farsite / 圏外日誌

Gaao Line's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

ジャンル:ヒューマン

映画『ある決闘 - セントヘレナの掟』 - それは神話か、という話

一癖あると聞いて観に行った西部劇『ある決闘 - セントヘレナの掟』、なるほどちょっと毛色が違った。物語の大枠は連続殺人の潜入捜査、描き出すのは神話の誕生。 あらすじ 19世紀末、南北戦争の混乱が尾を引く米国テキサス州で、リオ・グランデ川に多数のメ…

映画『ローガン』:殺しすぎではという話。

2000年から続いたX-メンシリーズ*1。その事実上の締めくくりとなる作品が、まさかの外伝だと思ってたこの『ローガン』。とにかく泣けるわけだ。あらゆるシチュエーションが。 あらすじ 時に2024年。21世紀初頭のミュータントの発生はすでに過去のものとなり…

ウエストワールド シーズン1 - 観ていた景色が崩壊するアンドロイド・サスペンス

Huluで配信中の『ウエストワールド』は、1983年に公開されたマイケル・クライトンの同名映画を翻案した作品。いまの時代、人工知能テーマなんてよっぽど巧く描かないと白けるだろうと思うんだけど、本作はサスペンスとしての仕上がりが凄まじくて目が離せな…

映画『メッセージ』 - 我々自身、何をどう理解したのかというはなし。

テッド・チャンの小説『あなたの人生の物語』を基に、異星人とのコンタクトとコミュニケーションをこの上なく真摯に描いた『メッセージ』。これはある意味、スルメのような映画だ。見どころは物語のクライマックスで訪れるSF的な衝撃だけじゃない。むしろそ…

『沈黙 -サイレンス- 』 キリスト教の映画としてではなく。

原作を読んだ記憶はあるものの、ぼんやりとしか覚えていない『沈黙』。映画版を観る前に再読しようと思っていたけれど、その前の下敷きとしてWebで勧められていた講談社選書『潜伏キリシタン 江戸時代の禁教政策と民衆』を読み始めるとこれが存外に面白く、…

『ガンダム Gのレコンギスタ』 人と人とを引き寄せるビーム

こちらの記事を読んで、『Gのレコンギスタ』の思い出がまた色々とよみがえってきた。 nextsociety.blog102.fc2.com 富野監督は、世界を表現するあまりドラマが描けていなかったとおっしゃるけれど、その世界に入り込んで観るものにとっては、十分なドラマだ…

シカゴ・ファイア シーズン1 海外ドラマ全話レビュー

AXN放送中のドラマ『シカゴ・ファイア(CHICAGO FIRE)』の、Twitterを使ったおおよそ140文字エピソードガイド&感想、第1シーズン。 あらすじ ウォレス・ボーデン大隊長率いるシカゴ消防局51分署には、3つの独立した部隊がある。火災や事故に立ち向かうはし…

ズートピア - 動物アニメの超変化球。差別と社会、政治を描くSF映画

様々な動物たちが入り乱れて楽し気な『ズートピア』。ふたを開けてみたらこの映画、ものすっごい変化球だった! 犯罪捜査ミステリから、なんとハードな差別問題を描き出す。そしてこれ、れっきとしたSF、思考実験としてのSFなのだ。 なにがSFって、そもそも…

レヴェナント - スタートレックの原型って、西部劇だと気付く映画

復讐者グラスの宿命の物語。その凄まじさに魂を持ってかれながら、心のどこか別の場所では、これってまさに『スタートレック』の原型なんだな、と感じていた。いや復讐の物語がではなく、その土台にある「西部開拓」というシステムそのものが、だ。 舞台は19…

『ルーム』 - 犯罪被害者の苦痛は永遠に続く。辛い映画。

たとえばドラマ『クリミナル・マインド』なんかそうだけど、異常犯罪・猟奇犯罪をテーマにしたサスペンス・ドラマはたいてい、警察VS犯人、事件が解決するまでを描く。事件の「被害者」は、実のところ脇役でいることが多い。ところが、この映画はその逆を行…

黄金のアデーレ 名画の帰還 - 映画感想:人生を賭けた法廷劇

あらすじ 実話をもとにした物語。第二次大戦期にナチスの迫害から逃れ、オーストリアから米国に移住したマリア・アルトマンは、姉の死を契機にナチスに接収された叔母の肖像画を取り戻すことを決意する。しかし、それは今やオーストリアの至宝と呼ばれ、美術…

アクトレス 女たちの舞台 - 女の時間をどう描くか

原題は『シルス・マリア』。その名の土地で稀にみられる、谷に沿って蛇のように流れこむ雲霧“マローヤの蛇”が、映画の鍵となってる。映画の中で、人生あるいはその時間とは、霧のように手に取ることはままならず、しかし蛇のように人生を縛るものとして描か…

『猿の惑星 新世記(ライジング)』映画感想: 神なき世界の猿と人

“進化”を真摯に描き、評価の高いリブート版『猿の惑星 創世期』の続編。こちらも猿と人の違いを逆説的に描いたSF性の高い傑作だけど、そこで感じたのは、妙な話、「神の不在」だった。

『サード・パーソン』映画レビュー - 反芻感動映画

映画『クラッシュ』や『L.A.ロー』の脚本、早すぎた傑作TVシリーズ『EZストリーツ』で有名な(でもないか)ポール・ハギスのつくる、三組の男女の見せる人間模様の映画。人の心を抉り出す描写を期待していて、確かに堪能したんだけれど……この構成はズルい! …

『オールド・ボーイ』(米国版)映画感想

日本の漫画を原作とした韓国版『オールド・ボーイ』(パク・チャヌク監督)は、衝撃的な結末と引っ掛かりの多い演出、「餃子は完全栄養食」というイメージが記憶にこびりついてる。今回スパイク・リーの更なるリメイク版でどうなるのかと思ったら、意外なこ…

Law & Order シーズン10 - 海外ドラマ全話レビュー

Twitterを使った『ロー&オーダー』おおよそ140文字全話エピソードガイド&感想、第10シーズン。 あらすじ 妻のため早期退職したカーティス刑事に代わり、エド・グリーン刑事(ジェシー・L・マーティン)が登場、ブリスコー刑事の新たなパートナーとなる。ヴ…

『レ・ミゼラブル』映画感想 - アン・ハサウェイとヒュー・ジャックマンの凄まじい顔芸

アン・ハサウェイが出てるから観に行った『レ・ミゼラブル』だけど、ド迫力の顔面アップの連続で、2時間40分の長さも忘れる怒涛の展開だった。 顔を撮れ! とにかく顔。顔が命。アン・ハサウェイのたれ目がうるんで、くちびるが震え、娼婦に身をやつす境遇の…

映画『拝啓、愛してます』 暴力的なまでの泣かせ映画

最近は大作ばかり観てたので、たまには単館系をと思ってシネスイッチに足を運んだのだけれど、『拝啓、愛してます』……恐ろしい映画を観てしまった。観終わって泣きすぎでホントに胸が痛くなってしまった。 涙腺破壊兵器の恐ろしい威力 原題は ″クデルル サラ…

映画:スターウォーズ、ギャラクティカ、そして『アルゴ』

1980年のイラン・イラク戦争を前に起こったアメリカ大使館人質事件。映画はこの裏で起こった極秘の人質脱出作戦を描く。 ウソのようなホントの話を、徹底的にホントに見せるウソ この実話をもとにした映画では『ニセモノの映画の制作』を軸にした人質救出作…

『ソーシャル・ネットワーク』 映画感想 - 強烈な負の感情

facebookのイノベーションもザッカーバーグの成功も、愛も成長も関係ない。この映画は徹底した人間の会話と感情のコラージュだ。人々の生の感情の接点が、別の意味でのソーシャルネットワークを生み出していく。

『バーレスク』映画感想 - シェール vs クリスティーナ・アギレラ

『シェールVSクリスティーナ・アギレラ』と書くとちょっと怪獣映画っぽいな。田舎から出てきた歌姫が、潰れかけのダンス・シアターで主役の座を射止め、シアターを救うサクセスストーリー。もちろん歌とダンスがもりだくさん。 ストレートで楽しい音楽映画な…

海外ドラマ: ロボコップ:プライム・ディレクティブ

2000年に作成されたミニシリーズ。“ダーク ジャスティス”,“メルトダウン”,“リザレクション”,“クラッシュ&バーン”の4話構成。 ――ロボコップ開発から10年が経った。開発元の総合企業オムニ社(OCP)は、人工知能による行政サービスの完全自動化ソリューシ…

映画:カンダハール

第1水曜は映画サービスデイなんで観なければ! 思ってたが、逆に観るべきものが思い当たらず(『モンスターズ・インク』は観たいが独りで入るのは……)コイツを。ちょっと前は時事的な理由で有名になってましたな。 前に映画祭で『背負う人:ブラックボード』…

映画『友へ(チング)』

韓国映画『友へ』(原題:チング)のポスターに「オフィシャル協賛:辛ラーメン」なんて事がデカデカと書いてある。韓国市場最大の動員数を誇る映画に、カップ麺とは……。せめてサムスンの新製品とかないんかい! チングは実はニュージーランド生活の末期に観…

『人類、月に立つ』 海外ドラマレビュー - 人類最大の冒険

映画『アポロ13』で主演し、今や時代を代表する俳優となったトム・ハンクス。いくつかの映画の制作側にも立ってきた彼だが、彼の製作者としての最大の業績は映画ではない。テレビだ。フロム ジ アース トゥ ザ ムーン(邦題: 人類、月に立つ)は、彼の総指揮…