これはすごかった! 心理サスペンスか、いやひょっとして超自然的なホラーなのか、予告編を観て楽しみにしていたんだけど、そうか、こうきたか。厭で怖くて楽しい映画なんだけど、この展開は……!
あらすじ
カリフォルニアに越してきた妻ロビンと夫サイモンの前に、サイモンの高校時代の同級生ゴードが現れる。ゴードから夫婦に次々と届けられる贈り物。不気味なゴードの存在が、ロビンとサイモンの精神を変容させていく……。
感想(ネタバレ)
ロビンはサイモンとともに、ゴードの恐怖をどう乗り越えるのか? いや、乗り越えられるのか……? サスペンス映画なんだから当然そういう物語だと思うわけ。でも最初から微妙に違和感がある。それ演出上の違和感というより、もっと映画の構造に関する違和感だ。
悪役ゴードの登場がやたら早いのもちょっとした違和感だったけど、ロビンになんだか主体性が感じられない。彼女には恐怖からの脱出、真実の追及といいう目的が与えられるけど、いつまでたっても状況に流され、問題解決はサイモン頼みのように思える。主役なのに、このアンバランスさはなんだろう?
繊細で見事なショックシーンが積み重ねられていくうちに、その構造の逸脱はどんどん大きくなってくる。そしてあるポイントで気づくのだ。この映画、構造が逆だ!
物語のヒーローなのは、ロビンでもなければサイモンでもない。ゴードなのだ。これはゴードが障害を乗り超えて何かをなす物語。その視点で見れば、一見主役のように見えるロビンは狂言回し、いやそれですらない。ゴードが物語のゴールに到達するための“アイテム”でしかないのだ。そりゃ主体性がなくて当然だ。
そして、エンドロールの妙に明るい音楽の中で確信するのだ。これは勧善懲悪の復讐譚であったと。
ストーリーの中の衝撃で驚かせるというより、映画の構造そのもの転換で驚かせる。衝撃あってのサスペンス映画だけど、これはなかなか面白いトリックだった。