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farsite / 圏外日誌

Gaaoline's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

『フラーハウス』 - ただの懐古と思ったら、この設定は巧い!

Netflixでおそるおそる観た『フラーハウス』。第1話を見終わったところで、思いがけず感動している自分に気づいた。懐かしさにじゃなくて、新しい設定の妙味に、だ。

 

新世代の物語

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番組のテイストは、20年前と一部も変わらない。よくぞここまで大胆に「懐古」を突き通したと思う。誰もが顔を知っているという前提で、タナー一家の面々が、すっかり老け顔のドヤ顔で次々と登場、ほとんど筋らしい筋もなくハグしたりモノマネしたり歌ったり。ところが、このベッタベタのほのぼのを見ているうちに、次第に状況が見えてくる。

一家は親たちも子供たちもそれぞれ仕事で成功しており、家を売りに出してそれぞれバラバラに生活しようとしている。その最後のお別れパーティで久々に再会した一家(+キミー)は、シングルマザーとなったDJが3人の息子の子育てに不安を感じているのを知ることになり……。

そうして、第1話の最後に、新たな『フラーハウス』の骨格となる設定が立ち上がる。それは、かつてのダニー、ジェシー、ジョーイのように、DJ、ステフ、そしてキミーの「女の子たち」3人が、今度は新たな「ママ」と「おばたん」として、共同生活で男の子たちを育てる、というものだ。*1

オリジナルの設定をくるりとひっくり返して、とてもモダンにした見事な転換! これは巧い。というかこのアイディアがあったからこそ、製作が始まったんじゃないかと思えてしまう。オルセン姉妹演じたミシェルの存在は、この黄金の設定ができてしまえば、むしろ邪魔なぐらいだ。

IMDbの出演者リストを見ると、案の定ダニー、ジェシー、ジョーイはゲスト扱いで、全話登場というわけではないようだ。描かれ方は完全な懐古でありながら、この番組の芯は、アラフォー女3人の、新しい物語なのだ。

 
思い出は美化する

で、かつて『フルハウス』を楽しんで、この番組を心待ちにしてた人は、どんな風に感じたんだろうか? 「え? フルハウスって、こんなつまんなかったっけ?」と思った人もいたんじゃないだろうか?

自分もそうだった。大学の頃に東海岸系の大人向けシットコム……『マッド・アバウト・ユー(あなたにムチュー)』とか『ニュースラジオ』とか『ウィル&グレース』とか……を浴びるように観たあと、現地の再放送で『フルハウス』を見直したら、こんっっなにつまんなかったの!? と驚いたのだった。

劇のテンポはものすごく間延びしてスローだし、トークのキレは皆無だし、穏当なことしか言わないし、あざとく感動させにくるし。やっぱり、古い、子供向けの番組なのだ。小学生の頃夢中になって読んだ漫画を、大人になって読み直して「子供向け」だったことに気づいてしまう。今回の『フラーハウス』には、それと同じ寂しさがある。だけど、それを感じさせないような番組にしてしまったら、それはもう『フラーハウス』ではないだろう。

 

 

*1:ちなみに「フラー」はDJの夫の姓という設定で、そういう意味で「フラー一家」ということになってる。