farsite / 圏外日誌

Gaao Line's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

X-ファイル シーズン1: 海外ドラマ全話レビュー

 Twitterを使った『X-Files』おおよそ140文字エピソードガイド&感想、第1シーズン。

あらすじ

f:id:debabocho:20140919221727p:plain

FBIの新鋭捜査官ダナ・スカリーは、突然の異動でフォックス・モルダーとのコンビを組むことになる。プロファイリング能力で多くの難事件を解決してきたモルダー捜査官だが、局内に残された『X-ファイル』と呼ばれる未解決の怪奇事件の調査に没頭し、変人と呼ばれていた。医師免許を持つスカリーは、彼のお目付け役とされたのだ。

モルダーは幼いころ、彼の妹が目の前で突如失踪するという事件に遭っており、彼はそれが異星人による拉致だと考えていた。彼はその証拠を得るため、ディープ・スロートとあだ名される謎のエージェントから極秘の支援を受けながら、全米各地で起きる様々な怪事件に取り組んでいく。当初は怪現象そのものに否定的だったスカリーも、モルダーとの捜査や、彼女の父の死に際しての体験を通して、すこしずつ理解を示すようになる。

異星人の存在を暴こうとする二人の行動は、別のエージェント「煙草を吸う男」によって監視されていた。政府と異星人の関係を秘匿しようとする彼らの妨害により、捜査はたびたび壁にぶつかる。二人が困難を乗り越え、ついに異星人存在の確固たる証拠を得たとき、妨害勢力の力はディープ・スロートの予想を超えて、二人に襲いかかる……。 

レビューリンク

| Index | シーズン1 | シーズン2 | シーズン3 | シーズン4 | シーズン5 | シーズン6 | シーズン7 | シーズン8 | シーズン9 | シーズン10 |

 

エピソード・レビュー

1-1『序章』

正確にはパイロット版の第0話で、まだ音楽も決まってない。当時のUFO譚で観られる様々な描写をうまく映像化して詰め込んだプロットだが、その分起承転結が明確でなく、物語の充実感は少ない。ただモルダー&スカリーの掛け合いはいきなり完成の域。★★★

1-2『ディープ・スロート

本シリーズの基本フォーマットは、起:事件の調査に出向く、承: 謎の現象に遭う、転: 謎の攻撃に遭い逃げる、結: 謎が部分的に解け決着。これを整理してきっちりやり遂げたのが今回。かなり分かり易い内容で観る側も楽しむ“コツ”が判る。★★★★

1-3『スクィーズ

ミュータントもの。30年おきの連続殺人は誰の仕業か? 犯人の正体が早々に判り、しかもそれほど怪異でないため(いや通常の観点からは十分異形なんだが)音効頼りの間延びしたサスペンスに見えてしまう。コールドケースものの観点を加えたのは面白いのだが。★★

1-4『導管』

モルダーの妹の失踪をなぞるような事件を追うUFOアブダクションもの。シンプルな筋書きだけど、失踪者の弟の能力にインパクトがあり飽きないし、物語はモルダーの妹への思いに帰結するので共感も得やすい。ただ白い狼の登場は、ちょっとファンタジーだよね。★★★

1-5『ジャージーデビル』

怪物伝承もの。これまた米国東海岸のもっとも古典的な都市伝説を「科学的に」解明するというクラシックな筋書。単なるモンスターが、次第に生物学的な裏付けを得ていき、それが驚きに繋がる。が、そこにスカリーのテーマがうまく絡まず今一歩。★★★

1-6『影』

幽霊譚。お決まりの“科学的な”解明も驚きもなく、念力的な物理能力を発揮する幽霊が女性にとりついているという話。シナリオは企業不正と絡んだ復讐話になっててけっこう面白い。モルダー&スカリー、けっこう初期からデートっぽいことしてるんだな。★★★

1-7『機械の中のゴースト』

意志を持つコンピューターをホラーの枠組みで描く。ネタとしてはSFでやり尽くされている感があるが、それが1993年の時点で現代劇としてリアリティを持ったことに意味があるんだろう。モルダー&スカリーはFBIのドラえもん的ポジションだ。★★

1-8『氷』

人間を操る謎の病原体をネタに、アラスカで密室ホラー・サスペンスを繰り広げる。古典的な状況劇をSF風味でうまく味付け。セクシーシーンもきちんと織り込んでくるのはさすが。オチも病原体の生存本能を活かした風だが、都合よく全滅するのはさすがにご都合主義か。★★★

1-9『宇宙』

火星の人面石をネタにしようとしたものの如何せん無理筋だったようで、できたのは火星に関係なく元宇宙飛行士が宇宙の霊に取りつかれてシャトルがてんやわんやというお話。それでも展開に緊迫感が出たのは一重にシャトルミッションそのもののリアリティのおかげ。★★★

1-10『堕ちた天使』

本筋のUFO陰謀モノ。軍が囲うUFO墜落現場でモルダーと友人となったUFOマニアの失踪を追う。物語は政府の巨大な壁にぶち当たって終わるという王道のパターンだが、アクションの密度は高く、真実の追及に熱くなるモルダーのキャラも活きてる。★★★

1-11『イヴ』

キャトル・ミューテーションかと思いきや政府の遺伝子実験の絡むアンファン・テリブルもの。CGではなく双子を使ったクローン人間描写が時代を感じさせる。筋書はともかく子供の不気味さはきっちり出てる。政府の闇を描くならもう少し描写に広がりが欲しい。★★★

1-12『炎』

パイロキネシスサイコキラーという極上にアブないキャラを、後に『スーパーナチュラル』のクラウリーなどを演じるマーク・シェパードが好演、ラストシーンは印象深い。炎を使った特撮も上出来。モルダーの昔の恋人とスカリーとの鞘当てがもう少しあれば。 ★★★★

1-13『海の彼方に』

事件現場を透視する霊能力者の死刑囚との対話。モルダーが否定しスカリーは信じる「逆パターンもの」の記念すべき第一回。派手さはないが、「超常現象を信じるか」という基本的なテーマがぐっと掘り下げられている。死刑囚役の涙の演技もリアルで素晴らしい。★★★★

1-14『性を曲げるもの』

ミュータントもの。セックス狂の犯人は男なのか女のか? 正体を探るため、彼の故郷を尋ねると……。状況がどんどんエスカレートしていくSF独特のドライブ感が楽しい。最後、怪しい奴らは大体UFOと友達というオチはもはやすがすがしいレベル。★★★★

1-15『ラザロ』

臨死現象をマクラに、死んだと思ったら捜査官の体に蘇生しちゃった犯罪者と戦うお話し。科学的な追及はなく、ほぼサイコキラーとスカリーとのサスペンス。モルダーがきちんとFBIらしい捜査の陣頭指揮を執ってるのが妙にまぶしい。★★★

1-16『再生』

ミュータントネタ。老人症の研究による不老不死実験の結果、何がどうなったか極悪犯罪者が若返ってしまいモルダーに復讐を挑む。番組のフォーマットとはいえ、さすがに凶悪犯が超能力を獲得するネタは飽きてきた。モルダーとスカリーのドラマも新味が無い。 ★★★

1-17『E.B.E.』

本筋の異星人と政府の陰謀モノ。ローンガンメン初登場。物語は5分おきにキツネにつままれるようなわけのわからなさだが、そのまま最後まで突っ走るんだから凄い。「何が真実かわからない」というある意味メタなテーマを据えたからこそできる曲芸展開。 ★★★★

1-18『奇跡の人』

社会問題となっていた新興宗派の偽奇跡を用いた伝道活動が題材。もしインチキでなく本当に奇跡を起こせてしまう人がいたら、どうなるのか? そんなSF的思弁なのだが巧く掘り下げられず、全体的にもやっとした人間描写が続き、不思議な話、で終わってしまう。★★

1-19『変形』

怪物伝承もの。精霊“マニトウ”の謎を追う。物珍しいのはアメリカンインディアンという一点で、サスペンスやホラーとしては展開がスローだし、推理ドラマとしては犯人が分かりやすすぎる。かつての同名B級ホラー映画のくびきは逃れられなかった。★★

1-20『闇』

大森林という密室で始まるモンスター・ホラー。閉じ込められた者同士の反目も通信機が使えなくなるところも定石通りといった感じ。ただ“虫”という性質上SFXのインパクトが今一歩。物語ももう一人二人キャラが多ければ盛り上がったのでは。無いものねだりだが。★★★

1-21『続スクィーズ

逮捕された怪人が法に従い裁判にかけられるどどうなるか、というあまり描かれなかった状況から始まるエピ。だが内容は変わり映えのない復讐譚で残念。スキナー副長官が初登場。彼の吹き替え演技がまだ定まってないのは微笑ましい。★★★

 1-22『輪廻』

単なるチャイルドホラーと思いきや、意外な陰謀に輪廻転生にサイコキネシスとネタをつめこんで、かつドタバタせずに静謐な恐怖も出している。子役の演技指導がよく、肩で気を吐くところは見事。SF色よりホラー色の強いエピだが、X-ファイルらしさに溢れた一篇。★★★★

1-23『ローランド』

知的障碍がありながら特定の分野のみ高い能力を発揮するサヴァン症候群。しかしそれは本人の能力ではなく……。序盤はミステリアスで引き込まれるが、ふたを開ければ『輪廻』と同じような内容で興ざめ。障碍者役の演技は巧いが吹き替えに難あり。★★

1-24『三角フラスコ(終章)』

本筋の異星人と政府の関連を追うエピ。当時実験が成功したばかりだった遺伝子治療を取り入れ、異星人とのDNAミュータントにつなげたシナリオはSF性が高く巧い。徹底してシリアスな雰囲気も良いが、展開に濃淡が乏しくすこし息が詰まるかも。★★★★

 

まとめ

総ポイント数

74 / 120

平均

3.08

感想

日本では2014年8月から、BS Dlifeで放送がはじまった『X-ファイル』のリマスター版、第1シーズンは★5点なしという結果になってしまった。初放送時は新鮮だったこのドラマも、22年(!)経った今観ると、やはりシナリオ展開がまだ薄いと思ってしまう。人気が出てやりたい放題になるシーズン中盤まで、高得点はおあずけかな……。

4点ながら注目のエピは14話と22話。超常現象に加えてひとひねり、ふたひねりしたシナリオで、話の密度が濃い。またローンガンマン3人組初登場となる17話も、屋上屋を架すような陰謀論と裏切りの連続で、X-ファイルならではの疾走感が感じられる。またシリーズ構成の観点では、折り返しの13話でスカリーの父の死を持ってきて、彼女の心情とともに「信じることとは何か?」という番組全体のテーマを掘り下げたのも巧い。

久々に観直して意外だったのが、正統派の犯罪捜査ドラマとしてきちんとシナリオが成立していたこと。12話や15話といった特殊能力を持つ猟奇犯罪者とスカリー&モルダーが対峙するエピは、2010年代の『クリミナル・マインド』等と比べ、シナリオ構成も感動の質もほとんど変わらない。

もちろん、X-ファイルのドラマづくりも『羊たちの沈黙』などの映画や、『ツインピークス』といった過去のテレビシリーズがあっての事だけど、一話完結のテレビドラマとして、やはりX-ファイルは低予算ながら高い完成度を保っていたんだと思えた。

第1シーズンの『本筋』

X-ファイルの本筋である「異星人と政府の陰謀」という連続ストーリーに属するエピソードは、1話(アブダクション)、2話(軍のUFO実験)、4話(政府の電波とアブダクション)、10話(軍のUFO実験)、17話(UFO実験の隠ぺい)、24話(政府の異星人DNAとクローン計画)。あと、8話(謎の細菌)と11話(クローン・イヴ計画)も、のちのち陰謀論に関連してきたかな?(おいおい確認します)