ウディ・アレンの映画って、観に行くまではすっごく億劫で映画館で観なくてもいいんじゃないかなと思うんだけど、観終わると、ああ、観てよかったといつも思う。
今回は鬱になった教授と彼に惚れた女子大生の、殺人のお話し。前半はアルコールのにおいが感じられそうなホアキン・フェニックスのアル中演技がすばらしい。前作に続いてヒロインを演じるエマ・ストーンも軽やかで、いかにもアレンが好きそうな女優。
ふたりの独白を交差させ、手練れたペースでコツコツとすすむ物語。醒めた目線で描かれる情熱。適度な緊張感。ラストはちょっとした、観てるほうからしたら滑稽極まりないちょっとしたサスペンスでストンと落として、おしまい。教授に釣られてポジティブに人を殺したくなる、いい映画だった。
学生の頃『マンハッタン』で大好きになったウディ・アレン。『マッチ・ポイント』以来、コンスタントに観ているのだけど、もうあんまりテーマとか難しいこと考えなくていいんじゃないかと思ってる。たいてい、人の運命というか、塞翁が馬というか、そんな話だ。
たとえ陰鬱なアンハッピーエンドの映画でも、その状況をコミカル&シニカルに楽しむシチュエーション・コメディ。気楽だし、いつも一定水準で楽しめるし、それでいい気がする。ファンになったからそう思うのだろうけど。