farsite / 圏外日誌

Gaao Line's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

Law&Order UK シーズン2 海外ドラマ全話レビュー

Twitterを使った『ロー&オーダー:UK』おおよそ140文字エピソードガイド&感想、第2シーズン。本国では第3,4シーズンとして放送された。

あらすじ

f:id:debabocho:20151114225803j:plain

ロンドン各地で起こる重大犯罪は、ナタリー・チャンドラー警部補指揮下のセントラルロンドン署重大犯罪課によって捜査され、ジョージ・キャッスル局長率いる英国検察庁ロンドン支局によって起訴される。

セントラルロンドン署のロニー・ブルックス巡査部長と、マット・デブリン上級巡査のコンビの前に、子供による子供の殺人や収監者による看守の殺人など、一筋縄では解決できない複雑な犯罪が立ちふさがる。犯罪は時に刑事たちの過去の傷をあばき、また時に二人の仲を引き裂こうとする。

一方検察では、アリーシャ・フィリップス検事が深い傷から立ち直りつつあった。俊英ジェームス・スティール検事は彼女を支えつつも、犯罪を厳しく追及していく。しかしその厳しさは、あるとき一転し、彼を逆に追いつめることとなる……。

レビューリンク

| シーズン1前 | シーズン1後 | シーズン2シーズン3 |

全話レビュー

2-1『心の闇』

6歳の子供を殺したのは、10歳の少女か、13歳の少女か? 子供の犯罪に直面した大人たちの心理が描かれる。無力感に苛まれる者、子供の心理を解き明かそうとする者、大人に責任を見出そうとする者。ただその心理の描き方にもう少し尺が欲しい。★★★

2-2『執拗な追跡』

刑期を終え釈放された性犯罪者。スティール検事は新たに起きた強姦殺人事件を彼の犯行と考え、僅かな証拠から執拗に追及する。その圧力こそ、性犯罪者を犯行に至らしめる原因となっているのではないか? おぞましい現実がほの見える一編。★★★★

2-3『法を司る者』

慢性精神疾患で妄想状態の男が犯した殺人。逮捕後投薬で本来の知性を取り戻した彼は、法廷で自己弁護を始める。米国版では病気を持つ彼の哀しみに焦点を絞った傑作だが、本作では彼の狡猾さや行政の無力さも強調した結果、まとまりがない内容に。★★★

2-4『勇気ある証言』

デブリン刑事の友人はなぜ銃殺されたのか? 彼らの子供時代とも絡み、声を上げられない小児性愛被害者の思いを丁寧に描いていく。いい年をした男がぽろぽろと涙を流しながら葛藤を続ける姿に事態の重みが組み取れる。裁判の過程はちょっと強引。★★★★

2-5『克服』

刑務所の看守を殺した受刑者の女性。その背後にある麻薬取引の闇を暴くが、物語は彼女の被害者としての側面に集約される。肉体だけでなく精神的な暴力で追い詰められた彼女に、法はどう動くべきか。人は何をすべきか。二人の検事がそれぞれ代弁する。★★★★★

2-6『いい子の悲劇』

アジア系の男性にレイプされた白人女性の復讐は正当か? その裏に秘められた事実を暴く。米国版の名作エピに、アリーシャの過去を照らし合わせ被害者たる女性の心情をより深く描く。ただ彼女が嘘を見抜くシーンはもう少しじっくり観たかった。★★★★

2-7『見えない真実』

ストーカー被害は真実なのか? 日本でも繰り替えされる「ストーカーの脅威を軽視する警察」の役回りを、主役の刑事二人が演じる。その結果は重苦しく、真実を取り戻す裁判の場でも刑事たちに傷を残す。余韻の会話はもっと練りようがあったのでは。 ★★★★

2-8『支配』

妊婦殺しの容疑者には偽装された過去があった。これはなかなか面白いトリック。取調室でのシーンは演技に加え、見事な色彩、アングルで目が釘付け。裁判編で明らかになる真相の真相はちょっと食い足りないけど、アジア系の弁護士もキャラがよく楽しめた。★★★★

2-9『最期の誇り』

銃撃の重傷で、誇り高き人生の全てを失った女性判事。尊厳死を選ぶ彼女が、自分の命を賭してまで守りたかったものとは? キャッスル検事の個人生活が物語に絡み盛り上がる。ラスト、2つの尊厳と愛をカットバックで描くシーンは印象深い。★★★★★

2-10『大人の都合が生む悲劇』

揺さぶられっ子症候群で死んだ乳児。不確かな証拠、晴れない疑惑、疑われた大人の苦しみ。赤ちゃんの死がもたらす不幸が延々と描かれ、辛さがよく伝わる。最後の犯人の告白も胸を突く。しかしこれ半分は検察の捜査不足の問題では。★★★★

2-11『絶望の果てに』

放火された家にいた重度障碍の少年。彼はなぜ死んだのか? 一種の人情話。絶望する母親を食い物にする悪徳弁護士が実に憎々しくていい役柄。母親の造形もよいが、全体的にちょっと軽い。検事たちにもう少し踏み込んだ感情表現があれば。★★★

2-12『良心の勝利』

邦題ネタバレシリーズ。たまたま犯罪現場に居合わせた善良な男が、いかに誤解され、脅され、追い詰められていくかが描かれる。警察や検察による正義の名のもとの暴力性が描かれるが、結局彼が良心に従うという展開には、いま一歩説得力がほしい。★★★★

2-13『責任』

子供の死体に添えられた民族浄化のメッセージ。その真の意味が明らかになったとき、犯罪は崩れ、スティール検事は逆に罪に問われる。必死に自己弁護する彼が矮小にすら見える容赦ない描写。最後まで折れずにエゲツなく真実を追求する彼に、むしろ満足。★★★★

まとめ

総ポイント数

51 / 65

平均

3.92

感想

安定して良質なエピソードが観られ平均点は高いが、これだ、というエピソードが多かったというわけでもない。オリジナルの米国シリーズから飛躍したストーリーを作るのはなかなか難しい。良質だった5話と9話はどちらも法廷中心のエピ。巧い演出で、法の義務と人の感情のを描き出している。

最終話はエピソードとしてはこわもてだったスティール検事の結末を、ああも情けなく描き切ったのも、またすばらしい。