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Law&Order クリミナル・インテント シーズン2: 海外ドラマ全話レビュー

Twitterを使った『ロー&オーダー:犯罪心理捜査班(クリミナル・インテント)』おおよそ140文字エピソードガイド&感想、第2シーズン。

あらすじ

f:id:debabocho:20151006130549p:plainジェームス・ディーキンス警部率いる重大犯罪捜査班の刑事ロバート・ゴーレンとアレクサンドラ・エイムズのコンビは、ロン・カーバー検事補の支援をうけつつ、次々と現れる知能犯の犯罪に立ち向かっていく。そんな中ゴーレンたちは、謎めいた女性コール・ウォレスと出会う。犯罪のマスターマインドとも言うべき彼女に、ゴーレンの心理すらかき乱される。

全話レビュー

2-1『ミスなき殺し屋』

煙の上がらない火葬場の謎を解けの巻。前半戦のクライマックスは本家シリーズを彷彿とさせるショッキングな映像、後半戦は裁判の代わりに事件の背後の知能犯を追う。構成のバランスは良いが、知能犯の惨な姿を眺める終盤は冗長で多少悪趣味。★★★★

2-2『解の中のSOS』

ソーシャルワーカーの不可解な死が、リーマン予想に挑む天才少年とその父親の哀しい物語に。子供への一途な願いが全てを狂わせ、虚無感に満ちた結末に。ゴーレンを前に逡巡する父親の長いカットは、彼の息子への葛藤がよく表現されてる。★★★★

2-3『ゴーレンに迫る恐怖』

大学の学科長を殺したのは誰だ? いわゆるファム・ファタールものだが、今回の悪役ニコール・ウォレスは今後何度も再登場する宿敵となる。確かにゴーレンを逆に精神的に追い込む彼女のキャラは面白いが、物語は驚きが少なく密度が薄い。★★★

2-4『不釣り合いな夫婦』

冴えない検事の夫に高給取りの有能弁護士妻。相手を憎んでいるのはどっちだ? 裏の裏がある展開にも慣れてしまい、かつ本作は動機となる夫婦の感情の描き方が甘く、腹落ち感がない。検察や警察の身内が絡む事件が結構多いなこのシリーズ。★★★

2-5『幻の骨とう品』

天安門事件の被害者と加害者がチャイナタウンで交錯し、生まれた悲劇。その裏にあるものは? 正統派社会問題エピになるかと思いきや、別の角度で歴史への執念の話に。ただ少々軽薄に思えるのは、中国文化の描写の甘さも無関係ではないだろう。★★★

2-6『不正な薬品処理』

医療品強奪事件が不正処方問題に繋がり……。ひとりの薬剤師のちいさな名誉欲が、病に苦しむ多くの人々を苦しめる。医療犯罪のおぞましさ、醜さが描かれる。ただ被害者、犯罪者双方の描写に、もう少し感情をかき立てるインパクトがほしかった。★★★★

2-7『哀しき妄想の果てに』

金持ち一家の息子の友人を殺したのは誰だ? 不幸な身の上の姉妹が築いた固い絆を、ゴーレンが突き崩す。鍵がソープオペラのセリフだとか、ちょっと話が作り物っぽすぎる嫌いがある。必殺ゴーレン落としも、今回は長すぎ&ひどすぎ。★★

2-8『迷える心のジハード』

失踪者の部屋に残されたアラム語の落書きが、自爆テロの始まりを告げる。刻一刻と迫るテロを防ぐため、全編息の詰まる展開。ゴーレンの自白テクも必然性があり、異色作だがきちんと流れている。決めはFBI狙撃犯のカッコよさ! ★★★★★

2-9『受け継がれた名前』

ユダヤ教徒の一家で起きた殺人。殺したのは夫か愛人か。ユダヤ教の婚姻に関するしきたりは本家シリーズでもネタになっていて、そのエピよりディティールが浅く新鮮味がない。真犯人もさほど意外性もなく、ワクワクのしどころがない。★★

2-10『自己変革と言う洗脳』

そういえばなんでこのネタがなかったかと思える自己啓発セミナーの暗示による殺人。実行犯を少年とし、無批判な信奉の痛々しさを引き立てるのはよいが、暗示で殺された遺体の状況が極限的で、少々リアリティに疑念を持ってしまう。★★★

2-11『つまらない女』

男性による女性へのセクハラ、それが虐めの性格を帯び、おぞましい嫌がらせの連鎖が続く。つまらないが勇気ある女の逆襲、では彼女を殺したのは? 二重の意味で男の傲岸を表現した厭な話。それゆえねちっこいゴーレン落としも爽快に思える。 ★★★★

2-12『操り人形』

実業家の女性を母に持ち結婚も許されない女性。怒り狂う彼女のとった行動は……? ままならない人生でため込まれた怒りの発作が、自分を追い込んでいく。その性格描写はリアルで、共感と哀れみを感じさせる。最後のゴーレンの表情も見モノ。★★★★

2-13『逆理論の悲劇』

病気のための治療法か、治療法のための病気か? 統合失調症の治療をめぐる詐欺事件から、一人の医師の哀しき宿命が描かれる。犯罪行為とその動機が一種の入れ子になっており、ゴッホの絵を絡めた点もテーマを際立たせる。精神病患者の心理を捉えた佳作。★★★★

2-14『ホームレス連続殺人事件』

医療試験で報酬をもらう人々を殺してまわる殺人犯、その背後いるのは? 一見粗野だが非常に知的な犯罪で、謎解きは飽きない。中盤出てくるアスペルガー症候群の男のキャラクターがよく、終盤彼の受ける衝撃、哀しみに胸が苦しくなる。★★★★★

2-15『悪意に満ちたナルシスト』

刑務所帰りの息子の秘密を知り殺された母親。彼女が本当に知ったのはなんだったのか? 犯罪を暴く過程で別の犯罪が暴かれ、さらに巨大な犯罪へと繋がる加速度的な面白さ。最後に伏線が活きるのも見事だが、感情表現がもう少し欲しい。★★★★

2-16『富と妄想』

傲慢な大富豪と貧民街の英雄が刑務所で交わした契。殺人の主導権を持つのは誰だ……? ともすれば社会層を超えた友情譚にもなりそうな設定を、徹底的に厭らしく描くのはいかにもL&O。英雄を気取ろうがクソはクソ、という救いのないオチが爽快。★★★★

2-17『冷たい安らぎ』

金持ち一家の秘密、クライオジェニック編。永遠の命を求める人体冷凍保存のために、人が殺される。暴かれるのはまさしく一家の秘密ともいえる悲しい事実。その奥底の欲望まで暴くゴーレン落としは納得だが、プロットが分かりづらい部分も。★★★★

2-18『負け犬の人生』

ジョジョの奇妙な犯罪。喉をかき切られて殺された親子は、いったい何に巻き込まれたのか? 中米移民の子らを食い物にする犯罪帝国を描くが、まあチンケな内容で、子供を洗脳する怖さが伝わってこない。子役の見せ方が問題か。★★★

2-19『盗まれた遺品』

遺産目当てと思われた老女の殺人。その裏には別の父子の醜い物語があった。歴代の名車勢ぞろいでゴーレン、カーバー大はしゃぎ、そして62年型フェラーリGTOを手にしたカーマニア男の顔の演技は絶品! 介護を巡る話は共感も得やすい。★★★★

2-20『ゴーレンの頭脳戦』

また投げやりな邦題だ。今回対決するのは数学者を擁する違法賭博集団。一味を一人ずつ落とし、殺人犯を追い詰める。いうほど頭脳集団らしく見えないのが最大の欠点だが、犯人の特殊な障害を逆手に取った説得シーンは、感情を揺さぶられる。★★★★

2-21『一族と名誉のために』

トラベラーと呼ばれるシェルパ語を話すアイルランド系漂泊民が題材。まるで遺伝的傾向のある犯罪集団のように説明する箇所があるけどいいのかしら? 。真犯人のいかにも傲慢で醜い顔の演技はうまいが、文化表現が極端すぎて興ざめ。★★★

2-22『人獣伝染病』

変態性欲デコボココンビの謎を追えのまき。何が悲しゅうてそんな手の込んだことするのという犯罪プロットで苦笑しか出ない。配役が見事で、直情性欲野郎とむっつり知能犯、ふたりの外見イメージがぴったり。結末は珍しくクリフハンガー的。★★★

2-23『仕組まれた復讐劇』

L&O版モリアーティことにコール・ウォレス再登場。前回の炭疽菌騒ぎが仕組まれた犯罪劇へと変わる。ラストはこれぞ心理戦! お互いの過去の傷に塩を塗り込みまくる舌戦が見もの。ウォレス役オリビア・ダボにもう少し演技があれば。★★★★

まとめ

総ポイント数

83 / 115

平均

3.61

感想

全体的に点数を甘目につけたかな、と思うぐらい、実はのめりこめないエピが多かった。

このドラマの様式美とでもいうべき最後の「ゴーレン落とし」……要は推理劇のお決まりの犯人当てパターンを、もっと心理的にゴリゴリ 圧迫するかたちにしたもの……がカタルシスとなるのは、それまでのプロットに相応の納得感がないといけないと思う。そういう意味で、ちょっと強引すぎたり淡泊だったりする展開が多いのでは、と思ってしまった。とはいえ、毎回突飛でバリエーション豊かな犯罪が楽しめることに間違いはない。

メモ

2-5話、冒頭中国系の男たちが言い争うシーンは、カットによって北京語だったり広東語だったり。演出が行き届いてなかったのか、むしろこのチャンポン状態がリアルなのか。

 

手錠

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