帰省する楽しみは、地元のうまい食べ物にあるわけで。ことし食べたものの記録をいくつか。
むちゃくちゃ美味い西洋ナシ “ル レクチエ”
ことし最大のヒットは近海の刺身でも裏山のしし肉でもなく、この洋ナシだった。
“ル レクチエ”という新潟産の品種。どこぞから流れて来たらしい。皮をむく前からあまい香りがし、むくとぬめるような水気に富んだ果肉。モモに近いしゅくっとした食感とともに、洋ナシ、としか形容しようがない甘酸っぱさが、じゅっと広がる。はじめて、本当においしい洋ナシを食べたと思う。
近海だからって美味いわけじゃない
街の魚屋は目が利いていて、毎年おいしい刺身が食べられる。ことしのマグロは、近海ではなく遠洋のものだった。魚屋曰く、焼津があるからっていつも近海がいちばん美味い、というわけじゃないとのこと。食べてみるとやっぱり美味しい。
数の子も北米産だった。国内ニシンが不良だったのかもしれないけれど、さっぱりした味わいで、まったく劣らないものだった。
そういえばウナギも、中級ぐらいまでなら、浜名湖産と謳ってるものより台湾人の業者が中国本土で作ってるヤツのほうが美味いそうだ。かつての浜名湖の養殖業者のノウハウを正しく受け継いでいるから、とのこと。
喫茶店のスパゲティ
藤枝の中心からすこし離れた、瀬戸川にほど近い場所にある阿同という喫茶店。30年もこの場所にある。
個人経営の店って、長くやってると内装に妙に生活臭がでてきて古ぼけたり、ちぐはぐになったりするのに、そういう事が一切ない。店主の一貫したセンスが隅々まで行き届き、古びずに年を重ねている。時計のコレクションの配置、ランプの横に置かれた深い赤のチューリップ。目立たないように配置されたスピーカーまで、自然なのに、手抜き感を感じさせない。
ここのスパゲティが好きだ。オイル系ソースのししとうとなすのスパゲティを食べるんだけれど、よくある“喫茶店のスパゲティ”とかそういう感じじゃないし、パスタ屋のパスタとも違う。ほんと、家庭の味、としか言いあらわせない。
では家で作れるかというと、なんど真似しても、微妙な面の茹で具合といい、ソースがちょうどよく麺に絡み、皿にほとんど残らないぐらいのほどよい“乾き具合”といい、不思議なものだ。
もちろんコーヒーも美味しい。ブレンドはしっかりした苦味があるタイプ。
静岡おでんほど意味のわからないものはない
神社の売店で売ってるおでん、1本50円。
こればっかりは、何がそんなにもてはやされるのか、ちっともわからん。駄菓子屋は最近すくなくなったけれど、肉屋の店先でも売ってたりする。要は子供の買い食い用の食べ物なんだ。
確かにイワシの削り粉と黒はんぺんがあるぶん、東京のおでんには勝ってると思ってるけど、わざわざ東京から出かけてきて食べるものかね? 静岡のおでんストリートってのも意味が分からん。おでん専門店ってなんだよ(静岡の店は昔からあるらしいけど)。
富士宮焼きそばも、地元の友人は首をかしげていた。どこのご当地も、そんなもんなんだろう。