また、スポック大使のロミュラン帝国への亡命に際しては、潜入調査でロミュラスにある反政府勢力の現実を知る。
様々な異文明との接触を通し、倫理的な問題と直面するクルーたち。完璧に設計されたが故に異端が許されぬ社会、同性愛が当たり前の社会でおこる異性愛への迫害、集団知性から外れ「個」として生きるボーグ。どれもが完全な解決を得られず、しかし僅かな希望を得ながら、艦は深宇宙を進む。そんな中、ピカードはひとつの文明と巡り合う。それは、彼の人生を変える出会いとなる……。
エピソード・レビュー
5‐1『クリンゴン帝国の危機 後編』
こんどは戦争だ! クリンゴンの戦争文化とウォーフの戸惑いを描きつつ、主題はターシャの娘率いるロミュランとピカード艦隊の駆け引きに。初めての艦で指揮を執るデータの顔の演技にゾクゾク来る! ただ見どころが多くラストは尺不足。★★★★
5‐2『謎のタマリアン人』
謎の言語を持つ種族「タマーの息子たち」と意思疎通を試みるピカードたち。シンプルだが言語と神話の意味に迫る傑作。特異な種族と巡り合い、謎を解き、相互理解に至る。その極上のエッセンスがこの物語にある。これぞスタートレック、これぞSF!★★★★★
5-3『流浪のベイジョー星人』
40年間異星人に支配され続けてきた民族がテロを始め、連邦にまで被害が。傍観者だったはずの連邦に罪はあるのか? 現実的な問題を突きつけるエピ。英語版で見るとロー少尉の演技が素晴らしく、最後のシーンは思わずホロリと来る。★★★★
5-4『殺戮の宇宙水晶体』
人類を餌としか認識しない捕食生物に「復讐」する権利は、果たして人間にあるのか? 息子を殺された老科学者の感情を、データ少佐との対話を通してひも解く。人はどこまで合理主義を貫けるのか、TNGの倫理問題エピの極北。それゆえ構成に難あり。★★★
5‐5『エンタープライズ・パニック』
量子繊維と衝突し漂流する艦内で、分断されたクルーたちがサバイバルを始める。その苦闘をオムニバス的に描く異色作。首だけデータ少佐あり、ウォーフの助産夫ありとバラエティ豊かで楽しい。状況劇でテーマは薄いがキャラが活きている。★★★★
5-6『エイリアン・ゲーム』
異星人の携帯ゲームにクルーが洗脳されていく、正直安易で面白みに欠けるエピ。ウェスリーが憎いわけじゃないが、彼のキャラが物語で空回りしている部分はあるだろう。ちゃっかりガールフレンドにキスして帰るウェスにはほっこり。★★
5-7『潜入! ロミュラン帝国 前編』
スポック登場の前編。サレクの再登場にデータとピカードの潜入劇、残りのメンバーにも別プロットが与えられる。率直に言えば、それほどエキサイティングではないプロットをスポック登場のバリューだけで引っ張っている感がある。★★★
5-8『潜入!ロミュラン帝国 後編』
ロミュラン帝都でピカード、データ、スポックがバルカン・ロミュラン統一に動く。一方ライカーらは酒場で謎解き。アンバランスなダブルプロットは巧く盛り上がらない。スポックもシーラも出ているからこそ、評価はどうしても厳しくなる。★★★
5-9『26世紀のタイムトラベラー』
時間跳躍者の冒険の結末部分を、部外者の立場で眺めるといった趣の物語。その構造は面白いがやはり話が膨らまない。エンタープライズが惑星規模の天候制御を行うというのも大きなSFで面白いが、中途半端でサスペンスが足りない。残念。★★
5-10『新ワープ航法ソリトン・ウェーブ』
地球暮らしに馴染めないアレグザンダーが艦に来て、突如父となったウォーフの奮闘。アレグザンダーが絶滅危惧種ギルボに共感する部分など、もっと深く見たかった。ジョーディとウェーブ開発者、技術者同士の連帯はささやかだが良し。★★★
5-11『暗黒星団の謎』
船の難破で独り生き残った少年。彼の心の闇をデータは解放できるのか? またデータ人気に当て込んだエピかと思ったが、心理的トラウマを負った少年と、人間性を求めるデータとの心の交流はほろりと来るものがある。全体としては見せ場不足で冗長ぎみ。★★★
5-12『記憶侵入者ユリア星人』
レイプ犯罪をテーマとしたエピ。当時の基準では直接描きづらかったろう題材を、テレパシーによる精神汚染に仮託して描く。だがプロットは単純で、テレパス犯罪も単純比喩に等しく発想の飛躍が見られない。テーマの消化に手こずったか。★★
5-13『遺伝子操作惑星』
完全に設計された植民地惑星にせまる中性子星の破片。住民避難のため外交官として派遣されたディアナと植民地リーダーとの恋愛が、ひとつの社会の滅びと変化を映し出す。しっとりした演技で印象的なカットも多いが、反面テンポが遅すぎとも。★★★
5-14『謎めいた記憶喪失』
リシアとの戦争状態にある連邦。敵本星への攻撃は成功するか? 全員が記憶喪失にされ操られるというシリアスな状況だが、普段のキャラどうしの関係性を逸脱したコメディ要素が強く、最後まで盛り上がる。ライカーが久々クズっぷりを発揮。★★★★
5-15『亡霊反逆者』
クルーに霊が憑依した! しかもやたらアクティブで暴力的な奴が! 大人しい役柄のキャストに思いきり凶悪な演技をさせようというエピ。そう割り切ればこれがめっぽう面白い。しかしデータ少佐はウィルス感染も憑霊もするのか。高性能なアンドロイドだ。★★★★
5-16『神経医療エキスパート ドクター・ラッセル』
半身不随となったウォーフを巡り医療の倫理、そして自殺の倫理が問われる。現代の倫理をなぞって述べるだけの展開で、SFだから見えてくる何かがない。ウォーフの怪我の原因が戦闘でなく単なる事故というのは妙にリアル。★★★
5-17『両性具有ジェナイ人』
ライカーと恋に落ちたソランは、両性具有種族の社会では忌避される「片性」だった。同性愛問題に正面から取り組んだ作品。物語の構成はとても巧いとはいえないが、その気高き主張はまさに傑作。中盤の演説とあまりに救いのない結末に胸が詰まる。★★★★★
5-18『恐怖の宇宙時間連続体』
お題は時間ループ。衝撃のオープニングからミステリアスな序盤、そして知恵と科学で問題を解決するプロセスと、見事なSFストーリー! こういうシナリオが味わえるからやめられない。ポーカーのランダム性をネタに使っているのも巧い。★★★★★
5-19『悲しみのアカデミー卒業式』
士官候補生ウェスリーを主人公にした「敗戦処理」の物語。事実を受け入れ、相対的な善悪ではなく己の信ずる正義を貫くことができるのかという倫理の葛藤が語られる。重苦しく盛り上がりにも欠けるが、いつの時代も必要とされる物語。★★★★
5-20『ラクサナの結婚』
親に縛られるアレクサンダーと、孤独ゆえに望まぬ相手との結婚を進めるラクサナ。二人の会話が人生の意義を浮かび上がる……ハズだが不明瞭。ラクサナはテレパシーも使わず単なる中年女性扱い、サブプロットはメインに全く絡まず一体感がない。残念。★★
5-21『究極のパートナー』
ファムケ・ヤンセン出演。あらゆる男の理想の相手となるよう性格を変え、フェロモンで引き寄せる究極の「女」。これほどのアンチフェミニズム的な存在を登場させ、その女性に実存は、魂はあるのかと問いかける。その表現は成功かといわれると……迷作。★★
5-22『イマジナリィ・フレンド』
少女の空想上の友達が実体化する、なんとホラーストーリー。そのテーマは、未知の生命体が子供の視点で人類社会を見たら? というものだが、表現方法は弱いしSF性にも欠け、中途半端なホラーで終わる。空想少女の演技は凄みがあるのだが。★★
5-23『ボーグ“ナンバー・スリー”』
捕獲された一体のボーグ。彼が自我を獲得していく中で、ボーグに苦しめられた者たちも葛藤する。起伏に富む物語とは言えないが、人の価値観の転換を描く会話劇として見応えあり。ピカードと対面し微かに震えるボーグの繊細な演技は感動。★★★★
5-24『転送事故の謎』
ラフォージとローがあの世に? びっくり転送事故の謎を解けの巻。そこそこスペクタクルだし映像的にも面白みがあるのに、いまいち乗れない。SFにおいて設定の詰めの甘さは物語の詰めの甘さに直結する。相転移した人間は何を呼吸するの? 重力は?★★★
5-25『超時空惑星カターン』
謎のプローブと精神リンクしたピカード。気づくと彼は別の惑星にいた。彼の人生は、そして惑星はどうなるのか? わずか42分で数十年の時を描き、最後には驚きと感涙の真相、この上なく詩的なロケットの打ち上げシーンが待っている。大傑作SF。★★★★★
5-26『タイム・スリップ・エイリアン 前編』
地球でデータ少佐の生首が出土した! 衝撃のスタートから始まるシリーズ初の本格タイムトラベルエピ。過去編はガイナンを効果的に使い、軽妙なやり取りが楽しめるが、シナリオの密度は薄いとも。首の謎は効果的。果たしてどうなるか。★★★★
まとめ
総ポイント数
88 / 130
平均
3.38
感想
思った以上に2点の多い結果となってしまった。これらのエピは、いずれもSFの視点で現代的な倫理の問題に取り組んだ物語。描きたいテーマの掘り下げができていても、どうしてもシナリオの完成度が今一歩という作品が多かったのは事実。だがシナリオがイマイチでも、『両性具有ジュナイ人』のようにテーマのインパクトがあまりに強いものは、高評価となるわけで、結局は「のるかそるか」。2点をつけた作品も、人によってはずっしりと心に響く傑作となったものがあるだろう。
シーズンプレミア直後の『謎のタマリアン人』、フィナーレ直前の『超時空惑星カターン』の2話は、どちらも極上のSF作品となっていて、シーズン通しての満足度は高く感じる。これは構成の妙。哲学的テーマより純粋なSF性を楽しめるエピとしては、『恐怖の宇宙時間連続体』が出色の出来だった。
メモ
7話、定訳の「長寿と繁栄を」を「平和ととこしえの命を」にしたのは、セリフの尺の都合もあろうし、新訳を与えたかったという意図も見えるし、苦労したんだろうなあ。
21話、エンタープライズにイルカが乗船していることが明示された珍しいエピソード。『亡霊戦艦エンタープライズC』には「鯨類作戦室」というセリフがあり、公式資料扱いのエンタープライズD ブループリント(設計図)には知的水棲生物用の通路や部屋が描かれている。原生イルカか、知性化イルカか、それとも異星鯨類か、とにかくエンタープライズDには知性をもったイルカが乗船している。