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X-ファイル シーズン2: 海外ドラマ全話レビュー

Twitterを使った『X-Files』おおよそ140文字エピソードガイド&感想、第2シーズン。

あらすじ

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モルダーとスカリーを裏から支えていたディープ・スロートが殺され、X-ファイルはタバコの男の差し金で閉鎖となった。スカリーはFBIアカデミーの指導教官となり、モルダーは閑職へ追いやられ、退屈な日々を過ごしていた。そんな中、モルダーはX-ファイルの後ろ盾の一人であるマディソン上院議員から、秘密裡にUFO関連事件の調査を依頼される。

再び陰謀解明への執念に火をつけたモルダーは、新たな支援者ミスターXやスカリーの支援を受けつつ、怪事件を解決していく。そんな彼の行動に危機感を抱いたタバコの男は、モルダーの監視人として配下のクライチェック捜査官を彼のパートナーにつける。そしてある事件で、スカリーはクライチェックの妨害が原因で異常犯罪者に誘拐され、そのまま行方不明になってしまう。しばらくの後、突如戻ってきた彼女の体には、超技術による遺伝子改変の跡が残っていた……。

FBI副長官スキナーは、政府機関を牛耳ろうとするタバコの男たちへのせめてもの抵抗に、X-ファイルを復活させる。晴れてパートナーに復帰したスカリーとモルダーは、さらに奇妙さを増す様々な事件に立ち向かっていく。

レビューリンク

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エピソード・レビュー 

2-1『リトル・グリーン・マン』

モルダーに肩入れする議員が初登場。異星人絡みの調査を再開させようとする。キャラ設定のおさらいを除けば、コスタリカまで何だかようわからんものを取りに行って何の証拠にもならなかったという完全な徒労話。物語が再開したという感慨しかない。★★

2-2『宿主』

ロシアの汚水運搬船から下水道に放たれた巨大プラナリア。人に寄生するそれは、いつしか進化を遂げ……。謎解きもサスペンスも平凡だが、とにかくグロさはピカイチ。腐乱死体やミュータントの造形は素晴らしい。寄生虫を鉗子で捕まえた時のスカリーの笑顔ときたら! ★★★★

2-3『血液』

沈黙の春を下敷きに、人を狂わす農薬が生み出したサイコキラーたちとモルダーが戦う。サブリミナル問題を絡めて一ひねりしてあるのだが、単に不気味な謎を提示するだけでSF的な納得感が希薄。スカリーやローンガンメンの存在感も希薄で残念。★★

2-4『不眠』

ミュータントもの。ベトナム戦争時に軍が作った不眠の強化人間。彼らは20年を経て異常な心理操作能力を得ていた。モルダーの新パートナー、クライチェック登場。男二人で犯人追跡のアクションシーンがよりパワフルに。異能力の科学的背景は説得力不足。★★★★

2-5『昇天 Part1』

精神を病み人質事件を起こした男。異星人に誘拐されたという彼の証言は妄想か? 回想シーンにはストレートなグレイ型異星人が登場し目を引くが、正直間延びした交渉劇が続くだけ。2話連続エピにする価値があったのかは、後編の出来にかかってる。★★

2-6『昇天 Part2』

異星人の証拠を握ったまま誘拐されたスカリー。追うモルダーとクライチェック。だらだらと進んで中途半端に終わってしまう底浅いサスペンス。更なる結末はPart3へ。モルダーが煙草の男にひと言「おまえは誰だ」と訊けば色々解決すると思うんだが。★★

3-7『トリニティ』

スカリーなし、モルダー独りのX-ファイル。捜査するのは吸血鬼を自称するミステリアスな男女。キリスト教義を絡めた設定、山火事の迫る舞台、エロス、そしてスカリーの形見の使い方。どれもすごく面白そうなのに、いまいちメリハリが出ないまま。うーん残念。★★★

2-8『昇天 Part3』

遺伝子を弄られ昏睡状態のまま突如戻ってきたスカリー。治療か尊厳死かを迫られるモルダーの感情の揺れが描かれる。この一連のエピはスカリー役ジリアン・アンダーソン出産の為組まれたものだが、練りこみが甘い。ピンチをチャンスに活かせなかったか。★★★

2-9『地底』

こんどは火山研究所で密室モンスター・ホラー。物語導入はセオリー通りでばっちり興奮。本編は衒学的なセリフと『エイリアン』リスペクトな特撮&衣装での演出だが、もう少し密度がほしい。しかし珪素生命体というノーベル賞級の発見をサクっと埋め戻すモルダーって……。★★★

2-10『レッド・ミュージアム』

牧畜の街を舞台にした肉牛の薬剤投与が絡む変死事件と謎の菜食主義宗教団体の謎。散漫な展開だと思ってたら、終盤とつぜん大きな陰謀論プロットが現れ驚く。菜食主義の理由も判り巧いのだが、こんどはアイディアが脚本に収まり切らず消化不足に。★★★

2-11『不死』

介護施設の入居者による介護士セクハラという社会問題を枕に、若返り現象、亡霊の呪怨、謎の東洋人と怪現象がテンコ盛り。老人の描く絵画も水の特撮もインパクトはあったが、盛るだけ盛った謎はみな謎のまま。すっきりしない。あの絵はUFOと関係あったの? ★★★

2-12『オーブリー』

殺人気質の遺伝という今日的なテーマにユングのトンデモ記憶遺伝説をとりこみ、妄想の翼を広げ怪奇ホラーに仕立て上げている。殺人鬼とその子孫の横顔がそっくりに見えるカットは巧い! モルダー&スカリーの掛け合いも調子が出てきて、これぞX-ファイル。★★★★

2-13『フェチシズム

死体フェチの男が狂気を暴走させ、自ら死体を作り始める。超常現象は一切なく、ただただ狂人の犯行と、それに根源的な嫌悪を感じるスカリーの焦燥を映していく。テーマは「人間が一番怖い」。まさか傑作漫画『あーみんの好き放題劇場』とネタが被るとは。★★★★

2-14『呪文』

クラウリー高校の変死事件。犯人の黒魔術師は誰だの巻。PTAが悪魔集会だったり蛙の雨が降ったり(スカリーの表情が秀逸)、ローカルな魔術合戦にモルダーとスカリーが巻き込まれ口ポカンという内容。X-ファイルのギャグセンスがいよいよ顔を出してきた。★★★★

2-15『新鮮な死体』

ハイチ人難民キャンプで殺された軍人。背景には難民虐待問題があった。社会派の主題ながら、ブゥードゥー魔術を素材にした純ホラー系のシナリオ展開が見られる。特撮は巧いし黒幕の設定にも一捻りあったが、虐待・暴動といった陰惨な状況が今一歩伝わらない。★★★

2-16『入植 Part1』

本筋のUFO陰謀もの。瀕死のモルダーから始まり、同じ顔の医師の謎にシェイプシフターの脅威、米ソ密約、突如帰還するモルダーの妹と、冒頭からドライブ感が維持され息つく暇もない展開。ただ妹の存在は、もう少し厚く描いてほしかった気も。★★★★

2-17『入植 Part 2』

シェイプシフターの人質になったスカリーの救出劇から、物語は一気に北極へ! 氷原に突き出た潜水艦の司令塔実物大セット! そんなものが見れただけで意義があったのかも。物語はモルダーの妹が生きてると分かっただけだったが。 ★★★★

2-18『恐怖の均整』

あっゾウもゴリラもUFOにさらわれた!の巻。透明のゾウに踏み潰される自動車の特撮(CGIじゃない!)に始まり、本物のゾウのスタントにリアルな着ぐるみゴリラと動物使ってやりたい放題。シリアスな脚本がむしろ惜しい。もっとハジけていいのに。★★★★

2-19『歪み』

フィラデルフィア実験を枕にした漂流船での密室劇。ただし戦う相手は怪物でも狂人でもなく「老い」。内面的な描写が多く、最後の北欧神話の引用に至る雰囲気づくりは見事。老化の特殊メイクや錆びついた軍艦のミニチュアなど、CGI普及直前のSFXも楽しい。★★★★

2-20『サーカス』

ワニ男、小人、シャム双生児……。見世物小屋の怪物芸人たちが建てた村を、本物の怪物が襲う。しかしそれを本当に怪物と呼んでいいのか? 「バカ系」エピの記念すべき第1回。その中で「異常」とは何なのか、というピリッとした風刺も語られる。ご祝儀的に高得点。 ★★★★

2-21『カルサリ』

一家を襲う不幸の原因は、子供自身か、子供を悪魔と呼ばわる老婆か、それとも子供に憑いた何かか……? ルーマニアの伝承をもとにしたド直球な悪魔祓いモノ。ほとんど様式美な怪異演出。モルダーとスカリーは完全に傍観者で、もう少し掛け合いがほしかった。★★★

2-22『幼虫』

謎の感染症が南米から持ち込まれる。寄生ゴキブリというグロさたっぷりのネタだが、物語はまじめな感染症封じ込めサスペンス。陰謀論も絡み緊迫感が続くが、SF的な驚きは乏しい。驚いたのは『ブレイキング・バッド』のディーン・ノリスが当時からハゲだったこと。★★★★

2-23『影踏み』

リリカルな邦題だが中身も短編SFのようなエピ。暗黒物質の実験事故で、影を踏まれると相手を別次元に“落としてしまう”能力を得た男の悲劇。安易な設定は措くとして、こういうのは陰謀論と絡めた「連れ去りオチ」でなく、単体で捻りの利いたオチがほしかった。★★★

2-24『カニバル』

小さな村の食肉工場で発生する狂人の原因はクロイツフェルト・ヤコブ病。最新医学をベースに社会問題を絡めたホラーかと思いきや、話はどんどんあらぬ方向に脹らみ……現れるのは食人族! この狂気のインフレこそX-ファイルの醍醐味。 ★★★★

2-25『アナサジ』

フィナーレは本筋の異星人探しを高密度に描く。いきなり精神状態が不安定なモルダーから始まり、語り手の視点をあやふやにして眩惑的に語られる陰謀のシナリオ。その作劇はある種実験的ですらある。一貫した緊迫感を演出する音楽も魅力的。★★★★

 

まとめ

総ポイント数

84 / 125

平均

3.36

感想

シーズン序盤はスカリー役ジリアン・アンダーソンの産休を逆手に取って、スカリーが異星人のアブダクションに遭うという思い切ったプロットとなったが、では各エピソードのシナリオや演出がうまくできていたかと言うと、少々疑問に思わざるを得ない。どれも練りこみが浅く、またシーズン1で観飽きたような展開も多かった。

調子が上がってくるのは、やはりモルダー&スカリーのコンビが完全復活したシーズン中盤以降。★5点のエピこそ見いだせなかったものの、2手も3手も裏をかいたシナリオや、ドライブ感のあるX-ファイルらしいエピソードが観られた。特に最終話直前の24話は、そんなデタラメ感が存分に味わえる“快作”。また、本筋UFO絡みの17話も、脚本の内容は正直薄いものの、なんじゃそりゃ! と思える大胆な舞台展開が観られた。

映像的には、第1シーズンの成功を受け予算がついたのか、大規模な“特撮”が観られるようになったのもうれしい。17話の実物大の潜水艦の司令塔のセット、18話の透明の像に潰される自動車(恐らくミニチュア操演+実物大の組み合わせだろう)、19話の幽霊船のミニチュアがそれだ。X-ファイルの放送はCGIが全盛となる直前の時代。テレビの現代劇でこういったミニチュア特撮が観られた最後の作品かもしれない。

最後に特筆すべきエピソードは第20話。実在のタトゥー偏愛者などを出演させ、20世紀中葉なら見世物小屋などで働いていたような障がい者たちの生活と、異常性とは何かを描いて見せる。それも深刻ぶった社会問題啓発モノではなく、人を喰った怪異モノであるのが、実にX-ファイルらしい。

第2シーズンの『本筋』

X-ファイルの本筋である「異星人と政府の陰謀」という連続ストーリーに属するエピソードは、1話、4話、5話、6話、8話、10話、16話、17話、18話、22話、25話。

メモ

8話。吹き替えで「分子DNA」という最先端の遺伝子技術らしきものが出てくる。なんだと思って原語を確認したら "branched DNA" つまり「分岐DNA」。当時まだ定訳が見つからなくて「分枝」と訳したのか、あるいは読み間違えか……。