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Gaao Line's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

映画『拝啓、愛してます』 暴力的なまでの泣かせ映画

最近は大作ばかり観てたので、たまには単館系をと思ってシネスイッチに足を運んだのだけれど、『拝啓、愛してます』……恐ろしい映画を観てしまった。観終わって泣きすぎでホントに胸が痛くなってしまった。

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涙腺破壊兵器の恐ろしい威力

原題は ″クデルル サランハムニダ” つまり「あなたを愛しています」。ド直球のタイトルどおりの、情緒的な恋愛劇だ。ともすれば小学生かといううれしはずかし恋物語を、奇も衒わずにやってみせる。まさに韓国の王道ラブストーリーだと思う。

ところが問題は、この主人公がみな70越えの老人だということ。逃れようのない衰え。身寄りのない暮らし、病気、困窮、痴呆、そして待ち構える人生の終焉。

こんな状況をこれでもかと見せつつ、老人たちの小さな愛が語られる。中盤「愛してます」と声に出すシーンは幸せな笑いと涙に包まれる。そしてそこからは、もう文字通り涙が止まらない。だって幸せの向こうにまっているのは何か、見えているから。辛い辛い、身を焦がすような愛を、徹底的に見せられた。

韓国版ラブ・アクチュアリー

この映画の巧いところは、ふた組のカップルの様子をマルチプロット的に描いたところだと思う。小さな街で、4人の暮らしが絡み合って、更に過去の人生まで描くことで、さまざまなかたちの愛が、ひとのこころを照らしていく様子が心に染み入る。語り口はまったく異なるけれども、英国恋愛映画の傑作『ラブ・アクチュアリー』を思い出した。最後にファンタジックな表現に行きつくところもある意味にている。現実とファンタシーがいつのまにか重なり終わっていく物語は、人生の終わりの愛を描くうえで、最上のものだったと思う。

痴呆ヒロインの当たり年

ところでことしは、痴呆女性が出てくる映画を3本も観た。『マーガレット・サッチャー』は外から見た痴呆患者と、痴呆患者本人の脳内に見えるもののカットオーバーに説得力があってた。『希望の国』は、物語のテーマのためにつくられたようなセリフや行動で、すこし拙速であるように思えた。『拝啓、あいしてます』は、演技もセリフももっとも自然だったと思う。

韓国の映画、ほんとうに役者がうまいな。かなりコミカルな演出も入っているのに、ウソっぽくなり過ぎないちょうど良いリアリティを保っているから、物語に集中できた。ついでに本作唯一の若い女性、ソン・ジヒョも、とても自然で可愛かった。

 

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