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farsite / 圏外日誌

Gaaoline's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

『第9地区』映画感想 - アバターの双子にして至高のロボット映画

こんなマニア受けする映画を他人と観るのは勇気の要ることだけれど、結果、一緒に観てよかったと思う。SFなんか見たことも無く、ふだんハッピーエンドが約束された作品をテレビで見る程度のそのひとは、エンドロールが終わって、深いため息をつき、「人間なんか滅びればいいのに」。ははは!

SF作品は、特異な状況から思いもよらない視点の転換を与えてくれる。また、その異常な状況を通じて、人間とは何かを伝えてくれる。空とぶ円盤に不気味な異星人、未来兵器に戦闘ロボット。派手なアクション。『第9地区』はB級要素満載のSF映画だけど、伝わってくるのはアクション以上に、人間の本質だ。我々は異様なエイリアンに共感して、故郷に還れない彼らの想いを汲み取り、彼らを差別する人間を見て痛みを感じる。この感情を呼び起こしてくれた本作は、成功したSF作品だ。

この映画は『アバター』と表裏一体、双子のような作品だ。どちらも我々人間社会の負の側面を見せつけ、異様な容姿をした異星人に感情移入が起こるようにしむける。『アバター』の物語が陳腐だと言うなら、本作の物語も本質的には陳腐だろう。僕は、どちらの作品も、感情移入のできるすばらしい映画だったと思う。アバターに感動したひとはこの映画でも何かを得ることができるだろうし、アバターがダメだったひと、観る気がしなかったひとも、この作品の語り口なら納得できるものがあると思う。

 

もうひとつ。物語の後半、主人公が乗り込む大型の人型のロボット(パワードスーツ)が登場する。厳密に言えば“異星人型”のロボットなんだが、巨大ロボットが縦横無尽な戦闘を繰り広げるのはまさにSF映画の見せ場。これもアバターと同じだ。ところが、この映画の演出は一歩先を行っていた。異様な鳥脚を持ち両腕とボディに無数の火器を詰め込んだ無敵のメカニクスは、主人公が乗った瞬間、人間そのものとなるのだ。彼の感情、彼の意思を、全身を持って表現する機械に。

敵に追い詰められ、ロボットは生き延びるため火器を闇雲に発射しながら逃げ惑う。そのさなか、一瞬、なにかを思い出したかのように、人間とは似ても似つかぬ機械の頭が天を仰ぎ、振り返る。その黒い異形の機械は思い出し、決意したのだ。後ろに取り残された仲間を助けることを。

このワンカットで、はじめて涙が出た。

ロボットが人型をしている理由は、それが人間の姿だけでなく、意思そのものを、無限に表現できる媒体だからだ。この製作者は、SF作品でなぜ人型ロボットが必要なのかを、的確に描いてくれた。異星人もロボットも、ふだん我々が決して得られない視点から、我々自身を描き出すためにいる。

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