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『ベター・コール・ソウル』シーズン1感想

ブレイキング・バッド』のスピンオフである『ベター・コール・ソウル』。スピンオフは大ゴケすることも多いので、おっかなびっくり観始めたんだけれど、いやびっくりした。これ、オリジナルシリーズよりも好みだ。ジミーというテレビの向こうのダメ人間に、テレビの前のダメ人間もすっかり感情移入してしまった。

 

シリーズは第6話を真ん中の折り返しにして、おおむね前半はジミーが必死で案件を取ろうとする横領事件、後半は老人ホームの搾取に関する弁護を描く。ジミーが弁護士としてどう振る舞い、どうあるべきなのかを悩む、キャリアの物語だ。ジミーの根っからの小悪党的マインドと、ついつい人に親切にしてしまう彼の善意。そのあいだで揺れ動く姿が、物語の見どころとなっている。

なんやかんやと失敗を繰り返し、裏切りにあい、小さな成功や信頼の獲得も経験したジミー。最終話のギリギリまで揺れ動いた彼の心は、最後の最後で、すとん落ち着く。それは指輪を使った暗喩で表現され、すごくカッコいい。結局、信頼すべきは他人の評価と倫理ではなく、自分の根っからの性質、一種の野生のようなものだという暗示だ。

世の中の矛盾に翻弄されまくるダメ人間が、最後の最後に自由を選ぶ。観ているこっちも嬉しくなる。それは現実では実現できないことだから。

 

全編通したジミーの物語に勝るとも劣らない印象を残したのは、インターミッションとなる第6話、イアン・バンクス演じるマイク・エルマントラウトの物語だ。

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このエピソードでは、ジミーと同じくブレイキング・バッドにも出演していた彼が、なぜ闇の世界に身を置くことになったのかが、彼本人の口から語られる。それは一篇の悲しき復讐の物語だ。画面に向かって座った彼の、最後の一言のセリフで締められたそれは、まるで美しい舞台劇のようだった。たった1話で、残りの12話に匹敵する感動を残してくれた。

4K画質で見せるアルバカーキの風景、また芝生1本1本の感触など、映像的な見どころもじゅうぶん。PCのモニターでなく、テレビに繋いできちんと観たほうがいいと思う。まあ最近はテレビよりPCの画面のほうが高精彩だったりするけれど。

 

各エピソードのレビューはこちら。

farsite.hatenablog.com

 

で、 NetFlixをテレビで観るにはコレが一番簡単だと思う。

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